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青天24

南雲は皆を見渡しながら言葉を紡いだ。


「もしかしてだけど、朝霞凜華に負けじと―――」


その瞬間、彼の言葉を遮るようにして一発の銃弾が彼の顔の横をすれすれで通り過ぎていった。

南雲は顔を引き攣らせつつ弾丸がめり込んだ壁を見て血の気が引いた。


「次、その口を開いたら風穴をあけます」

「ははは……、こりゃ参ったな……」


バツが悪そうな顔をした南雲が手をひらひらさせて明後日の方を向いた。


「任せていいのか?」


鴻が確認の念を押すが、


「誰にものを言っているのですか?」


と、返され何も言えなくなる。


「んじゃあ、夜桜が先陣切って近接で攻撃。それに続いて俺と藤宮と高浪が夜桜の後に続いて赤い雲の注意を引くから、射撃班である鴻と南雲と紫咲と西園寺が赤い雲の星々の源を破壊してくれ」


信太の意見に誰一人文句を言わずに聞いていた。


「リーダーのやつらもそれでいいよな?」


彼は自分達の後ろに立っているリーダー達に意見を聞いた。


自分達の倍の数はいるだろう彼ら全員を見つめる。

誰もが押し黙ってる中、


『それでいいと思います』


誰かが言った一言で各リーダーからも頷きが出始め確定を貰った。


彼らリーダーは基本的に意見を述べない。

幹部達の決めたことを成すための人材でしかない。


「どうやら決まったようだな」


その終わりに合わせて御手洗は閉じていた目を開いて全員を見渡した。


「では、解散としよう。各自自分の隊に報告した後持ち場で待機」


御手洗の号令で各々が会議室を後にしていく。


「ふぅ~、終わった終わった」


安堵の息を吐いて会議室を出ようとする信太。

彼が扉に手をかけ開けると同時に扉が開かれ、その先にいた謎の影にビックリする。


「うぉっ⁉」


慌てて後ろに仰け反ると、信太の後ろにいた鴻にぶつかった。


「どうした?」


鴻が問いかけると、信太は驚いた様子で扉の先にいた人物を見た。

彼の視線の先には、


「すまんすまん。まさか同時に扉開けるなんて思わなくてよ……ってなんだ。信太かよ……」


謝り口調で会議室に入ってきたのは金色に髪を染めた男―――柳蓮だった。

彼は謝ってはいたが、信太を見た途端、急に態度を変えて開き直った。


「柳か……っ」


信太はその人物が蓮だと分かると、視線を鋭くして彼を睨みつけた。

睨まれた蓮はキョトンとした顔で信太を見つめた。


「ん?どうした?そんな怖い顔して?」

「なんでもねぇよ……。だが、あぶねぇだろうが‼気をつけろ‼」


愚痴を零しながら蓮の横をすり抜けていく信太の様子をじっと見ていた蓮がへらへらしながら謝った。


「へいへい、すいませんね」


適当に謝りつつ、彼の他にもぞろぞろと会議室から出てくる人達を順番に目で追っていった。

その時―――


「ちょっと馬鹿蓮。あんた何先走ってるのよ」


と、後ろからかけられた薫の声に反応してそちらを振り返った。


振り返った先にいた彼女は不貞腐れた態度を取りながら、司と共に蓮の近くに寄ってきた。


秋月薫あきづきかおる……」


ぽつりと呟いた言葉に薫が反応を示した。

彼女の名前を呼んだのが誰なのかを薫は分かっていた。


「あら?夜桜じゃない。久しぶりね?」


薫は自分の名前を呼んだであろう夜桜に向き直って挨拶を交わそうとする。


「あなたと交わす言葉なんてない。幹部を自ら降りたあなたとは……金輪際話したくもない」


しかし、返ってきたのは無情の言葉。

それを薫の隣で聞いた蓮は内心怯えていた。


普段自分がどれほど酷い目にあっているかを思い出しながら身震いさせた。


(大丈夫……なのか?)


だが、蓮の心配が幸をそうしたのか。

薫は何も言わずにただただ夜桜を見つめた。


そして、夜桜はそれっきりで薫の横を通って行ってしまった。


「まだ根に持ってるのね……」


誰にも聞こえないような声でそう呟いた薫の表情は、少し雲がかかっていた。

蓮がその様子を黙って刮目していた。


その時、


「ほら、二人共。そんなところに突っ立ってないで中に入るわよ」


司が二人の背中に手を当てる。

急かすような口調で言うと、蓮と薫の背中を強引に押して会議室に入ろうとする。


二人の後ろにいた司が背中を優しく押して会議室に入ろうとする。


「ちょっ‼司押すなって……‼」

「そうよ‼自分で入るから……っ‼」


二人の抵抗も虚しく、強引に会議室に入る形になった三人。

そのまま奥まで進もうとした時―――不意に司の足が止まる。


不思議に思った二人は後ろを振り返って司を瞳に映した。

彼女の様子は綺麗に光る瞳を揺らし、どこか狼狽した様子だった。


彼女の視線の先を二人は一緒に見据えた。


そこには銀縁眼鏡をかけた男が規則正しい姿勢を維持したまま、こちらに真っ直ぐ向かって来る姿だった。


彼は眼鏡を整え直し―――

そして、一言。


「久しぶりだね司」


藤宮は自分と向かい合った形にある司の名前を呼んだ。


「浩ちゃん……」

「「浩ちゃん⁉」」


司の言葉に唖然とする蓮と薫は、二人揃って顔を見合った。


「驚くのも無理はない。私と司は昔からの幼馴染みなんだ」


藤宮から出てきた幼馴染みという単語に蓮は安堵の表情を浮かべて息を吐いた。


「幼馴染みか~……」

「なんだ。そうだったのね……」


二人は満面の笑みを綻ばせて笑う。


((恋人かと思った……))


この時、二人の心の声はぴったりと揃った。


「浩ちゃんは相変わらず変わらないわね」

「そんなことはない。私だって日々成長している」

「へぇ、例えば?」

「実はこの前……眼鏡を新調した」


その言葉を聞いた蓮は、


(それは成長と言えるのか……ッ⁉)


危うく声が出かかりそうになるのを耐え抜いて、口元を抑えて自らを制す。


「ふふっ、変わらない浩ちゃんで良かったわ」


はにかむ笑顔で返す司だが、彼女の内心もまた悲痛な叫びが飛び交っていた。


(また浩ちゃんの天然発言が……。いつもいつも私と会う度に話題を持ってきてくれるのは嬉しいのだけど……。まるで、明後日の方向な発言には困っているのよね……)


しかし、当然思っていることを口にすることの出来ない性格の司は、藤宮にこのことを伝えることが出来なかった。


「では、私は他のメンバーに作戦を伝えなければならないのでここで失礼する。司また戦場で」

「うん……じゃあね、浩ちゃん」


用事があるといい藤宮は会議室を後にする。

その様子を最後まで見送って、彼の姿が見えなくなったと常々確認した後、


「浩ちゃんと話すと疲れるわ……」


と、げっそりとした顔で蓮と薫に言った。

蓮は愛想笑いで司の苦労を感じ取った。


「幼馴染みなんだっけ?」

「ええ……」

「なんかそういうのって憧れるわね」

「何言ってるのよ。薫だって、夜桜ちゃんと仲良しだったじゃない」

「昔はね……」

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