クラレンスで妹と再会
シリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から本編『錬金鍛冶師の冒険のその後』をお読み頂けます。ぜひ読んで見てください。
よろしくお願いします。
月末に予定通りクラレンスに帰って来た私は、家族への挨拶をしに父と母と妹の住む家へと帰る。ーー兄は離れた場所に住んでいるので会えませんがーー父も母も旅団の事を尋ねてきましたが、妹のリーティスが一番、その事を聞きたがっていました。心配半分、興味半分といったところなのでしょうか。私が話す事を聞いては愉しそうに微笑む妹。
「まあ。それではお姉様が副団長に? 領地の経営の事もありますのに、大変でしょう」
「そうですわね。でも旅団でもこちらでも、頼れる者達が居ますから、それほど大変という事はありませんわ。冒険でも旅団長がしっかりと事前準備と助言を下さるので、安心して冒険に出られていますのよ」
私が旅団長の仕事振りや、以前は冒険者として活躍していたらしい事を話すと、少しばかり考える仕草をする。
「……どういった方なのですか? 旅団長の……オーディスワイア様という方は」
旅団長が非常に能力の高い錬金鍛冶師であり、元冒険者だという説明を不思議に思ったらしい。技術者なのか戦士なのか、その実像を掴みかねている様子だ。
「ーーどう、と言われると困りますわね。普段はふざけている感じですけれど、旅団員や仕事の事になると急に真剣になる人ですね。冒険を止めた理由は片脚を失ったからだと聞いていますわ」
その右脚は膝から下の部分が無く、金属の義足で賄われている事を説明すると、妹は心配を口にする。
「やっぱり冒険は危険ですのね、お姉様も怪我をしないよう気をつけて下さいね」
リーティスはそう言いながらも、冒険の話を聞くのは愉しそうだった。ユナやメイといった小さな少女が冒険で活躍している事を話すと、彼女は特に目を輝かせて、その少女達の話を聞きたがった。
リーティスは体が弱く、子供の頃はよく高熱を出して寝込んでいた。最近では強壮薬の効果もあり随分と元気になったようですが、私からすれば彼女の方が心配ですわ。
そして旅団長とユナ、メイの三人が都市フレイマで、火の神ミーナヴァルズの巨大な炎の体を持つ大蛇と対峙して、灼熱の息吹を吹き掛けられそうになった事を話すと、リーティスは興味津々の様子で耳を傾けてくる。
私もオーディスワイアさん達から聞いた話しですが、大きな穴を囲む神殿の中で行われた大いなる神との接近は、凄まじい熱さとの闘いになったという事でした。多少の事ではびくともしなさそうな団長ですら、倒れ込んでしまったほどだとか……
「私も一度でいいから神様方のどなたかと会ってみたいものです」リーティスは、そう言って弱々しい笑みを浮かべる。
「そうですわね。ですが火の神は遠慮しておきましょう。お会いすると焦げてしまいそうですから」
妹はその冗談に笑うと自分から部屋に戻ると言い、また冒険の話を聞かせてくださいね、と残していく。
彼女も体が強ければ冒険者を目指していたかもしれませんね。彼女は温和しそうに見えて冒険譚などが好きですもの。
冒険は無理でも、いつかは旅団の様子を見せてあげたいですわ。ーーああ、でも、あの小さな鍛冶屋は何とかしてもらいたいですわね。もう少し大きな拠点に移動するか、建て替えるかして見栄えも良くした方が、今後の為にもよろしいかと思いますわ。