表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/70

青天19

潤は未だに高鳴る心臓を宥めて、手に一発の弾丸を転ばせた。

彼が手に持っているものこそ先刻前に放った弾丸だ。


先程放った潤の銃弾は、雷電雲の攻撃を阻害するために作った潤オリジナルの特殊弾である。

中に装填されたものは雷の成分を中和するとある水を仕込んでいた。


それは―――純水である。

不純物を一切取り込まない水により雷は、その水に流れることなく中和される。


汚れきったスコールの水によって流れていた電撃は潤が作った純水によって塞がれた。

そのおかげで雷電雲の攻撃を無効化し、蓮達に当たる前に防ぐことに成功した。


つまり打ち消したのだ。

一発の銃弾―――。


しかも、雷電雲が攻撃するよりも前に放ったその一発が、奴の攻撃をいとも容易く防いでみせた。


咄嗟の行動だったのにも関わらず彼はやってのけた。

その勇敢ある行動にーーー


『おいおいマジかよ……』

『俺、確実に死んだと思ったぜ……』

『これが清水リーダーの力なのか……?だとしたら心強いぜ!』


戦場を埋め尽くさんばかりの少年少女達は、各々が雷電雲によって放たれた雷撃に目を当てていた。


それこそ数秒前まで自身の死を覚悟していた者も。

三者三様の言葉が場の雰囲気を一層盛り上げる。


周りの皆も彼らの声に耳を傾け、そして『勝てるのでは?』と思い始める。


「………………」


しかし、当の本人である潤は、浮かない顔をしていた。

なぜならーーー


(それにしても、さっきから何かがおかしい……)


潤は微かな違和感を胸に抱いた。

正体が分からないわだかまり。


それは普通なら気付かないが、上から見ている潤には分かるとある違和感。

確かにスムーズに事は運んではいるが、微かな違和感が拭いきれなかった。


そして、潤の違和感は確実のものとなる。

雷電雲の注意が一向に逸れない。


真っ先に潤に向かって攻撃がくる。

これはどういうことだろうか?


