魔力2
*
ルイットの中心には大きな噴水がある。常に水が出ており、1時間ごとに数秒だけ高く水が上がる。噴水の周りで仕事をしている者達は、それを合図に昼食をとったり、仕事をやめて帰路につくのだ。
馭者は街に入ってから速度を落とし、2頭の白馬を止めたのは噴水のそばだった。ずっと走り続けて疲れていた馬達は、噴水の水を飲んでいる。人が飲んだり入ることは禁止されているが、動物が飲むことは許されているようだ。噴水の近くに立っている看板には、『動物のみ水を飲んでも構わない』と書かれていた。書いてはいないが、人間が飲むとお腹を下すのかもしれない。看板を見て龍はそう思ったようだ。
止まった馬車の扉を開けて黒麒が先に馬車から下りた。続いてエリスが下り、最後にアレースに続いた龍が馬車から下りた。角がぶつからないように頭を下げ、翼が当たらないように気をつけながらゆっくりと下りる。
地面に足をつけると、周りを見渡した。人が疎らだが、そこには様々な種族がいた。耳が長い人間に似た種族、エルフ。人に獣の耳と尻尾が生えている人よりの獣人。ただ二足歩行をしている様な動物、獣よりの獣人がいる。二足歩行している動物のような獣人はアルトと同じような姿ではあるが、種類は違うようで犬のような姿をしている。他にも猫のような姿をしている者もいる。
龍のような人の姿をした者はいないが、二足歩行のトカゲの龍人は歩いている。剣士なのか、腰に剣を携えている。背中に翼を生やした見た目が鳥のような人。彼らは獣人ではなく、鳥人と呼ばれている。悠鳥のような人の姿をし、手や足が鳥の者は半人半鳥と言っていたが、彼らは全員見た目は鳥だ。やはり、悠鳥のような存在はいないようだ。
一つの街に多くの種族がいるのをはじめて見た龍は、まじまじと彼らを見てしまう。それは相手も同じようで、馬車から下りてきた龍を見ている者が多くいた。それもそうだろう。龍のような存在はいないのだから。昔はいたかもしれないが、『ドラゴン』は人前に姿を現すこともほとんどないため全員驚き半分のようだ。蝙蝠のような翼を生やした人間なんか、エリスでさえも龍を見るまで一度も見たことがなかったのだから。
「やっぱりここ魔物……様々な種族が多いな」
「アレースはよく魔物って言ってるけど、違いってあるのか?」
「あの街では人間と動物以外は魔物と言われているけれど、違いはあるわ」
獣人、龍人、鳥人、エルフなど様々な種族がいる。人や街によってはそれらの種族、人間と動物以外は魔物と呼ぶ地域もあるが、それは差別用語となっている。そのため、街から出てもそれらの種族を魔物と呼ぶと、罰金か罰を受けなければいけない場所もあるのだ。
魔物とはそれぞれの種族や人間、動物とも異なる姿をしている。龍はどちらかといえば『ドラゴン』に変身することができる龍人で、黒麒は神獣。そして白美は、魔物となる。だが、魔物の多くは人間を襲うことがある。しかし、白美はそれがない。
「悪い魔物といい魔物の呼び方は同じだから、魔物は全て悪いってイメージはあるな」
その所為で、人間は魔物を嫌っている。人間にとっては、魔物というだけでいい者も悪い者も全て同じなのだ。
だが、この街にはそんな様子が伺えない。人間が嫌いといわれるエルフや獣人達は、普通に人間と話をしているし、一緒に仕事をしている様子を見ることができる。
「この街は国境近くってこともあって、旅をしている人が多いの。仕事の途中で来ている人も多いわ」
エリスの視線の先にいるのは剣を携えている龍人だ。魔物討伐を専門としている人もいると言っていたので、彼はもしかしたらそうなのかもしれない。
国境の先にあるクロイズ王国は様々な種族が住んでいるらしく、すべての種族は平等に扱われているのだ。ヴェルリオ王国も平等に扱ってはいる。
