旅団員の日常 ーユナ編ー
お読みいただけると嬉しいです。上部の『方舟大地フォロスハートの物語』から本編の方に移れます。
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私は旅団に入るのは二回目だ。一回目と二回目の違いが凄い。
なにしろ一度目は、都市フレイマの中でも一、二を争う大きな旅団だったのだから大所帯だった(全員で何人居たのかも知らないし、会った事のある人も、それほど多くはなかったろう)。
二度目に入った旅団は、私を含めてたったの八名だ。
でも宿舎の割り当てや、防具や消耗品の支給などは、こちらの方がずっといい。それに何より仲間の皆は優しくて暖かい、家族の様なーーは言い過ぎかも知れないけれど、こちらの旅団の方が私は、ずっと好きだ。
部屋も一人部屋を割り当ててくれた。前の旅団では共同で使うのが普通だったし、別の都市へ遠征に出た時も、都市にある旅団が所有する建物に泊まって、共同で寝泊まりしていた。
今、私が身を寄せる旅団「黒き錬金鍛冶の旅団」は、団員の事を真剣に考えてくれる団長と副団長が居るので、何かあった時も気軽に相談できるとメイも言っていた。彼女は訓練用の手袋や打撃受けを団長にねだったらしい。
「格闘訓練用の相手に怪我をさせない手袋に、殴っても壊れない的の様な物? ……ああ、分かった。材料を揃えるから少し待て」
そう言った旅団長。そして数日後にはメイの望む物を用意してくれた。錬金鍛冶師として「超」が付くくらい凄腕の旅団長だけど、メイの事をまるで姪っ子(ダジャレじゃないから)の様に甘やかしているのを見ると笑ってしまいそうになる。
私も我が儘を言ったら聞いてくれるのだろうかと、思い切って聞いてみた。
「宿舎の花壇で香草や薬草を育てたいのですが……」
「お? いいじゃないか。種を買って来るといい」
旅団長ーーオーディスワイアさんは、そう言って銀貨を渡してくれた。
その後も旅団長は宿舎の方に来ると、シャベルやスコップ、バケツなどを用意してくれた。ーー私の事も姪っ子だと思っているのだろうか……そんな風に思ったが、レーチェさんやウリスさん、ヴィナーさんのお願い事も聞いてあげていた。旅団員の事をちゃんと考えて接してくれているのだろう。けれど私達は、それに甘えているだけでは駄目なのだ。
いつかこの旅団が大きくなる日が必ず来る。その時には私達一人一人が旅団長に、逆に頼りにされるくらいに成長していなければならないんだ。
私はオーディスワイアさんには、返し切れないほどの恩がある。それでもいつか、この人の為に実力を付けて、あの日受けた恩を少しでも返せればと思う。
私の部屋のドアを叩く音がする。この叩き方はメイだ。今日も彼女と共に冒険に出て魔法使いとして、冒険者としての階段を一段一段上がって行こう。
いつか私があの人の魔法使いになれる様に。