始まりと入学
ゴロゴロと不穏な音がなる曇り空
そんな天気の日に俺はケイルド国アラスーンに有る迷宮探索冒険者育成学園の入学式に出席していた。
この学校は世界各地にある迷宮に送り出す探索者、所謂冒険者と呼ばれる者達を育成する学園で12歳から15歳までの期間で迷宮に関する知識と戦闘技能を教育してもらえる公的機関である。
迷宮から得られる富を目的とした国を潤す者を育てる所であるからに学費共々そこまで高額では無く、平民の中流階層よりちょっと下に生まれる俺でも無理せず行ける所だった。
この国では冒険者はそこそこ人気の職業だ。
国による支援を受けている為様々な優遇措置等もあり、さらに有能な者であれば国に抱えられる事もある。
そんなこともあり、命の危険は有るが冒険者になり一山当てるぞとなりたがる人間は後を経たない
俺もその中の一人………
と言うわけではない……けして……
俺は次男で家業を次ぐ事は出来ないが家を手伝いつつ可愛い嫁さん貰って慎ましい平民ライフが送りたかった。
だがしかし、今年で18歳になる長男が結婚したことにより状況は一転した。
「ちょっとお前あれだな、新婚生活的にアレだから冒険者になってこいよ」
そう家長となる兄に言われ両親も合意。
泣く泣く学園に行くこととなった……
てか兄貴あれて……
まぁ、そんなこんなでこの場に居るわけである。
この恨みは忘れん!!絶対許さん!!
「え~、君達が入学するに当たって素晴らしい天気……では無いですが…え~……」
学園長のぐだぐだになってきた挨拶を聞き流し、これからの学園生活に思いを馳せる。
友達出来ると良いなぁ…いや出来るよな?
出来ないとヤバイよね?いや出来る!!
絶対出来る!!今まで友達居なかったけど…
今までは周りが悪かった!!
ガキ大将のゴリスとか
皮肉屋のネイライとか
キチガイのコーライとか
基本全裸のマッソォとか
普通の人が居なかっただけ!!
学園なら普通にいいやつとか居るでしょ。
後ほら……可愛い女の子とか……ね?
うん、夢膨らんで来たわ!!頑張れる!!
「え~、この辺で挨拶とさせて頂きます」
思春期ならではの妄想をつらつらしていると何時の間にか学園長の挨拶も終わっていた。
「では、皆さん事前に配布しておいた紙に従って教室に向かって下さい」
そう幸薄そうな頭も薄い教師が叫んでいる。
だが生徒達のざわめきにより今にも消え入りそうな声はいまいち聞こえていないようだ。
「おらぁ!!今すぐ教室行けやゴミムシどもっ!!
さっさと行かねぇととんでもない物ぶちかますぞゴラァ!!」
心の底から縮み上がるような怒声が響き渡る。
幸薄教師の隣にいつも間にか立っていた筋骨隆々のスキンヘッドでチンピラの親分みたいな顔した教師が睨み付けていた。
「とっとと行けっ!!だぼがぁ!!」
罵声と共に固まっていた生徒達が動き始める。
勿論俺もその一人だ。
うん、あれはヤバい
逆らったら脳味噌が体外に強制退去させられそうだ、もしくはブロークンハート(物理)
自分の教室を確認しつつ校内地図を見て歩き出す。
1-Bか…クラスメイトに恵まれると良いなぁ……