しかし、住んでいる人々が魔物扱いをしているため平等には見えない。それも仕方ないのかもしれない。今の国王の2代前までは、人間と動物以外の種族はこの国では奴隷にされていたのだ。人間よりも力や能力が高いため恐れていたのだろう。当時の国王はすでにいないため、本当はどうだったかなんてのはわからない。
だが1代前の国王の時に、奴隷は禁止とされた。他の種族も平等に扱うことにしたのだ。奴隷が禁止されてまだ、100年もたっていない。
奴隷だった種族の多くはヴェルリオ王国から出ていた。中には残った者もいたが、奴隷ではなくなっただけで扱いは変わっていないようなものだった。
それでも、奴隷が禁止となった頃から比べるとよくなっているのだ。魔物が嫌いと言っている国王でも、城で様々な種族に働いてもらっている。人間と同じだけ休憩も休日もある。
ただ、今の国王は少しずつ変わってきていると言われている。魔物が嫌いと言っているが、最近は城で働いている獣人達に城内にある書庫から本を持ってきてもらったり、探し物を頼んだりしているらしい。
昨日の夜に悠鳥がそう言っていたのだ。今までは人間以外の種族に自分から頼むことはなかったようだ。部屋の外で声を出すこともなかった。国王が変わってきているのは喜ばしいことなのだろうが、何故それを悠鳥が知っているのか龍は疑問に思ったようだ。教えてもらおうにも、彼女は教えてくれないだろう。だから、龍は気になっても悠鳥に尋ねることはしなかった。
「それで、ウェイバーって人はどこに?」
「ああ。この噴水の近くにいるはずなんだけど……見当たらないな。目立つ人なんだけどな」
目立つと言われても、目立っているのは自分達しかいないと龍は思ったようだ。未だに龍を見ている人は多いのだ。これだけ様々な種族が集まっている中に、龍という変わった存在がいれば仕方がないのかもしれない。
龍は周りを見渡してみた。すると、一番近くで自分達を見ている男性がいた。男性は口元に笑みを浮かべてはいるが、嫌な感じなどはしない。
――もしかして、この男か?
男性は龍を見ているようで違った。その視線はアレースに向けられ、気がつかない彼が面白いというような笑みだった。それを見て龍は彼がウェイバーだと確信した。
そう思うと、龍は自分の左斜め前にいるアレースの右肩を左手で軽く二度叩く。気にした様子もなく振り返ったアレースに、龍は「あの男か?」と問いかけた。
アレースは黙って男性を見つめた。たっぷりと10秒は見つめていた。それだけ長く見つめなくては、わからなかったようだ。だがどうやら、その男性がウェイバーだったようでアレースは目を見開いた。
「お前……髪が白いぞ。そんな年だったのか!?」
「今はお前の一つ上だよ。それに、これは今日1日だけの効果だ」
自分の白い髪を掴み言う男性に、普段は違う色なのだと知る。だからアレースも、ウェイバーが近くにいたことにすら気がつかなかったのだ。人間、髪の色が変わっただけで暫く会っていないと気がつかないものだ。
目立つと言っていたので、あまり見ない色をしていたのかもしれない。しかし、白髪というのも充分目立つだろう。周りを見渡しても、白美とウェイバーくらいしかいないのだ。
「さて、エリスちゃんとアレースは久しぶり。君達は、はじめましてだね。私はウェイバー。よろしく」
笑顔を浮かべるウェイバーからは、やはり嫌な感じはしない。挨拶をする黒麒達に、龍も続いて挨拶をする。
人間と話をするように話すウェイバーは、他の国から来たのだろう。クロイズ王国は様々な種族が住んでいるのだ。そこが出身だったら頷ける反応だ。ヴェルリオ王国に住んでいる者であれば、もう少し嫌がるだろうと龍は思ったのだ。
だが、クロイズ王国とは国境戦争を起こしたばかりだ。ヴェルリオ国に来ることはできるのだろうか。こちらからは出ることは簡単だ。門もなければ見張りもいないのだ。あちらも同じなのだろうか。仕事できている人もいることから、出入りは自由なのかもしれない。
