レーチェの帰省
そろそろクラレンスに戻り、決算書を見なければなりませんわね。まあ執事が大まかな処理をしたのを確認するだけですから、半日もあれば充分でしょう。
私は、その事を報告する為に旅団長に話しをする事にして、鍛冶屋の方へ向かった。団長のオーディスワイアさんは机に向かい、日誌か何かを見直している。
「団長おはようございます」と声を掛けると、団長は「おはよう」と言ってこちらを見る。
……いつもの事ですけど、顔を見た後に首や胸を確認するのをどうにかして欲しいですわ。ーーまあ、殿方は大きな胸が好きだとは聞いておりますけれど、特に団長は、私の胸やお尻に興味がおありの様ですし。ーー多少は仕方ないと諦めつつも、不躾に胸を眺められるのは恥ずかしいですわ。
「お前、また胸がでかくなったんじゃないか」
といきなり「見ていた」と告白するような発言をする団長。
「あ、あ、あなたは……! 少しはそう言う事を隠したらどうなのですか!」
「いや、そう思うのだが。立派なおっぱいを突き出されると、ついつい見たくなるものなのだ」
「突き出してなどいませんわ!」
「いやしかし、その肌にぴっちりと張り付く、エルニスの作ったという衣服がエロ過ぎるんだ。いや、それはいい事なんだが」
「少し黙っていてもらえますか……!」
思わず力が入り声が震えてしまう。
団長はさすがに私をからかうのを止めて、「今日は早いな」と話題を変えた。
「今月の終わりに休みを二日ほど頂きたいので、早めに伝えておこうかと思いまして」
「休み? 何故だ」
「実家に帰らせて頂きたいのですわ」
「まるで旦那に三行半を突きつける妻の様な口振りだな」
「だっ、誰があなたの妻ですか!」
「いや、俺のとは言っていないが」
団長と話すといつもこんな調子でからかわれてしまう。私は少し暑くなってしまった顔を手で扇ぐ真似をすると、「所有領地の決算書を確認したりしなければならないので」
と告げると彼は「そうか、分かった」と納得してから、「それならその日は旅団の休日にしようーー月末なら分かり易いしな」と口にする。
そう団長が言った時に旅団の皆が鍛冶屋に集まって来た。団長はすぐに休みの事を説明し、月末は副団長も居なくなるから二日休みにすると宣言する。
そして皆の前でこう言った。
「きっとお土産も持って帰って来てくれるだろうから、楽しみにしていような」
……あなたには土産の前に手が出てしまいそうですわ……!