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転生召喚『黒龍』記  作者: 緑楊 彰浩
短編~一匹狼編~
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短編06 白龍とサトリ



※短編は本編を読んでから読むことをお勧めします。

ネタバレや、次の話へ関係ある内容のものもあります。










 白龍が戻って来て3日がたった。前日に悠鳥に連れられて、城の裏にある森の湖で小さな『白龍』の姿になり水浴びをした白龍は、今日とても機嫌がよかった。

 馬車に揺られながらも、楽しそうに白美とツェルンアイと話しをしていた。久しぶりの水浴びが気持ちよかったようで、水浴びから帰って来てからずっと機嫌がいいのだ。

 そして、現在。龍達は、黒に近い紫色をしている建物の前にいる。それは、ルイットのサトリのお店だ。エリスが扉を開くと、前回と同じようにドアベルが鳴った。しかし、前回と違うものがあった。それは、お店にサトリがいるということだった。

「あら、いらっしゃい」

 そう言って笑顔で迎えてくれるサトリは、やはり女性にしか見えなかった。白美が扉を閉めると、白龍は龍と手を繋いだままサトリを見つめて黙ってしまった。椅子に座ることもなく黙って立っている白龍に、サトリは首を傾げた。

 そんな白龍を気にしながらも、エリスはカウンターチェアに座った。右隣に黒麒と白美が座り、左隣にツェルンアイが座る。その隣に座ろうと龍は考えているのだが、白龍が動かないのだ。

「女の人? 男の人?」

 サトリを見て、違和感を感じたのだろう。そう言って首を傾げる白龍にサトリは微笑んだ。しかし、内心は驚いていた。今まで一度も、初対面の人物に男性だと思われたことがないからだ。紹介されなくても、サトリには今目の前にいる子供が『白龍』だとわかっていた。誰かの心を読んだというわけではなく、長く生きていると雰囲気だけでも人間ではないとわかるのだ。

 だから、もしかすると違和感を感じたのかもしれないと思った。それに、もしかすると誰かにサトリの話しを聞いていたのかもしれないと。

「初めまして。私はサトリ。これでも男よ。それで、貴方は白龍ちゃんね?」

「うん! 僕、白龍」

 頷いて元気良く答えた白龍に、サトリは右手でカウンターチェアをさした。それは、どうぞ座ってくださいという意味だ。

 龍と共に近づくが、白龍1人では高くて座ることができない。そのため、龍がツェルンアイの隣のイスに白龍を抱き上げて座らせた。テーブルは低いため、座った白龍にも届いた。背もたれがないため、少し心配ではあるが、龍も白龍の隣に座った。

「白龍に会いたがっていたでしょ?」

「覚えていたの? 流石エリスちゃんね」

 そう言いながら、サトリは人数分の飲み物を用意していく。注文をしていないため、料金は取られるのかと疑問に思わないでもなかったが、龍は何も言うことなく準備をしているサトリの後ろ姿を見た。

「それが終わってからでも、白龍とツェルンアイの魔力を見てほしいんだけど……いいかな?」

「ツェルンアイって、そちらの女性ね」

 龍の言葉に返しながら、サトリは用意した飲み物をテーブルに置いて行く。白龍の前にジュースの入ったコップを置き、白美の前にはアイスレモンティーの入ったコップ、残りは全員がコーヒーだ。

 自己紹介をしていなかったため、ツェルンアイはサトリと目を合わせて自己紹介をした。一瞬目を細めたサトリは何も言わなかったが、もしかするとツェルンアイの髪と目を見て気がついたのかもしれない。

 それだけではない。白龍とツェルンアイには、サトリが心を読めるということを話してはいないのだ。だから、意識せずとも読んでしまう心により、サトリはツェルンアイが災いをもたらすと気がついたのだ。しかし、それでも何も言わなかったのは、龍達に話していないということを知った優しさからではない。

 彼女は龍達と共にいる。だから自分に関わることがあまりないため、災いが自分に降りかかるとは思っていないからだ。正直、災いだろうとサトリにはどうでもいいことだったのだ。だから、目を細めただけで何も言わなかったのだ。

「いいわ。じゃあ、まずどちらから調べる?」

 そう言ってサトリは、水晶玉を取り出した。どちらから見ると聞いてくるサトリに、エリスは「それなら、まずツェルンアイからがいいんじゃないかしら?」とコーヒーを飲みながら言った。

 白龍は、それがどんなものかは知らない。ツェルンアイも知らないのだが、実際に見せて白龍が怖がらないようにするためでもあった。

「それじゃあ、これの上にどちらの手でも構わないから、翳してもらえるかしら」

 ツェルンアイの前に水晶玉を置いて言ったサトリは、決してツェルンアイと目を合わせようとはしなかった。しかし、彼女が気にすることはなかった。

 右手を持ち上げて、水晶玉の上に翳す。すると、水晶玉はゆっくりと白く光り始めた。獣人も、人間と同じく魔力は白く光るのだ。しかし、ツェルンアイの魔力は多くないようだった。水晶玉の中で揺らめくそれに、サトリは黙って目を向けている。