それに、もしクロイズ王国から来たのなら、国境戦争で入手した情報をこちらへ渡してもいいのだろうか。自分の国へと提出するものではないのだろうか。もしも、黙っていてこちらへ情報を提供しようとしているのならば、クロイズ王国に戻ってバレたら大変なのではないのか。そう思っても、龍にはどうすることもできないのだ。
彼は剣士のような出で立ちをしているので、もしかしたら龍達と同じように国境戦争の時に国王から偵察を頼まれていたのかもしれない。だが、アレースへと入手したものを渡す理由はわからない。
これから先もわからないのかもしれない。昔からの友人という理由で情報を渡すのか。それとも、別の理由なのか。考えても龍にはわかるはずもなかった。
「さて、目立っているようだから移動しよう」
たしかに、ウェイバーの言うとおり目立っているのだ。ウェイバーが加わったことにより、視線は先ほどより増えていた。それにこのまま話をするとしても、落ち着いて話はできないだろう。ウェイバーの言葉にエリス達は漸く移動することにした。
事前に言ってあったのか、馭者はどうやら帰りも乗せてくれるようで、その場から動くことはなかった。馬は余程喉が渇いていたのか、まだ大人しく水を飲んでいた。
*
昼食を食べていないということで、全員でレストランへと入る。そこには個室もあるようで、個室へと案内をしてもらう。メニューを見て料理を注文し、飲み物と注文した品が全て揃うまで誰も何も話さず待っていた。
もしも話の途中で店員が入ってきて、話を聞かれるかもしれないと考えたからだ。そのため、アレースも話を促すことがなかった。
料理は全て一緒に運ばれてきた。3分以内に揃い、店員が扉を閉めて遠ざかって行く。角部屋のため、誰かが店員を呼ばない限り誰も来ることはない。店員の足音が聞こえなくなるとウェイバーは口を開いた。
「さて、もう話してもいいかな」
そう言ってウェイバーは懐から一枚の紙を取り出した。そこには誰かの似顔絵と名前が書かれていた。名前の人物が書いたのか、それとも書かれている人物の名前かはわからない。だが、似顔絵も名前も男性だった。
アレースとエリスが似顔絵の人物を見ている間に、龍達は料理が冷める前に食べ始める。似顔絵を見ても知らない人物だったのか、エリスも冷める前に料理を一口食べた。お腹が空いていたということもあるが、似顔絵の男性を全く知らないのだ。この男性の情報を提供してくれるのだろうと誰もが考え、耳は傾けている。
「こいつは?」
「ソフィネット・オリマ。この間の国境戦争で捕らえた怪しい人物だ」
あるものを入手したと言っていたが、ものではなく人間だったようだ。捕らえたという言葉にアレースの目が細められ、もう一度似顔絵を見た。
似顔絵の男性と書かれている名前が一致していることから、誰かがわざわざ描いたのだろう。捕らえたということは、本人を連れてくることは不可能なのだ。だから、似顔絵を描いたのだろう。
だがウェイバーは何故この男性が捕らえられたと知っており、この似顔絵を持っているのだろうか。似顔絵を描いたのが彼だからなのだろうか。捕らえたのが彼だからなのか。
もしそうであれば、似顔絵を描き、それを持ってくることを何故クロイズ王国の国王は許したのだろうか。まさか、黙って持ってきたということはないだろう。
「この男を捕まえた人って誰?」
「ああ。私の信頼できる友人だよ」
食べていたものを飲み込んで尋ねる白美の目を見てウェイバーは答えた。その友人はあの日、国境にいたということだろうか。そう思う龍に気がついたわけではないだろうが、ウェイバーは話してくれた。
国境戦争の日、行きたいと思っていたがウェイバーは行くことができなかった。代わりに彼の友人が行ったのだという。拳闘士だというその友人は、国境ギリギリで仲間達の様子を見ていたのだ。
