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旅団員の日常 ーメイ編ー

 砂糖は貴重だ、それは知ってる。蜂蜜も貴重だ、それも知ってる。でもお菓子が食べたいのだと言うと、ユナは困った顔をしながら旅団長か、副団長にお願いしてみようと言ってくれた。

 旅団長に相談すると、旅団長はこう言った。

「一応錬成で砂糖を作る事は可能だが。ーーその素材も高価でな、作れる量も少ない物ばかりだし。蜂の巣か海藻かいそう、花とかがあれば砂糖の代わりも作れるがーー海藻なんて()()()()()無いし、蜂の巣も……ああ、レーチェなら、もしかすると……彼女の領地では養蜂ようほうさかんらしいし、彼女から蜂蜜を貰えるかもしれないな」


 なんと! 副団長なら蜂蜜が手に入るかもしれないとは! 私とユナは、すぐ副団長の元へ向かう。

「蜂蜜ですか。ええ、確かに実家では蜂蜜は定番の甘味でしたがーー。この宿舎に運び込んだ食品の中に、あればいいのですが」

 副団長は、そう言いながら地下の食料庫の鍵を手にして、地下への入り口へ向かう。私達も副団長の後について行き食料庫までやって来た。


「棚にある調味料の中にありませんか? 瓶詰めになっているはずですけど」

 地下室の明かり(発光結晶)を点けると棚の前まで行く。ーーそこには何種類かの瓶が置かれていた。

「ありましたわ、これですわよ」

 それは透明な瓶の中に半分ほど、黄金色の液体が入っていた。副団長はユナにそれを渡すと、何に使うのかと聞いてきた。


「お菓子を作りたくて……メイがお菓子を食べたいと言うので」

「お菓子ですか、いいですわね。わたくしも頂けるかしら」

 ユナは、もちろんと答えて、小麦粉や牛酪バターなどを持って調理場へ向かった。

 お菓子を作るのは彼女に任せて、私はテーブルと紅茶などを庭に用意する事にした。調理場でお湯も沸かして待っていると、調理場に旅団長もやって来た。


「甘さはそれほど無いが、お菓子を作ってきたぞ」

 そう言って旅団長は、木を編み込んで作った籠に、薄桃色の小さな焼き菓子をいっぱい入れて持って来てくれた。

「え゛、まさか団長が作った訳ではありませんわよね?」

「いや、俺が作ったんだが……何か問題でも?」

 旅団長が言うと副団長が、がっくりと項垂うなだれた。まさかそんな……と小声で呟く副団長。確かに旅団長がお菓子を作る姿なんて想像できない、そう言うと旅団長は「そんなに作るのは難しくないぞ」と苦笑いする。


 しばらくしてユナが作ってきた焼き菓子と共に、薄桃色の焼き菓子を庭に用意したテーブル席で食べる事に。旅団長の作った焼き菓子は、薔薇ばらの花から取った(錬成した)甘味料を使っているから、薔薇の香りと色が付いていると説明された。

 甘さは控えめだけれど薔薇の香りがして、これはこれで美味しい。


「薔薇の香りのお菓子……いいですわね。気に入りましたわ」

 副団長が言うと旅団長は「そりゃどうも」と言って、私達にも食べるように勧めてくれる。

「蜂蜜の焼き菓子もいいな。牛酪の香りもするしーーそういえば、甘い物を口にするのは久し振りな気がする」


 薔薇の香りのお菓子も美味しいけど、私はユナのお菓子の方が好きだ。甘いからではない、蜂蜜と牛酪の香りがする彼女の焼き菓子は、「朱き陽炎かぎろいの旅団」時代から好きになった味だ。

 このお菓子は彼女の性格みたいな優しい味がする。


 庭で開かれたお茶会。紅茶を口にして甘いお菓子を食べる。私はこういう時間があるから冒険を頑張れるんだと思う。

 仲間と楽しくお菓子を食べながら、今後の冒険の事を話したりする。ーーそれがなんだか楽しい、いつもと変わらない日常。


 それが全て、私と仲間や友達との日常。それが全て、他の人から見れば小さい事だと言われるかもしれない、でもそれでいい。小さな私にはその小さな世界が全てだから。

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