「これは……地属性魔法は使えるわね。他は……身体能力変化に関係するものかしら。でも、魔力は高くないから、上級は使えないし、魔法を多用するのも危ないわね」

「私、魔法が使えるの?」

「ええ。この世界に住む者の多くは魔法が使えるわ。中には使えないって者もいるけれど、一握りね」

「地属性。誰か使える人はいたかしら?」

 エリスの呟きに、龍も地属性魔法は使えないためツェルンアイに教えることはできない。もしかすると、自分の力で頑張るしかないのかもしれない。

 水晶玉から手を離すと、光はゆっくりと消えた。そしてその水晶玉を持つと、サトリは白龍の前に置いた。静かにジュースを飲んでいた白龍はサトリと目を合わせると、翳してもいいとわかりゆっくりと右手を翳した。

 少し手が震えている白龍の頭を、龍は撫でて安心させてあげる。白龍は頭を撫でられることが好きだ。龍に撫でられるだけで、安心するのだ。

 翳していた手の震えが収まると、水晶玉が光り始めた。その色は龍の時とは違い、白い。しかし、僅かに黄色いそれを見ると、白龍もやはり人ではないということがわかる。

「……白龍ちゃんは、まず炎ね。これは、龍と同じように特殊な『白龍』という生き物だから、ブレスはすぐに使えるわね。ただ、龍とは違い赤い炎。それと……光属性ね。だから、回復とかが使えるわ。攻撃魔法よりも、守る魔法が使えるのね。あと、これは白龍ちゃんだけじゃなくて、みんなに言えることなんだけれど。魔力はもっと大きくなるわ。白龍ちゃんは子供だから、大人になったら、龍と同じくらいになるかしら?」

 サトリが言うように、白龍の魔力は小さかった。どうやら、それはまだ子供だかららしい。大人になれば、魔力も大きくなるというのだ。それは白龍だけではなく、龍達もだという。

 全く変わらない者もいるが、魔法を使っているうちに魔力が少しずつ大きくなってくるのだという。それは、魔法を使える回数が増えるということだ。しかし、魔力は命ともいえるため、使いすぎてしまえば危険なことになることは変わりない。

「魔法、今、使えないよ?」

「あら、使ったじゃない」

「?」

 エリスの言葉に白龍は首を傾げた。魔法を使った記憶はないのに、エリスに使ったと言われたからだ。いつ使っただろうかと白龍は考えたが、思い当たらなかった。

「お歌、歌ったでしょ?」

「歌った!」

「その時、みんな笑顔だったもんね。魔法だよね」

「ま、ほう……」

 エリスと白美は、白龍の歌でみんなが笑顔になったことが魔法だと言いたいのだ。それは、白龍も魔法を使えるんだと元気づけるものだったのかもしれない。

 たとえそうだったとしても、白龍にとってはよかったようだ。白美の言葉を聞いて、白龍は嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「それ、まほう?」

「魔法だよ、魔法! だって、笑顔になると幸せになるんだもん!」

 笑顔を浮かべて言う白美に白龍は大きく頷いた。たしかに、今笑顔を浮かべている白美は幸せそうだった。だから、白龍もさらに笑顔を浮かべた。

 それを見て、サトリを含めて龍も笑みを浮かべた。今は魔法を使えないことにがっかりしないかと思ったのだ。使えるはずなのに、白龍は一度も使っていないのだ。幼いため仕方ないとは言っても、白龍は龍の役に立ちたいと思っているのだ。使えるのに、使っていないと知ればがっかりするかもしれない。

「さあ、それじゃあ白龍ちゃん。お菓子をどうぞ!」

 そう言ってサトリは白龍の前にお菓子を置いた。もしかすると、サトリは白龍にお菓子を渡すために用意していたのかもしれない。

 さまざまな種類を置かれ、白龍は隣に座る龍を見上げた。そんな白龍を見て、龍は何も言わずに食べていいと頷いた。一応、エリスのことも見て確認してから、白龍はクッキーの入った袋を開けた。

 そして、一口を食べると美味しかったのか、笑顔を浮かべた。そして、隣に座るツェルンアイにもわけている。

「貴方達、あまり来てくれないけど、気軽に来ていいのよ?」

「そんな気軽に来れる距離じゃないのよ」

 ヴェルオウルからルイットまでは少々遠いのだ。気軽に来てもいいと言われて、来れるはずもない。用事で来る時や、その日何もなければ来てもいいと考えながら、エリスもクッキーを一つもらい食べるのだった。









短編06 白龍とサトリ 終









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

気軽に来てと言われても、行かないエリス達。

今回は、ただサトリに白龍を会わせるだけ。

ついでに魔力を見てもらっただけです。

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