街でヴェルリオ王国が攻めてくるという噂が広まっており、誰が言い出したのかを調べていると怪しい人物が数名上がったのだ。そして、その怪しい数名は国境付近で様子を伺うメンバーにいたようだ。
それならばとその友人が様子を見るために参加することにしたのだ。だから、友人はその日そこにいた。国境付近で様子を伺うメンバーに名乗りを上げて、不審に思われないように彼らの様子を伺っていると、火炎弾が上から降ってきた。渓谷の上から降ってきてように見えて、そこを睨みつけるとウェイバーの友人の横から声を聞こえたのだ。
「ヴェルリオ王国が攻めてきたぞ!」
どう考えても友人には相手側からの攻撃とは思えなかったのだ。それに友人は見ていたのだ。相手側にも火炎弾が降って行くのを。
そして男性も同じようにそれを見て、口元に笑みを浮かべたのだ。笑みを浮かべて言ったのが攻めてきたという、どこかで聞いた言葉だ。
悠鳥の言葉により戦いは終わり、それぞれ国へ戻ったが、彼は1人になったソフィネットを捕らえたのだ。因みに、あの時悠鳥と話をしたのがウェイバーの友人だったのだ。
「何故あの時攻めてきたと言ったのかを聞いても、笑みを浮かべるだけで何も答えない」
料理を飲み込んで言う言葉に、ソフィネットはどこにいて、似顔絵は誰が描いたのかと龍は疑問に思ったようだ。しかし、口を挟むのもよくないと考えて龍は料理を食べ続ける。
時々会話を止めて料理を食べるので、部屋が静かになる時がある。隣の部屋から話し声が聞こえるが、気になるような話はしていない。静かになると、国境戦争での情報を話している人がいないかと耳を傾けたのだ。しかし、多くが仕事の話ばかりで情報になるようなものはなかった。
「それで、それって誰が描いたの? それにソフィネットは今どこに? って龍が聞きたいみたいよ」
「え……」
エリスの言葉に、龍は手を止めた。自分だけではなく、エリスもそう思っていたのではないかと声に出さずに目だけで問いかけるが、エリスは微笑むだけだった。
「なんか聞きたそうな顔をしていたと思ったら、そういうことか。これを描いたのはルペンディだ」
ルペンディ。それはウェイバーが言っていた友人であり、ソフィネットを捕らえた人物だ。クロイズ王国では有名人らしく、ルペンディ・ダブダフというその友人は何でもできるらしい。
そのため、楽器を渡せばすぐに奏でることができる。人手が足りなくて大工仕事を任せれば問題なくこなしてしまう。本人は拳闘士なのだが、なんでもできてしまう。記憶力もよく、絵を描くことが趣味のため似顔絵も上手いという。
捕らえられたソフィネットは今、城の地下にある牢屋に幽閉されている。何かを知っているのはたしかなので、情報を聞き出すために定期的に話を聞きに行くのだが、未だに口を割らないとのことだ。
「それで、もしかしたらこいつについて何か知っていることはないかと思って、似顔絵を描かせて聞きに来たんだが……」
「顔も見たことのない人間のことは知らない」
きっぱりと言うアレースの言葉に、横にいたエリスが頷く。知らない人物のことは情報を集めていたが、今回は仲間側だけだ。敵側であるクロイズ王国の人間を調べている時間はない。
「でもこいつ、2年前にヴェルリオ王国から来たんだぞ」
「なに!?」
他の国へ行く者は多く、別に珍しいことではない。ヴェルリオ王国にもクロイズ王国から来ている者もいるし、どこから来たのかすらわからない旅人もいるのだ。
しかし、怪しい人物がヴェルリオ王国から行ったことが問題なのだ。国内から戦いに発展する何かが起これば、関係していた人物が怪しまれる。そしてその人物が他国から来たのならば、元々スパイとして入国したと考えるからだ。
「そいつがこっちの国から行ったのなら、その逆はいないのか?」
「逆って、クロイズ王国からヴェルリオ王国にってこと?」
