アラストラの活躍・白竜の槍
シリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』本編を読んでもらえると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
「うりゃぁぁあッ!」
雄叫びと共に槍を繰り出す。堅い鱗を突き破った白い槍の穂先から、真っ赤な血が噴き出し、体にも赤い鮮血が降り掛かる。
「グゥォオオォオォッーー」
腹部を深くえぐられた「赤翼竜」は、大きな翼を広げて苦悶の咆哮を口から漏らしながら、どすんと重い音を立てて崩れ落ちた。長い首がだらんと伸びて喉元からも血が溢れ出す。
オーディスワイアが強化した白竜角の槍は、「竜殺し」「剛貫通」などの効果を付けられており、とても強力だーー以前使っていたもう一本の白竜角の槍は、予備として武器庫に保管してある。
この新たな槍のお陰で、ずいぶん楽に赤翼竜を倒せた気がする。仲間達も「自分の武器もそいつに強化してもらうか……」と真剣に考えている様子だ。
五名の仲間達は大きな赤翼竜の素材を回収する為に、小さな手押し車を準備して控えている者達を呼ぶ。彼らは戦闘には参加せず素材を運ぶ為に居る旅団員だ。小さな猛獣や小型の竜種などの相手は任せているが、まだまだ成竜とは戦う事は難しい。
赤翼竜の解体を彼らに任せて主力部隊は周囲を警戒しつつ、武器や体に付いた血糊を落とし、回復薬などを口にして次の目標を探す。
かなり遠くを走る緑色の体を持つ竜の姿が見えた。翼を持たない類型の竜種だ、先が細長い尻尾を持つ二足歩行をする竜で、この「竜棲の広原と森」の獰猛な狩人だ。
奴は小型の草食竜を追い駆けて背中に食らいつくと、その体を放り投げた。まだ遠くに居る為こちらには向かって来ないだろうが、奴が草食竜を喰らっている隙を突けば、優勢な状況を作り出す事が出来るかもしれない。
俺は仲間と共に「緑棘爪竜」に見つからぬよう隠れながら移動し、岩陰で草食竜の内蔵を喰らっている所へ一斉に襲い掛かった。
尻尾を斬り飛ばし、脇腹を貫かれた緑棘爪竜は怒り狂って暴れ出したが、太股の内側を斬りつけられると転倒し、隙だらけになった頭や腹部を狙って次々に攻撃を繰り出していくと、呆気ないほど簡単に倒せたのである。
「楽勝だったな」
誰かがそう言った。俺も槍に付いた血糊を拭いながら賛同し、脇腹や腹部に付けた攻撃箇所を確認すると、槍によって出来た傷痕が思いの外大きな物である事が分かった。
今までの武器よりも明らかに傷が深く、大きな物になっている。強力な武器を手に入れた事でさらなる強敵「銀鎧竜」を相手にする計画を立てた。この武器なら金属の甲殻と硬い皮膚を持つあの強敵も倒せるだろう。そして何より、この仲間とならーー俺は素材を集めると、手押し車を引く仲間達を護衛しながら転移門まで戻る事にした。
仲間達にもちゃんとオーディスワイアの鍛冶屋の場所を説明してやろうと考えながら……