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青天47

空は相も変わらず黒く染められていた。

不気味に淀む空を何人もの人々が仰ぎ見る。


街は不思議と静かな空気を漂わせる。

外に出ている人間はほとんどいないだろう。


それは赤い雲の襲撃による影響の表れだった。

危険の伴う外出をなるべく控えて家の中に閉じこもることこそ賢い者の選択肢と言える。


何しろ一般人にとって厄災ディザスターは相手取れるものではないからだ。

いつ何時襲われるか分かったものではない。


身震いもする思いだろう。

家に身を隠すものも多いそんな中―――


「で、御手洗指揮官。俺達を招集した理由は何ですか?」


男の野太く低い声が響く。


「……」


御手洗は腕を組み、無言を貫いていた。


「まただんまりですか……。それほどまで全員が集合するのに固執する理由が俺には分かりませんがね」


不服そうに溜息を吐き捨てると、男はちらりと全体を見渡した。

そこには自分を含めた男六人、女が三人椅子に腰かけていた。


彼らがいるのは大きなラウンジが備え付けられた施設。

会議のためだけに行われるため本来はあまり使用されない。


そのラウンジで御手洗は全員が揃うまで待機していた。

いつもなら後一人を除いて全員が集合するのが常なのだが、今回は少し違った。


毎度の事お馴染みの幹部ナンバー最高ランクの朝霞凛華あさかりんかに加えて、今日は次席の藤咲夜桜ふじさきよざくら、更にはナンバー五の高浪絵夢たかなみえむの姿がない。


彼女達が何故すぐに集まらないのか。

幹部ナンバー四の鴻渉こうのわたるは、空席の椅子を見つめながら腰を掛ける。


誰よりも規律を重んじる鴻は集合時間内に集まらないことが許せなくもあった。

何かしら緊急を要することがあれば、仕方がないと割り切れるのだが、連絡くらいはしてもいいと思うこともある。


だが、それを言ってしまえばまた固い人間であると言われる可能性がある。

何よりここに集まるものは大抵が実力をある程度有した者達ばかりだ。


その分一癖も二癖もある。

個性が強い者達の集まる会議で規律なんてものは存在しないのだろう。


かといって自由でいられるのも困りものなのだが……

と、その時―――


「おいおい、またか?我慢を覚えられないのか?」


苦悶の顔をしている鴻に話しかけてくる人物がいた。

話しかけられた方をちらりと一瞥する。


そこにいたのはこの場に似つかわしくない男が横に居座っていた。

その顔を見た瞬間、鴻は顔を少し苦ませる。


「話しかけて来るな」

「釣れねぇこと言うなよ。周りを見てみろよ。皆無口で話す相手がいねぇんだよ」


彼が不満そうに愚痴を溢す。

その男は幹部ナンバー七、上野信太だった。


確かに彼の言う通り、誰一人として言葉を発する者はいなかった。

痺れを切らした鴻が一番初めに発したくらいなのだから。


しかし、話してみて分かるが、この男が幹部ナンバー入りした事実を未だに飲み込めない。

御手洗指揮官は何を持ってこの男を引き入れたのだろうか?


謎は深まるばかりである。

隣に座る男を訝しそうに見つめる鴻。


そんな彼が抱えている悩みなど知る由もないといった風に上野は口を開く。


「にしても、朝霞は毎度のことだとしても、藤咲に高浪がいないとはな。一体何してるんだ?」

「俺が知るか」

「御手洗指揮官は相も変わらず黙っているし、幹部メンバーが全員集合ってことは何か重大な事でもあったんだろ?なら、早く会議することに越したことないのにな」

「べらべらとよく喋るものだ」

「仕方ないだろ?お前くらいなんだよ反応してくれるの。藤宮はお堅い奴だから話しかけても反応してくれねぇし、南雲は何考えているか分からないだろ?消去法でいけば、お前くらいなんだよ話聞いてくれるの」


別に聞いているつもりなど毛頭ないのだが……

やはり、この男は理解出来ない。


自分の範囲外の男だ。

しかし、上野の言っていることもあながち間違いではない。


鴻は視線を少しだけ外して名前の挙がった藤宮と南雲に目を向けた。

藤宮は俺より硬派な人間だ。


いかにも真面目が板についている。

そんな印象だ。


鋭く突き刺すような目は誰もに怖いイメージを与えるだろう。

大して南雲は、何を考えているのか皆目見当もつかない。


今でさえ一人で呑気に鼻歌を歌いながら会議が始まるのを待っていた。

しかし、話しかけてくる上野は全く黙ることなくしゃべり続けてくる。


正直うんざりしている。

どういう風に接すればいいか考えていると、彼が更に口を開いた。


「お、噂をすれば来たぜ」


その声に反応して鴻が見ると、確かに上野の言う通り夜桜と絵夢がラウンジへと赴いた。


「遅れました」

「同じく」


高浪が軽く頭を下げて席へと着き、夜桜がそっぽ向いた状態で席へと座る。


「では、会議を始めようか」


そして、案の定朝霞凛華がいない状態で会議が始まった。

空席二つを除いて始まる会議に誰一人として違和感を感じる者はいない。


それは田島紫咲たじましさきも例外ではない。

初めて参加した紫咲は最初こそ驚いていたが、やはり二回目ということもあってなのか。


そんなに驚いている様子はないように思える。


西園寺さいおんじちゃん……やっぱりあの二つは空席?」

「えぇ、前回も今回も同じですわ」

「えぇ……」


西園寺の言葉に田島は若干引き気味だった。


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