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青天6

「もしもし、蓮?」

『あっ、潤!今どこにいるんだよ!』


荒らげた声を出していることから、蓮もさっきの緊急サイレンを聞いていたようだ。


「ごめん、ちょっとのんびりしすぎた!今から電車でそっちに向かうから!」

『ってことは、もうそっちにも情報はいってるのか?』

「うん。移住区に厄災が出現したんでしょ?緊急サイレンで聞いた」

『そうか!俺は今から移住区に行くから潤も早く来いよ!リーダーがいないなんて不安の塊しかないからな!』

「分かってるよ。それで詞と薫は?」

『あ〜……、その二人なら……今も取っ組み合いをしている……ぜ?』


言われて耳を澄まして聞いてみると、明らかに蓮の声とともに混じってくる女性の甲高い声と何故か金属音。


『貴女の容姿‼前見たときからムカついてたのよね‼』

『あんたの性格こそ直しなさいよ‼この腹黒女‼』


金属音が鳴る度に言い合いが激しさを増しているのが目に浮かんだ。

一体何の金属音だ?


『おーい、お前ら‼潤から通信―――どわぁ⁉』


突如訪れる異質な音。

一瞬、潤は通信機を耳から離す。


『潤さんッ⁉今どこですか‼早く帰ってきてください‼寂しいです‼』

『潤先輩‼そこにいるんですかッ⁉早くあなたの生声が聞きたいです‼』


耳から離しても聞こえてくる彼女達の声に潤は頭を抱えた。


「二人とも……。こういう時くらいは仲良くしてね……?僕は仲良く出来ない人は嫌いだよ。後、薫。今声出してるよね?それじゃ、不満?」


電話口から発せられる潤の静かな声色を聞いた二人は電話越しでも分かるような反応をしてした。


『『―――ッ⁉』』


そして、潤は電話越しにも関わらずにっこりと微笑む。

冷徹の笑みを浮かべて―――


「さぁ、二人とも…………仲良く行くんだよ?そして、迅速に事を成してくるんだよ」


低く声を発して命令をする。

一瞬のノイズが入ったと思うと、次には蓮の慌ててる声が聞こえてきた。


『おわぁっと‼おいッ⁉お前らどこ行くんだ⁉潤‼何を言ったか知らないが……今二人が武器を持って風のように飛んで行ったんだが……?』


その声色からは心配そうな気持ちがひしひしと伝わってくる。


「大丈夫。気にしなくていいよ。それより蓮も詞と薫に続いて」

『おっ、おう‼分かった‼』


プツンと通信が切れた音をしてから通信機を仕舞い込み、急いで移住区に向かうことにした。

今から向かったとしても移住区まで約一時間かかってしまう。


「どうしたものか……」


何か策はないかと視界を張り巡らせていると、ある場所を一瞬通りすぎてからもう一度視線を戻す。

そこには誰のものかも分からないバイクが無残に置かれていた。


恐らく誰かが捨てていってしまったものだろう。

駆け足でバイクに近付き、鍵がかかっていることを確認した潤はエンジンがかかるか確かめる。


低音の唸りをあげ、排気口から出た送風で土煙は宙へと舞い散る。


「よしっ!壊れていないな!」


あまりの嬉しさに思わず力拳を握る。

勢い良くまたがってハンドルにかけてあったヘルメットを被る。


(こんなところにバイクがあるなんて……)


微かに感じる違和感に抱かれながらも体は自然と動き出していた。

ハンドルを捻り、勢い良くタイヤが回転する。


バイクは猛スピードで道路を走っていく。


交通規制により時速は制限されてあるはずの道路を多少オーバーしながら走る姿は、さながら暴走族と見間違いられるだろう。


生憎、警察というものは危険が起きない場合であれば、基本的には問題には無関心である。

それに今は非常事態である。


潤はバイクレーサーも驚くようなドライビングテクニックを披露する。

あっという間に前方を走っている車をすらすらと抜き去り道路を駆け抜けていく。


(移住区に厄災が現れるなんて―――)


無意識にハンドルを握る手が強くなる。

吹き荒れる追い風が手助けとして潤の背中を押し寄せていく。


僅かに遠くの空だが、確かに目線の先にあるのは薄黒い雲。


積乱雲の発生に気象予報士は気付けなかったのかと怒鳴り声を上げたくなるが、残念ながらそんなものはもうあてにはならなくなってしまった。


いつどこで起こるか分からない厄災にさすがの日本技術の機械も役に立たなくなる。

まさに神出鬼没の厄災。


ふと思い出す昔の記憶―――。

忘れもしない最悪の出来事が自分の目の前で起こったあの日―――。


何も出来なかった自分をひたすらに攻め続けた毎日に嫌気がさし、生きる事すら諦めていた。


(もう昔のようには……)


その時、遠くの空から雷の鳴る音が木霊して聞こえてくる。


「まさか―――ッ!?」


その音を聞いた潤の表情から血の気はさっぱり引いていて酷く顔色が悪くなるのを感じた。

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