「そうだ」
疑問に思ったことを口にした龍に白美が尋ねた。いないとは言えないのだ。あの戦争に参加していた中に、同じようにクロイズ王国から来た人物が参加していたかもしれない。
アレースは残った3人の名前を思い出した。ルーズはヴェルリオ王国出身だ。ビトレイはどこ出身なのか、どこから来たのかは不明。しかし、スカジは2人とは違いクロイズ王国から8年前に来たのだ。
「どうかしましたか?」
様子が変わったアレースに黒麒が尋ねる。俯いて黙ったままのアレースだったが、顔を上げてウェイバーを見た。
「8年前にスカジがクロイズ王国から来た」
「8年前だと!? 国王交代時期とかぶっていたら出て行った人はわからないぞ。入って来た人は厳しく見られていたが……」
「国王交代って?」
ウルル山脈にいた白美には8年前のことはわからない。龍も知らないが、黒麒と悠鳥は本で読んで知っていた。
8年前。ヴェルリオ王国とクロイズ王国の国王が交代したのだ。両国とも国王の息子が20歳になった年だった。その時に国王を交代したのだ。
若い国王ではあったが、異を唱える者はいなかった。お祝いムードの国では入ってきた者が危険なものを持っていないかを調べてはいたが、出て行く者に対しては何も調べることはなかった。そこまで手が回らなかったのだ。
だから、出て行った者を覚えている人もいなかった。
「スカジは国王交代のあとに来たはずだ。たしか……2人で国へ来たと言っていた」
「2人? その人って?」
わからないので首を傾げるしかない。一緒に来たであろう人間がこの国にいるのか、生きているのかもわからない。スカジ本人に一緒に国へ来た人物のことを、聞かなければいけないのかもしれない。
仕事を求めて城へと来たスカジを、近くの仕事場を紹介したのは国王だ。しかし、スカジは城に1人で来たのだ。もう1人は仕事を見つけたか、国を出たかのどちらかの可能性が高い。
そして2年後に城の召喚士として雇ったのも国王だ。だが、その前から図書館への立ち入りは許可されていた。
「ソフィネットについてはこっちで調べとくとして、仲間がいるだろうからそれが誰かも吐かせる」
似顔絵が描かれた紙をウェイバーは仕舞うと、自分が頼んだ冷めた料理を掻き込んだ。
そして、ウェイバーが食べ終わる頃には全員料理を食べ終わっていた。話したいこともなくなったため、他の客に迷惑がかからないようにとお店から出る。
会計をすませると龍はエリスを見た。ルイットにいる魔力を見てくれる人の元へと行きたかったのだ。
「あ、そういえばアレースに話がもう一つあったのを忘れていた」
思い出したように言うウェイバーに、アレースとエリスは目を細めた。今何故そんなことを言うのか、2人は理解したのだ。
「なら、私達は行きたい場所があるのだけれど行ってもいい?」
「ああ」
「妾が2人の護衛をしておくから行ってくるのじゃ」
「任せたわ」
そう言うとエリスは龍の腕を掴んで引っ張った。どうして引っ張られるのかわからなかったようだが、龍は大人しくついて行く。ウェイバー達3人は、人があまり通っていない道へと進んで行った。どうやら、あまり人に聞かれたくない話だったようだ。
悠鳥に聞かれるのはよかったのか、ウェイバーに気にした様子はなかった。
3人の姿が見えなくなっても龍の腕は離されなかった。場所はわかっているようで、迷うことなく進んで行く。お店の外で待っていたユキがしっかりとついてきていることを確認し、見上げて来るユキに龍は苦笑するしかなかった。
腕を掴まれているからだけではない通行人の視線が痛いと感じたが、大人しく何も言わずにあとに続いた。ただ、大太刀を握る手にこれから魔力を見てもらうという緊張から力が入ったようだ。もしも、自分に魔力が無かったらと考えて龍は頭を横に振る。魔力が無かったら、その時に考えるしかないのだ。