潤は下を覗き込み違和感の正体を突き止めようとするが、雷電雲が潤に向かって攻撃を繰り返し邪魔をしてくる。


「これじゃあ、埒があかないな……」


どうしたものかと考え込んでいると、不意に視線の端にとあるものを見つけた。

潤はその場を立ち上がり、視線の先にある巨大な木に目をつけた。


ゆっくりと木に近づくと、潤はその木を登り始めた。

高さにして十メートルはあるだろうその木をささっと登り、一番上へと辿り着く。


そして、その木を身の隠し手として利用することにした。

幸いにも雷電雲はその様子を見ていなかったのか。


突然見失った標的に対して止まっていた。


「上手くいったみたいだ」


ここである程度気配を消すことにする。

そして、好機を見計らって出れるタイミングをじっと待つことにする。


「後は蓮達からの連絡を待つだけだ―――」


突如立ち止まった雷電雲が、再び動き始めた頃―――。


「今のところ問題なく動けてるな……」


蓮が辺りを見渡して言う。

戦況を確認していく。


不意に雷の放電音が聞こえてその場から横っ飛びする。

数秒後、先程いた場所に雷が撃ち込まれた。


「そうね……。統率は取れてるみたい……」


薫は銃口を雷電雲に向けて引き金を引いて銃弾を三発撃ち込む。

鈍い音と共に放たれた銃弾は雷電雲の形状に風穴を開ける。


しかし、どれ一つ致命傷を与えるようなダメージではなかった。


「けど、何かしらこの違和感……なんて言うか異様に―――」

「やりずらいわね」


薫の言葉を遮り、スナイパーライフルを片手に持った司が言う。

司は引き金を手前に引くと、ドンッという音を立て弾丸が凄まじい速さで飛んでいった。


『ゴォォオオオ――――!』


三度の雄叫びが挙がる。

司と薫の攻撃を食らった雷電雲が苦しんでいる。


二人の猛追を加えるかのように周りにいた他の隊員達も追撃する。

雷電雲にダメージを与えつつ、司は自分の見解について語っていく。


「統率が取れているのに、連携がまるで取れていない……って感じかしら?」


司は周りを一瞥して言う。

彼女の言う通りだ。


確かによく見れば先程から、隊員達の攻撃の譲り合いが多々起こっていた。


『うおっ!⁉あぶねぇな‼どこ向かって撃ってんだよ‼』

『お前こそ俺の前に来るなよ‼邪魔なんだよ‼』

『なんだとッ⁉』

「やめろ‼今は仲間同士で争ってる場合じゃねぇだろ‼」


攻撃を封殺された少年が他の隊員に突っかかる。

彼の態度を気に食わなかった男も突っかかる。


見かねた蓮が喧嘩になる二人の前に割って止めに入った。

あまりのグダグタ感に仲間内での喧嘩が始まる始末である。


「全く……。どこの隊も屑ばっかりね」


薫は心底気持ちが悪いとばかりに喧嘩している男達に侮蔑の目を彼らへと向けた。


「なんたってこんなことになってんだ?」

「知らないわよ……誰かが裏で何かやってるんじゃないの?」

「裏で……」


その時―――蓮はある違和感に気付いた。

それはつい先程まで自分達の後ろにいたはずのある隊がいないことに……。


「おい、瀬川隊はどこ行ったんだ?」

「えっ?」


司が蓮の言葉に反応して後ろを振り返る。

すると、蓮の言葉通りいくら探しても瀬川どころか、残りの仲間達の姿が影も形もなくなっていた。


「どっ、どういうこと……?」


司の瞳が揺れ始め、明らかな狼狽と困惑が見て取れた。


「まさかあいつら逃げたわけ?本当っ不逞なやつらね‼」

「おいおい、そんなことあるのかよ?潤の時といい……」

「どうしましょうか。詮索を入れたいのだけれど―――」


その時、耳をつんざくように雷電雲から帯電音が聞こえた。

見上げれば雷電雲が光を発光させながら、バチバチと鳴らして攻撃の姿勢を見せていた。


攻撃が来ると悟った蓮は標準に雷電雲を見据えて、引き金を引こうとする。

だが、その前に雷電雲がまばゆい光を閃光させた。


数秒後―――蓮達がいる地上に雷が穿たれ、巨大な振動と共に音が辺りに飛来していく。

視界に広がる光に目を奪われつつ、蓮はその場から逃げるようにして瞬時に飛び去っていた。


地面に転がり威力を殺して立ち上がる。

スコールによって湿った地面に足を取られつつ速撃する。


「ちっ……、さっきから全然攻撃出来てねぇ……」


ゆっくりと立ち上がった蓮が苛立ちを言葉に込め汗を滲ませた。

蓮は攻撃が当たらないと悟り、手に持っていた武器を銃から斧へと形態変形させた。


ボタン一つで稼働するその装置で遠距離から狙撃する攻撃から近距離で厄災を斬るための攻撃へと変えていった。


蓮はその武器を使って雷電雲に向かって攻撃を仕掛けようとする。


しかし、残念なことにこちらが攻撃をする前に雷電雲からの攻撃を先に食らってしまうため、動きを制止されてしまう。


やはり、近距離での攻撃は不可能だと思った蓮は、再度銃に持ち替えて挑んだ。

蓮は三度の弾丸を素早く装填させ、引き金を絶え間なく弾く。


撃ち放った弾丸は、螺旋回転を起こして軌道上にいる雷電雲へ被弾する。

三点の穴が開き動きを止めに図った。


「そう簡単には行かねぇよな~」


顔を引き攣らせて雷電雲を目の敵のように見つめた。

三度の弾丸で空けた穴をいとも簡単に再生させ、元の形へと変えていく。


「馬鹿蓮」


颯爽と走りながら、蓮と並走していた薫が彼の名前を呼んだ。


彼の悔しさに滲ませた表情を見つめ、その間に彼女は一発の弾丸をノールックで撃ち込んだ。

名前を呼ばれた蓮は顔を向けて反応する。


「なんだよ?」

「無闇に撃ったって仕方ないでしょ‼ちゃんと狙って撃ちなさいよ馬鹿‼」

「おっ、おう……すまん……」

「……今日はやけに聞き分けいいじゃない?いつものアンタなら、『俺に指図すんじゃねぇ‼』とか言って私達の言葉を蹴っ飛ばしてすぐ暴走するくせに……馬鹿蓮にしては随分気持ち悪いわね……」

「気持ち悪いとか言うなよ⁉」


戦闘中にも関わらず、罵倒を浴びせてくる薫に驚きながら蓮は彼女を見つめた。

確かに本来の彼ならば、薫の言葉など無視して戦闘を続行していただろう。


蓮は一度戦闘に入ると集中力が何倍にも膨れ上がり、周りの声が聞こえなくなることもある。

それほどに戦闘好きの蓮だが、今日ばかりはそうも言ってられなかった。


二人は喧嘩しながらも、雷電雲への攻撃は忘れずに撃ちまくっていった。

何度も何度も雷電雲に穴が空いては塞がってを繰り返していた。


「ちょっと瀬川のヤローの動向が気になってな……一体、何企んでんだ……?」

「そんなの気にしたって仕方ないでしょ蓮君。今は目の前の敵に集中しなさい」


蓮が思想に頭を悩ませていると、二人の後ろに付いて走っていた司が集中力を乱している彼に活を入れる。


今は瀬川のことを考えるよりも雷電雲に集中することが先決である。


「……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