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第六章 終わりの始まり

潤と分かれた三人は雷電雲に向かって走っていた。

蓮達の周りには同じように少年少女が雷電雲に向かって走っていく。


その目の前にはスコールが立ち塞がるように眼前を埋め尽くし、行く手を阻もうとしている。


ふと、一呼吸挟めば、雨独特の香りが蓮の鼻腔をくすぐる。


「スコールが邪魔だな……」


蓮は目の前に立ちはだかるスコールに目を置き一つ吐き捨てた。

スコールが邪魔していることにより簡単に進むことは出来ない。


降り続く雨が地を濡らして地盤を破壊せしめる。

崩れた地面に足を取られ、思うように進めない。


「くそっ……‼︎」


悔しさを滲ませ捕らわれた足元を見据えた。

すぐさま足についた泥を振り解いて走る。


すぐに足を出さなければ、何度も何度も捕らわれてしまう。


「馬鹿蓮‼︎落ち着きなさい‼︎」


彼の様子を見かねた薫が注意を促すが、そんなこと彼がすぐに頷くわけもなく。

蓮はそそくさと前を走る。


「全く……」


彼の後ろ姿を見つめ薫は溜息を吐く。

彼はこと戦闘において前に先陣を切って行くタイプなのだが。


自分達のことを顧みず先走ってしまう癖だけは、すぐに直して欲しいと思う薫であった。


「薫、蓮くんの姿見失わないようにね」


呆れ返っている彼女の背後から声が聞こえた薫は、ちらりと走りながら視線の端に映った人物を横目で見る。


薫の後ろを走る司が蓮の後ろ姿をしっかりと確認している。

戦闘中に仲間の姿を見失えば、それだけで致命傷に繋がる。


仲間との連携こそ厄災に勝つための活路。

司は少しだけトルクアップして翔る足を早めた。


薫の脇を通り抜けてぐんぐん前へと進んで行く。

自ららの脇を過ぎて行く司の背中を見つめて、彼女に続いて薫も少しだけ翔る足を早めた。


三人の目の前には雷電雲がスコールと入り混じる直前まで迫っていた。


二つの厄災が混じれば、それこそ止める術などない。

それほど強大な敵へと変貌を遂げてしまう。


三人の翔る足は必死に雷電雲を捉えんとする。

どちらかを止めなければ、最悪の事態となりうる。


それだけは阻止せねばならない。

蓮は腰に添えていた武器を手に取って前を向いた。


スコールがこちらの動きに気付いて動き出した。


「ちっ……」


気付かれたことに腹を立てた蓮が一つ舌打ちをして迎え撃つ。

スコールは少し前へと動くと、雨粒の音を最大限に上げる。


それにより鼓膜が破れんばかりの大音量となって襲いかかる。


しかし、捕食者の蓮には効かない。

効かないと分かったスコールは手段を変えて向かってきた。


雨粒が形状を変えていく。

その姿は、雨粒の槍の如く。


無数の槍の姿になって襲い来る。

蓮は手に持っていた銃を構え、全てを撃ち落とさんとする。


数十発の発砲音が木々を伝って木霊する。

空薬莢が宙を舞い、ゆっくりと落ちる。


蓮の目の前に来ていた雨の槍は全て相殺された。


「ふぅ……」


全ての攻撃を防いだ蓮が息を吐く。

安堵した表情で立ち上がる。


「馬鹿連‼︎次来るわよ‼︎」

「―――ッ‼︎」


薫の声が聞こえ、咄嗟に後ろに飛び退いた。

数秒後、先ほど蓮がいた場所に雨の槍がより鋭さを増して地面を抉り取った。


「……」


その光景を見た蓮は言葉を失った。


「どうやら簡単には行かないらしいな……」


額に汗を流して顔をくしゃくしゃにする。

どうやら想定していたシナリオとは少し違うようだ。


彼の顔に余裕が無くなっていく。


「うおっ……‼︎」


直後突然横に飛んだ蓮が見たのは―――スコールの先。

悠然と空中に浮遊する雷電雲が一つの閃光を迸る。


きらりと光った瞬間―――蓮は横に退いて退避。

すかさず行動に移した蓮の判断は正しく。


蓮がいた場所に雷光が凄まじい速さで襲って来たのだ。

地面をスコール以上に抉り取った雷撃が蓮の命を狩らんとする。


当たればひとたまりもない雷撃に冷や汗が止まらなくなる。


気が付けば、手に握っていた銃が小刻みに震えていた。

カタカタと音を鳴らしてその恐怖心が伺える。


どうしたものかと考えていたら遅れを取る。

蓮は行動に移そうと腰を上げた。


その時―――


「しまっ……⁉︎」


蓮は忘れていた。

雷電雲の特徴を。


一定範囲内において雷電雲は最強の矛を誇る。

動けば狙われてしまうとあれほど言われていたのに動いてしまった自分の間抜けさを呪った。


案の定―――

雷電雲から再び雷光が迸り、雷撃が飛んで来た。


流石の蓮も体勢を崩した状態で避けることは困難である。

おまけに動けない状態でピントが合ってしまった。


これで完全に避けることは出来なくなった。

ジグザグに襲いかかる雷撃が蓮に着弾する。


その直前―――。

雷光が瞬時の速さで向かう中、蓮に当たる直前でその雷撃は消え失せた。


「……」


何が起きたか分からない蓮は、キョトンと雷撃が来た方向を向いていた。

しかし、司と蓮は雷撃が突然消えたのを確認していた。


雷撃は誰かが放った弾丸によって消えたのだ。

正確には相殺した。


二人は知っている。

先ほどの狙撃が誰のものなのか。


痛いほどに痛感している。

この芸当が出来る人物を二人は頭に浮かべ、不敵ににやりと笑った。


一方全く分からないといった様子の蓮は、何の躊躇いもなくその場から動いてスコールを無視し、雷電雲に牽制をかけた。


誰がやったくれたのかは分からないが、感謝の念を知らない誰かに向けて蓮は戦闘を続行した。


三人が剣を携えてスコールと雷電雲に立ち向かっている中でその様子を遠目で見ていた少年がいた。


彼は幽鬼を漂わせ、亡霊のような瞳で様子を伺っていた。


「ちっ……」

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