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旅団員の日常 ーリーファ編ー

タイトル上部のシリーズ名 『方舟大地フォロスハートの物語』 から本編を探せます。どうぞよろしく。

 最近の日課は鍛練と冒険、そして旅団の若手の育成になった。その合間に食事や洗濯に掃除を行うーーなかなかの労働だ。自分の鍛練に当てる時間が減るので、日常的な活動の中で体の部分部分を鍛えていく事にした。


 例えば重い荷物を持ちながら階段を上がったり下りたりする際に、一段一段を軽やかに、重心を無駄にぶれさせないよう気をつけながら足運びを行う。ーー上下に動くのも禁止して、流れる様な移動を心掛ける。


 紐の先に重りを付けた物を指先で持ちながら洗濯物を干す。歩く時には爪先立ちになる様な格好で、料理の最中にはほこりが立たぬよう気を使いながら屈伸を少々。……時には足を上げての柔軟も行う。


 *****


 冒険から帰ると大抵すぐに訓練が始まる。木剣などを使った戦闘訓練だ。妹弟子のメイはともかく、他の方は武器を持っての訓練ですので勝手が違うと言いますか、つい反撃でやり過ぎてしまいそうになる。気をつけないとーー大切な仲間なのですから。


 最近カムイ少年は訓練に熱心になった。たぶん日頃の訓練の成果が感じられる事が冒険であったのだろう。

 そういった経験を若い頃に持つのは大切な事だ。自分の力で事を成せると知らないまま育ってしまうと、ひねくれて、人を見下す事でしか自分を肯定できない人間になる。


 私はそんな風になるのが嫌で、若い頃に家を飛び出して「ザハム武術道場」に入ったのだ。


 その頃は小さな道場だったーーしかし、厳しい訓練を課す所で知られていた。軟弱者には用が無いと師範が言うのを良く覚えている。

 体を鍛え、心を鍛え、そして技を鍛えろというのが道場でよく言われていた。技術は最後なのだ、体と心が強くなれば、おのずと技も身に付くというのが師範の考えだったらしい。


 それがどこまで正しいかはともかく、道場では強い者も弱い者も同様に扱われた。結局は同じ人間なのだから助け合え、そう言われながら。

 道場に居る時も掃除炊事洗濯は欠かさず行った、勉学の時間もあった。私がその道場で二年ほど過ごすと、そこそこの大きさの道場になっていた。


 その頃にメイが入って来たのだ。小さな少女だったが力が強く、体の使い方も実に格闘家向きの才能を持った少女だと感じた。私はよくメイと訓練をしていたが、日を追うごとに強くなる彼女に驚かされたものだ。

 半年もしない内にメイは、同年代どころか年上の男にも勝ち、道場の内外で噂になるほどの子供となった。


 私は彼女と一年ほどしか一緒に居られなかったが、彼女は私を姉の様に慕ってくれていた。ーー私が唯一、彼女に負けなかったからかもしれないが。

 メイの事を思うと私も頑張れるのだ。まだまだ彼女にーー妹弟子に負ける訳にはいかない。そう考えながら私は、日々の鍛練や訓練を積極的に行い続ける。


 メイが私より強くなったとしても、その日課は変わらないだろう。何故なら私は強くありたいからだ。ーー私自身の為に。

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