■第24話 送信ボタンに触れた指
(バカなんじゃないの? ほんと・・・。)
兄ユズルに余計なことをベラベラ話したショウタに、シオリは怒り心頭だった。
(なにをどう考えても、青りんごの件はあり得ないっ!!!)
沸々と湧き起こる怒りと共に、あの情けなくえへへと笑う呑気な顔も浮かぶ。
そしてなにより、病院なんて他にも腐るほどあるし整形外科医なんて
他にもたくさんいるのによりによってピンポイントのそれに、ショウタの責任
ではないと分かってはいても、全てこの件に関してはショウタに対して
怒りが湧く。
(そもそもボケっと余所見してるのが、悪いんじゃない!!!)
そう心の中で悪態つき、ふと、余所見した理由を思った。
(私が・・・ 手ぇ振り返したからか・・・。)
自分があの時手を振り返さなければ、ショウタも大人しく試合に集中して
いただろうし、腕をケガしなかっただろうし、痛い思いなんかしなくて
済んだのだ。
”ただのヒビだけど、アレ結構痛いと思うから ”
兄ユズルの一言を思い出していた。
ベッドに腰掛け、手を伸ばしてサイドボードの上の充電中のケータイを掴む。
暫し背中を丸めてそれをただじっと見つめていた。
指先を少しだけ動かすと、登録一覧が表示される。
一番最初 ”あ行 ”の中の、トップバッターにその名前がある。
”明るく元気なストーカー ”
『ダイジョーブ?って一言ぐらいメールしてあげてもいいか・・・。』
ぽつり、ひとりごちる。
『だって、ほら!いつも、青りんご貰ってるし・・・。』 必死にメールを
する理由を自分で自分に説明しているシオリ。
『私にもまぁ、ほんのちょっとは責任あるし・・・。』
躊躇いながらも両手でケータイを掴み、指先でポチポチと打ち始めた。
”ホヅミです。
ケガ、大丈夫? ”
『あまりに素っ気ないかな・・・。』 打ったメールを消去する。
”ホヅミです。
こんばんは。
腕にヒビが入ったって兄から聞きました。
だいぶ痛むの? 大丈夫?
心配してます。
余所見させてごめんね。 ”
『長い!! ・・・ってゆうか心配しすぎ!!!』 ひとり赤くなり
アタフタして慌てて消去。
”ホヅミです。
腕にヒビが入ったって聞いたけど、大丈夫?
痛いならあんまり無理しない方がいいよ。 ”
『ん~・・・・・・・。』
なんだかしっくりくるメール文章が作れず、ベッドにゴロンと仰向けになった。
ジタバタとベッドでもがき、うつ伏せになってもう一度ケータイを見つめる。
口をぎゅっとつぐみ、その刹那、大きく大きくひとつ溜息をついた。
そして再び仰向けに寝転がり、両手で掴んだケータイをじっと見ていた。
そして、指先をスライドさせて、もう一度メールを打ちはじめた。
”ホヅミです。
ケガの具合は大丈夫?
一応、心配してます。 ”
『 ”一応 ”は入れない方がいいかな・・・。』 ひとりごちた瞬間、
ドアを2回ノックする音が聴こえ、従兄弟のコウが『シオリ~?』と
開けて入って来た。
その音に驚いてベッドから起き上がった瞬間、ケータイを握ったままの指は
≪送信≫ボタンを触ってしまった。
メールが送信されたメロディが ♪チロリン。鳴る。
『あああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
シオリが頭を抱えて、うずくまった。




