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青天13

彼は相槌をしてくれる。

この思い出の中に青年はいないのに。


それでも彼はまるで自分のことのように雰囲気のある風貌で黄昏れていた。


二人の間に静寂という名の風が流れる。

風が吹き、轟々と音が鳴る。


轟く風がふと止んだ。

しばしの静寂が二人の間を訪れる。


その静寂を打ち砕くかのように、活発そうな身なりの少女が二人の間を割って入ってきた。


「何、納得してるのよっ!阿呆蓮‼」


彼女は少年の名前を呼び頭に手刀を浴びせる。


「痛っ⁉︎」


少女は格好つけながら涼しい顔をしている蓮に近付き、こつんと彼の頭を叩いたのだ。


叩かれた蓮と呼ばれた少年は痛そうに頭を抱えていた。


「全くもう……‼︎」


力を抜きゆっくりと息を吐き捨てる。

腕を横に組んで鋭い眼光で連を見つめていた。


そんな彼女を潤は見つめた。


活発そうな見た目とは裏腹におしとやかで和みのある彼女の声がなんとも耳に心地よく響いてくる。


「ふふっ、相変わらず二人とも仲が良いのね」


そんな二人のやり取りを少し離れた場所にいた優しい瞳で見守るもう一人の少女が、じゃれ合っている二人を交互に見やりながら微笑みかける。


仲が良いと言われた少女は彼女の台詞に対して突っ込みを入れた。


「なっ⁉仲良くなんかないわよッ‼冗談は程々にしてよね司‼」


司と呼ばれた少女は口元を抑えて笑いを隠していた。


少女は顔を赤らめ必死に否定をする。

彼女の手は蓮の脇腹を何度も小突くように往復し攻撃していた。


「ぐふっ……‼ぐふっ……‼」


脇腹を殴られて息が漏れる。

腹筋に力を入れて耐えようにもそれ以上の力が蓮の脇に加わった。


苦しそうにしている蓮を尻目に司は、尚もからかうように少女を見つめながらニヤニヤし始める。


「またまた〜。薫は照れ屋さんなんだから‼」

「だから違うってば‼︎」


必死に否定して事実の虚偽を申し立てるが、司は聞く耳を持たない。


薫と呼ばれた少女は不貞腐れた態度を取りながら司を見つめた。

それを見た司は更に笑ってみせた。


賑やかな雰囲気が辺りを包み込んだ。

その朗らかな空気を感じた潤は想いを馳せる。


三人が賑わい始めると、


「はいはい、皆そこまで」


潤は手を二回ほど叩いて騒ぎ立てている皆の視線を集めさせた。


「三人のおかげで元気になったよ。ありがとう」


潤は三人が自分を元気づけようとしてくれたことに感謝の言葉を言う。


「気にすんなよ」

「私達はいつでも潤さんの味方です」

「何処までも付いて行きますよ」


三人の力強い言葉に潤は心が締め付けられた。


(あぁ、本当にいい仲間を持ったな……)


