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晴天52

潤の言葉に蓮は納得する。


「確かにどの厄災だったとしても倒しといて損はないな」

「それにしても全員に情報を回さないなんて御手洗指揮官は何を考えているのかしら?」

「情報は時として武器になるからね。不用意に回さないのも得策になることがあるんだよ」

「そうだったんですね‼︎流石潤さんです‼︎」

「媚をすぐ売ろうとするわね駄娘」

「は?」

「え?」


この空気はまずいな。

いち早く危険を察知する。


「さて、僕は用事があるから喧嘩はほどほどにね」


そう言って席を立つ。

賢明な判断だと内心自画自賛して目を背ける。


「逃げたな潤」


二人が面倒になる前に早々に立ち去る。

去り際に蓮が呟いた言葉は無視しておく。


その場から去ると、後ろから喧騒が聞こえてくる。


「それにしても赤い雲じゃなかった……となると、ただ事じゃないね。色々と弊害が出そうだ」


潤は歩きながら、薫の言葉を思い出していた。

ラウンジを抜けて二階にある自室へと戻る。


部屋の扉を開いて中にある机と椅子に向かって進む。


椅子を引いて机の上に置いている資料を手に取る。


そこには『討伐報告書』の文字が書かれた紙が置いてあった。


討伐報告者は、潤のようにリーダー職に就いている捕食者は、厄災を討伐した際に証拠として書類に保存するようになっている。


何時、どこで、どのような厄災を討伐したのかを報告した後、戦果として自分の成績に反映されるようになる。


討伐した厄災に応じて報酬ランクが上がり、それらの書類は貴重な情報として保管されることになる。


リーダー職がこれを書くことは義務として定められている。


逆にチームのリーダー職以外は書くことを強制されていない。


この書類を書くときは、対象の厄災を討伐した者が書く決まりとなっているので、赤い雲を倒した今回は潤が書くことになっている。


ちなみにランクB +以上の厄災を倒した時にこの書類を書く事が決まっている。


この書類を書くのは、そんなに難しい事じゃない。


内容自体はよくある報告書に似ている。

しかし、問題はその量にある。


潤ほどの実力であれば、毎日のようにランクB +以上の厄災を倒す機会がある。


その都度この書類を書かなければならず、書類を書いている最中にも厄災討伐に向かわなければならないことも稀ではない。


他にも仕事が山ほど残っている。

徐々に片付けなければならない中での作業は骨がいる。


ペンを取り報告書に記入していく。

静かな部屋で一人ペンを書き走る音が響く。


しばらく書くことに集中していると、家のインターホンが鳴る。


誰か来たのかと思いつつ、ペンを走らせる。

何やら下が騒がしいが気にしない。


こちらは報告者をまとめないといけない。

何しろ机の上には五十枚以上溜まっている。


さすがにこれ以上報告者が溜まっていくのは、色々とまずい気がするので書き続けていると、声が段々と大きくなるのが聞こえてくる。


何事かと思い、少しペンを止めておそらくこちらの部屋にやってくるであろう扉に目を向ける。


すると、数秒後に扉が開かれる。

予期せぬ来訪者が来たと潤は思った。


「入るぞ」

「御手洗指揮官!潤さんは今自室で集中しているのですよ」


御手洗は薫の話を聞かずにこちらにやってきたようだ。

薫が必死に止めようとしているが、聞く耳を持っていないと言った感じだ。


「大丈夫だよ薫。御手洗指揮官が来たら、さすがの僕も作業を止めないわけにはいかないからね」

「ですが……」

「それより何か飲み物を持ってきてくれないかな?多分ここまでくる間に何も飲んでないだろうから」

「……分かりました」

「ありがとう」


薫はすぐさま一階に戻り、飲み物を取りに行く。

その表情は渋々と言った感じだった。

潤は来訪してきた御手洗に目を向ける。


「やぁ、哲人。一体どうしたの?僕はやる事があるんだけど?」

「お前に報告する事があってきた」

「そうなんだ。相変わらず忙しそうだね」

「そう言うなら、お前も手伝え」

「いや、僕は色々とやる事があるから」

「謹慎中だと言うのに随分だな潤。手は空いてるんじゃないのか?」

「いやいや、哲人の仕事は哲人にしか出来ないから」

「屁理屈を並べるのが好きだな……」


そう言って哲人は、潤の手元にあった資料に目を落とした。


「なんだ?討伐報告者を書いていたのか?」

「そうだよ。これのせいでほとんどの時間報告者を書く時間に割り当ててるんだ。哲人が几帳面だからこんな書類まで書かなきゃいけないんだよ」

「俺のせいではない。上が決めた事だ」

「そうだとしても……厄災討伐して報告者書く前に厄災討伐してたら、報告者の山が出来たよ」


積み上げられた資料を哲人に見せると、呆れたようにため息を吐いた。


「書くだけなんだから文句を言うな。それに情報は貴重な資源だ。それがあるとないじゃ、全然違うぞ」

「全く。すぐそれ言うね。まぁ、いいや。それで?ここまで来たってことは、急な案件なんでしょ?」

「話が早くて助かるな。実はなーーー西国からの救援要請が出た」


潤は哲人の言葉に耳疑った。


「西国から?それは珍しいね。あの国は、僕たちの国より捕食者が多いからそう言ったことは無縁だと思っていたけど……」


潤の知る限りでは、西国という国はこれまで救援要請とは無縁の国であると記憶している。


過去一度も他国に救援要請を出したことのない国は、非常に稀である。


それこそよほどの危機でない限りありえない話だ。


「あぁ、俺も最初は驚いた。西国は捕食者の数も多いが、実力のある者たちがあの国には多い。その国からの救援要請ともなると、ただ事ではないということになる」

「なるほど。これは赤い雲もどきより辛いことになるかな?」

「詳しい話はまだ降りてきていないが、救援要請が来た以上は早急に動くべきだろう」


潤は嫌な予感がしつつ問いただす。


「つまり?」

「これから現地に向かう。付いてきてくれ。もちろんチームでだ」

「……報告書は?」

「そんなものは後回しだ。書く時間なら後で山ほどくれてやる」

「……分かった。薫もちょうど来たことだし」


潤の視線の先に扉を開けて待機している薫の姿があった。


「潤さんお茶をお持ちしました」

「薫今の話どこまで聞いてた?」

「最初の方は全く聞いてないです」

「分かった。悪いけど今から蓮と司に出発準備するように伝えてくれるかな?」

「……この時間にですか?まさか厄災が現れなのですか?」

「そういうわけじゃないけど、詳しい内容は哲人から伝えてくれるよ」

「取り敢えず付いてきて欲しい場所がある。そこで詳細を話そう」

「分かりました。二人に伝えてきます」


薫はすぐさま動き出し、二人に出発準備を伝えてくれる。

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