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青天7

「あれは……まさか星々の源ですか?」


司が驚いた顔でモニターを食い入るように見ていた。

蓮と薫もモニターに注目する。


「その通りだ。どうやら行動をしていない場合、星々の源だけは防衛本能が働いていないらしい」

「つまり、今活発化していない状態なら……星々の源を狙撃で狙えるということですね?」

「そういうことになるな。話が早くて助かる」


そう言うと御手洗は、今度は近くにある資料を手に持って蓮たちに渡す。


「驚くことに奴は少しずつだが、地面に近づいてきている。奴からの距離は約十五キロメートルだ」

「まだ射撃で狙える距離ではありませんね」

「そうだ。いずれにしろ、奴に攻撃を与えれば必然的に星々の源は狙いづらくなる」

「完全防御ではないのが救いですが……」

「そうだな…………そう言えば、お前達は三人しかいないようだが……もう一人はどうした?」


御手洗の確信をついた一言は、三人の動きを止めるには十分なものだった。


三人は内心ぎくりとしながらも、その気配を悟られずに言った。


「今は……まだ来ていません」


司の言葉に御手洗の顔に若干雲がかかる。


「分かってると思うが……四人全員が揃わなければ、出撃を許可することは出来ない」

「はい、それは重々承知しております」


場に一気に緊張感が走る。

下手に言葉を間違えれば、出撃許可が降りなくなってしまうかもしれない。


なんてことを考えていた司だったが、次の瞬間―――笑った御手洗を見て放心した。


「ふっ、冗談さ。今は一刻を争う。そんなことを言っている場合ではないからな」

「では、私たちは……?」

「あぁ、出撃許可を出そう。リーダーがいなくてもいけるか?作戦は頭に叩き込んできたか?」

「はい」

「ふっ、なら行っていい」

「分かりました。私達は作戦の通りで?」


司が御手洗に問う。

御手洗はしばらく黙りしていたが、一度頷き承諾すると、それを見た司は目を瞑る。


「それでは失礼しました」


踵を返して御手洗に背中を見せる。

そして、司はそそくさとその場を後にした。


ドアを開け薫と蓮の二人に向かって手招きをし、司は微笑みかける。


「「失礼しました」」


彼女の後に続いて二人も足早にその場から退出した。

後に残った御手洗は、一人不敵な笑みを浮かべながら言った。


「ふっ、あの三人を見ていると、なんだか昔に戻った気分だ」


御手洗は椅子に再度腰をかけると、再び探していたものを取り出すために机の引き出しを漁る。


そして、目的の物を見つけた御手洗は動きを止め、そっと手に一枚の写真を持ち取り出した。


「楽しみだな……。清水潤しみずじゅんリーダーが一体どんな活躍をしてくれるのか…………」


細く笑うその姿は畏怖すら覚えるものだった。

御手洗は外を眺め、雷電雲を遠くにスコールを近くに見据えた。


いつの間にか外の気候は激変していた。


外から吹き荒れる暴風は建物など全てを吹き飛ばしそうな勢いを感じさせ、段々と強く降り注ぐ雨は土地を瓦解させ全てを洗い流し、爆音の如く鳴り響く轟は聴く者全てを恐怖へと落とし入れる。


廊下を歩く三人の間には会話が存在しなかった。

ただただ歩く足音だけが廊下を木霊する。


そんな静けさが嫌いな場を和ますために蓮が口を開いた。


「あの御手洗って人、何考えてるか分かんないよ……な」


コツコツと三人の歩く音が地面を伝って真に通ってくる。

蓮の言葉に反応した薫が蓮を横目で見ながら答える。


「確かにね。あのままずっと見つめてたら、瞳の奥にある闇が見えてきそう」

「分かるわ〜。御手洗指揮官裏とかありそうだよな……」

「あんたは裏表とかそういうの事態が存在しなさそうよね」

「そうか?照れるな……」

「褒めてないわよ」

「え……?」


薫の言葉に蓮が呆ける。

その二人の前を歩く司が会話を中断させようとする。


「二人ともおしゃべりはそこまでにしなさい。潤さんがいたら怒られてるわよ」

「今は潤いないし大丈夫だろ。あいつああ見えてそういうところうるさいから―――」

「あら?」

「そんなこと言って、大丈夫なのかしら?」


首筋に備えられた二本のナイフが偉い怖く瞳に移り込む。

いつの間に抜刀したのか。


暗殺者も感嘆する見事な手解きだった。

流石は第一駆除隊に所属しているだけのことはある。


薫の手は蓮の首筋を見事に捉え、司は蓮の体を地面に押し倒していた。


仰向けの状態で気付いた蓮は二人の鬼の形相のような瞳と表情を見て察する。

殺人鬼が目の前にいる……と。


「以後気をつけます……」


反省の色を二人に見せ、蓮は破棄のない声でそう言いつつ自分の失態に気付いた。


蓮の謝罪の言葉を聞いた二人は少しだけ手を緩め蓮に向かって言う。


「潤先輩を侮辱する事は、例え部隊仲間のあんただとしても許さないわ」

「ええそうね、蓮君。次は命が無いと思いなさい」


この二人の潤に対する異常な愛はどうなってるんだ?

毎度毎度思っていたことを口に出そうとした時——―不意に蓮は気付いた。


「とか言って、お前ら。こんな姿、潤に見られたらまた嫌われ―――」


何かを言いかけた蓮の言葉が途中で突然止まる。


「柳?」


突然のことに試しに薫が話しかけてみるが、


「……」


蓮は硬直したまま動かない。


口を開けて唖然とした態度をとる蓮を不気味に思う薫は隣を見た。

そこには瞳を明らかに狼狽させた司が、口をガタガタ震わせながら一点を見つめていた。


司もまた蓮を押し倒したまま体が動かせないといった状態でいた。


「司まで……?二人とも様子がおかしいわよ。どうかしたの?」


薫が蓮と司を交互に見つめ伺う。

すると、ようやく蓮の体が動き出した。


蓮はゆっくり右手を上げると、薫の後ろを指さした。


「薫、後ろ…………」

「えっ?後ろ―――」


蓮が指さした方向に向かって薫はゆっくりと振り返ると、そこにはニッコリと笑った潤の姿があった。


「やぁ、二人とも元気にしてたかな?ところで薫に司。蓮に一体何をしてたのかな?」


潤は薫と司を交互に見た後で司の下敷きになっていた蓮を見る。


潤は底冷えする声で聞いてくる。

彼の表情は仏のような満面の笑みを浮かべて笑顔で問いてきた。


「潤さんッ⁉こっ、これはですね⁉」

「こいつが失礼なことを言うもんですから……つい―――」


慌てふためく二人を一切のブレもなく笑顔を絶やさず彼女達を見据える潤の目が、二人の心中を震え動かす。


「そっか。それなら仕方ないね」


ややあって紡がれた潤の言葉に暗かった二人の顔から笑顔が復活する。


「あっ、分かってくれました‼」

「流石潤さん‼」


二人が歓喜に浸っていたのもつかの間、すぐさま冷笑が彼女らを襲った。


「うん。よく分かったよ。二人はちょっと蓮に対する扱いが酷いから、僕がちゃんと躾てあげないと……ね……?」

「「ゆっ、許してくださぁい‼」」


二人の悲しい声が重なり、後ずさりをして潤から距離を取った。


「そのくらいにしてやれよ……潤」


恐怖に戦いている二人を見かねた蓮が立ち上がって潤の元へと近付いた。


「潤……」


蓮の言葉に潤は二人に迫るのを辞め、蓮の方に向き直った。

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