噛み締めた幸せを心に閉じ込めながら言葉を紡いだ。

短く、短的に、それでも意志が伝わるような言葉を。


彼らが自分の意志を伝えてくれたお返しにと―――

潤は彼らの思いを背負っていると自覚し、


「じゃあ……行こうか」


これから向かう戦場へと赴くため闘志を燃やした。


潤の言葉に三人の顔が緊張に赴いた。

これから始まる戦いを前に。


身体を、心を落ち着かせる。


きっとこれも試練の内なのだと潤は、心の奥に浮かび上がる焦燥に駆られる。


かつて自分が彼女によって助けられたように。

今度は自分が彼らを導こうと決意して。


震え手を皆に隠して、立ち上がる。

そして―――前へ歩き出した。



★☆★



光が差し込まない暗がりの部屋に、御手洗指揮官と潤を含めた五人が巨大なスクリーンを前に見据える。


自分達の身の丈以上の巨大なスクリーンに向かって顔を向け、少し上に見上げる形で画面を覗き込んだ。


そこにはある映像が映し出されていた。


「今回の標的となる雷電雲の行動パターンが此処に記されている。まずは、これを見てくれ」


四人は御手洗に呼ばれてモニター室に来ていた。

戦闘に備えての小手調べを済ませるということだったが、スクリーンには静止した動画が映っていた。


御手洗は備え付けられていた巨大なスクリーンのスイッチを押し起動させる。


鈍い起動音とノイズを混じらせ、スクリーンに映像が映される。

若干の映像に不備はあるものの四人は黙って見つめた。


御手洗に言われた通りスクリーンに目をやる。


スクリーンから映し出された映像にあったのは、雷電雲らしき標的と厄災から逃げ惑い襲われている人々の姿が映った。


「この雷電雲は動くものを基本標準とし狙い撃っている言わば、完全自動型雷撃砲とも言えるだろう。その証拠にここに注目して見て欲しい」


御手洗が指指した場所に四人は目を移す。

静止していた動画に向かって御手洗がスイッチを押すと、僅かな時間差が発生した後動き出した。


最初に聞こえて来たのは悲鳴だ。

人々の悲鳴。


次に聞こえてくるのはのっそりと動き出した雷電雲の音だった。


その音は微弱な振動を伴って反映してくる。

御手洗が見せたかった映像。


そこに映し出されていたのは、人々が恐れ戦き逃げ惑う姿が鮮明に映像に記録されているところだった。


「酷いシーンを見せるわね……」


薫は口を手で覆い、吐き気顔でその情景を眺める。

薫がそうなるのも当然だ。


何故ならこの映像始まって早々ーーー人々が雷に撃たれては黒く荒み、人としての形を成していた者がただの黒焦げた物へと変わっていったからだ。


「それはすまなかった―――が、見て欲しいのはそこじゃない」


御手洗は再びスクリーンに視線を集めさせる。

彼が見せたいシーンはここではないと、分かると潤達は再びスクリーンへと視線を戻す。


尚も人々の黒焦げるシーンが映し出される中、次のシーンでそれは明らかとなった。


「ここだ」


御手洗は目的のシーンに入った途端、リモコンで映像を止めてスクリーンに近付くと、ある場所を指差した。


彼が指を指したさきにあったのは、先程まで怯えていて動いていなかった生存者が逃げようと決死の思いで体を動かした瞬間だった。


勇気ある行動を賞賛しようとしたのを後悔するかのように、彼は雷に撃たれ黒く焦げたのだ。


衝撃の瞬間を映像が捉えられていた。


「これは……」

「……?」


潤は今のワンシーンですぐさま御手洗が何を言いたいのかを理解したといった表情を見せた。

対して蓮はまるで分からないといった表情で、頭にハテナマークを浮かべながらキョトンとしている。


「はぁ……あんたの頭の中は相当空っぽのようね」


彼が理解に乏しんでいると察した薫は、呆れ返った表情で蓮を見つめ哀れ始めた。


「なんだと……?」

「何よ?」


彼女の行動が気に食わなかった蓮が突っかかる。

薫も蓮に睨まれて応戦する。


互いに睨み合った状態の二人に―――


「止めなさい二人とも。御手洗指揮官の前ですよ」


二人が喧嘩になりそうになった雰囲気を司が一蹴して宥めさせる。

二人のいつもの喧嘩も流石に御手洗指揮官の前では粗相に当たる。


ここは黙ってもらうことにする。

彼女の一言で睨み合っていた二人は互いにそっぽを向いて距離を取った。


「話を進めていいかな?」


場を弁えた行動をした二人。


御手洗は彼らの愚行を特に怒るといった様子もなく話を進めようとする。

当然否定する必要もなく、四人は黙って頷き先を促した。


「まぁ、見ての通りという説明しか出来ないが……雷電雲の特徴はその高い攻撃力と寧々君から話は聞いているよね?」

「寧々……?あ〜!あの眼鏡美人のーーー」

「あんたは黙っていなさい‼」

「痛ッ⁉」


余計な言葉を挟んだ蓮に対して薫が制裁の鉄拳を加えた。

御手洗指揮官の話を早速食って取ろうとした罰が当たった。


毎度の如く頭を叩かれている蓮はもう慣れたのか。

痛いという言葉を出した割には平然としていた。


或いは御手洗指揮官の前だからなのかは不明である。

話が再度切れてしまったので潤が御手洗の代わりに会話の切り口を開き繋いだ。


「雷電雲の特徴である攻撃力にはある特別な能力的な物が備わっているんだ。それによって雷電雲の攻撃力が二倍にも増大するんだよ」

「能力的な物?」


潤の物言いに蓮が疑問に思う。

それは非常に厄介ごとかと蓮は疑いをかけた。


聞き出そうと口を開こうとするより先に御手洗が口を開ける。


「そう。奴には能力がある。その能力はーーー定範囲内の動く物に対して反応し、対象者に雷を穿つというものだ」

「……?」

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