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■第26話 少し怒ったような顔

 

 

 

翌朝、

教室に入ると相変わらずシオリの机の上には、いつもの青りんごがあった。

 

 

もしかしたら、ケガをしたショウタは学校を休むのではないかと

思っていたシオリ。

出て来ている事に驚き、そして少し安心していた。

 

 

 

 

  (どうしよう・・・ 様子、見に行こうかな・・・。)

 

 

 

 

机の上にカバンを置き青りんごを掴んだまま、ショウタの2-Aへ行こうか

行くまいかモジモジと悩んでいたシオリの耳に、『ホヅミさぁぁあああん!』 と

いつものそれが聴こえた。

 

 

思わず勢いよく顔を上げ、教室の戸口に目を向ける。


すると、左腕をアームリーダーで吊って固定しているが、元気そうにいつもの

朗らかな顔で笑うショウタがそこに佇んでいる。 

 

 

ショウタの元まで小走りで駆けると、シオリは怪我をしていない右腕を掴んで

引っ張りいつもの階段裏まで促した。


せわしなく階段を駆け上がる足音が小さな空間に反響して、踊る。

シオリはホームルームが始まる時間を少し気にして、腕時計に目を一瞬落とし

つつ少し怒ったような顔をして、ショウタを眇める。

 

 

 

 『ちょっと、ダイジョウブなの・・・?


  バカみたいに余所見なんかするから、まったく・・・。』

 

 

 

すると、心配されたことに嬉しそうにデレデレと頬を緩めるショウタ。


『喜んでんじゃないわよ! こっちは怒ってんの!!』 睨んで口を尖らすも、

更にショウタの頬はだらしなく緩む。 

『えへへ』 といつもの情けない笑みをこぼした。

 

 

 

 『あ! あのさ、色々話したいことがあるんだけど・・・。』

 

 

 

ショウタが口を開いた瞬間、廊下に始業のチャイムが鳴り響いた。


一気に廊下が騒がしくなり、教室へ向け駆け込む小走りする足音や

靴箱から猛ダッシュで駆けて来る遅刻ギリギリの切羽詰まったような足音が

聴こえる。


ホームルームがはじまる。 教室に戻らなければならない時間だ。

 

 

『じゃ、放課後にね!』 そう言って、シオリは軽く手を上げパタパタと廊下を

駆けて戻って行った。


今日も美しい長い黒髪が、走るリズムにやさしくたゆたう。

シオリの内履きのゴム底が廊下床にすれて小さく音を立てる。

 

 

 

ショウタは目を丸くして、その背中を見送っていた。

はじめてシオリから言われたその言葉。 ”放課後にね ”

 

 

早く教室に戻らなければならないというのに、耳がジリジリと熱くなって

その場から動けなくなっていた。

 

 

 

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