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■第6話 謝りたい理由



 

 

 

 『ぁ、そうそう!


  あの・・・ 今朝は、ほんと・・・ あんな人前で悪かった・・・。』

 

 

 

ショウタが途端に情けなく背中を丸めガタイのいい体を小さくして、

シオリに謝る。

 

 

 

 『場所考えるべきだったよなー・・・


  ほら、俺ってさー・・・ こう、なんつーの?


  思い立ったらすぐ行動しちゃうってゆーか? 考える前に体が、的な?


  放課後まで待てなかったんだよねぇ・・・ 


  なんせ、今朝の夢だから!今朝っ!』  

 

 

 

バツが悪そうに後頭部をガシガシ掻いてうな垂れている割りには、

そのどこか他人事みたいな口ぶりにシオリは猛烈に腹が立っていた。

言いたい事がありすぎて、なにから言ったらいいのか分からない。

 

 

取り敢えず、一旦冷静に頭の中を整理してみる。

 

 

まず第一に、ショウタも言った通り ”大勢いる前での見境ない言動 ”。


これに関しては本人も反省している様だ。

腹は立つけれど、もう過ぎたことは責めても仕方がない。

 

 

第二に、”夢で見た ”という謎の告白。


これについては今現在まだシオリの耳に謝罪の言葉は聴こえていなかった。

 

 

 

『・・・それだけ?』 早く帰りたいので、話の先を急ぐシオリ。

 

 

すると、『え?』 と下がり眉の根っからの善人顔をしたショウタは、

シオリを無邪気に見つめ返す。

 

 

 

 

  (・・・・・・・・・・・・・・・は???)

 

 

 

 

 『ぇ、あの・・・ 訳の分かんない夢の話、は・・・?


  それについては・・・? なにも、無し・・・??』

 

 

 

『あれは今朝ほんとに見た夢だから!』 

うんうんと自分で納得するように笑って頷く。


さぞかしイイ夢だったのかちょっと思い出してニンマリ。その頬に浮かばせて。

まるでそれについてはなんの問題もないとでも言うような清々しいほどの笑顔。

 

 

 

 『ぁ、あのさ・・・ ヤスムラ、君・・・だっけ?


  もう一回確認だけど・・・


  夢で見たっていうだけ、だよね・・・?


  それって、別に私のことが好きでもなんでもないと思わない?


  夢に出て来た、ってだけの話でしょ?』

 

 

 

『いいや?』 姿勢を正し、そのたくましい胸を張る。

ちょっと半笑いで、まるでシオリの間違いを正すかのようなショウタ。

 

 

 

 

 

 『好きだから! 


  これから少しずつ俺のこと知ってもらえればいいと思ってるから!』

 

 

 

 

 

  (・・・・・・・・・・・・・・・・。)

 

 

 

シオリは呆然とその場に立ち尽くしていた。


まるで全く意思の疎通が出来ない、地球の裏側の少数民族と会話をしている

ような気分だった。

国籍どころか時代も飛び越えて。 否、生物分類学上の種すら違うのでは・・・

 

 

ぐったり疲れて肩を落とし、ふと手首につけた腕時計に目をやるともう

帰らなければ塾に間に合わない時間だった。

 

 

 

 『ぁ、私・・・ 塾があるから帰らなきゃ・・・。』

 

 

 

そう言うシオリへ、ショウタは朗らかに笑う。『俺、チャリだから送るよ!!』

 

 

『全っ然、ダイジョーブ!』 片頬を歪め低く唸るように告げ、カバンを取りに

教室へと廊下を駆け出したシオリ。 その後を追いながら、

 

 

 

 『塾って場所どこ~?』 『何曜日が塾なの~?』 『てか、バス通~?』

 

 

 

ショウタの矢継ぎ早な質問はご機嫌な駆け足音と共に響き、

やむことを知らない。

 

 

 

 

  (もう・・・ なんなのよ・・・。)

 

 

 

 

シオリは腹が立つのを通り越しほとほと困り果てながら、静まり返った放課後の

廊下を同じペースで一緒に駆ける訳の分からない宇宙人みたいなショウタを

横目で見ていた。

 

 

 


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