青天51
★☆★
晴れた空の兆しが見え始める今日この頃。
先程まで晴れ渡っていた空は、突如襲い来るスコールによってしんしんと雨が降りしきっていた。
轟音が耳を駆け抜け、どんよりとした雲が凄まじい速さで流れていく。
吹き抜ける風は綿飴の如く柔らかそうな雲を押し、目まぐるしく変わる様々な形をした雲が流れる速度で押し寄せて来る。
遠くには雲の上から覗き込む蒼天が一筋の光を灯らせ神々しく導きの輝きを放っていた。
その突然降ってきた雨に打たれて返ってきた二人。
潤と蓮はしばしの雨を凌ぐ為、自宅へと帰還していた。
二人は家に入るなり、先日現れた少女の話をしていた。
「それにしても何だったんだ?あの少女と男?」
蓮は自分達の目の前に現れたあの二人組が頭から離れなかった。
あれほどインパクトのある出会い方は今まで生きてきて経験したことがない。
「うーん……、僕にも分からない。見慣れない顔だったからね」
「そうなのか?潤が見慣れなとなると相当厄介だな」
「厄介かはともかく、少なくとも僕はあの顔は見たことがないな」
考える仕草をしている潤だが、やはり記憶を辿っても何処かであったという記憶がない。
あれが初対面ということになるだろう。
とても印象的だ。
「となると—――」
潤が会ったことのない人物が目の前に現れた。
それが意味することとは……。
「他国の捕食者ということになるだろうね」
「だろうな。俺らの知らない面子ともなれば、消去法でここではないどこかの国の捕食者って話になるか。にしても何の用だ?」
彼らが観光で東国に訪問しにきたとは考えにくい。
ともするとあの二人の捕食者は何らかの理由があって潤達に接触してきたということだ。
一体何の目的があったのかは、潤達には見当もつかない。
「彼女が何の目的で僕達にセッションを図ったのか?」
「不気味な感じはあったな……。謎多き女って雰囲気丸出しだったな」
「確かにミステリアスな感じはあったね。男の方もまるでこちらを観察するかのように見ていたからね」
「となると、偵察か?」
「でも、僕達を偵察して何のメリットがあるのかな?」
「それもそうだな……。さっぱり分からん」
議論を重ねても疑問が募っていくばかりで解決には至らない。
「彼女が何者かを探る必要があるかもね」
顎に手を置いた状態で蓮に告げると、
「潤さん彼女がなんですって?」
隣には彼の姿はなく、代わりに少女の姿があった。
「司ッ⁉いつの間に僕の隣に⁉︎」
「私もその話詳しく聞きたいです」
「薫まで⁉」
あまりの唐突な事態に潤は驚きを隠せないでいた。
何しろ彼女達は先程まで自身の部屋にいたからだ。
ここはラウンジ。
確かに話し声が聞こえてしまってもおかしくはないが、それほど大きな声で話していなかった。
この二人には聞かれたくない話ではないのだが、女性が関わってくるとなると、非常に厄介である。
今も殺し屋さながらの雰囲気を醸し出しながら、こちらを見つめている。
次に出す言葉は慎重にならなければならない。
「いや、特に大ごとな問題でもないんだけど……、先日他国の捕食者が接触をしてきてね。どういった目的で接触してきたのかを話していたところなんだよ」
嘘はついていない。
仮に嘘でなくても、この二人には慎重にならなければ、すぐに槍の雨が降ることになる。
それだけは避けなくてはならない。
二人がどう出るか伺っていると、
「他国の捕食者……ですか」
「何か心当たりでもあるの薫?」
他国の捕食者という言葉に覚えがあるのか。
薫は神妙な面持ちで顎に手を置く。
「それがですね。まだ全員に情報が回っているわけではないのですが、私たちが倒したと思われていた赤い雲なんですが……」
「赤い雲がどうしたんだ?」
「蓮。どこ行ってたの?」
「司に突き飛ばされてノビていたんだよ」
「あぁ……なるほど」
蓮が突然消えた理由が分かった。
「んなことより赤い雲が何だって?」
「それが今回倒した厄災は赤い雲ではなかったって御手洗指揮官が言ってたところを聞いたのよ」
「何だって?」
「その冗談は流石に笑えないわね……」
「既に心臓に悪いぜ……」
「確かに聞いた情報です。赤い雲ではなく、赤雲だっと言っていたわ」
「赤雲か……。聞いたことはあるよ。ランクB+の厄災だね。東国は赤い雲を見たことはないから早とちりしてしまったということかな。確かに赤雲なら赤い雲とは全くも別物だね」
「違うものなのか?」
「違うというよりは、似て非になるものといった感じかな。倒しといて損はない相手だよ。ただ今回は赤い雲を討伐したと思っていた分、気分の沈みはあるかもね」




