■第22話 穏やかな整形外科医
ショウタは体育教師に連れられ、近所の総合病院にやって来ていた。
整形外科の診察室に通され、苦しそうに左腕をかばうショウタが促され
丸イスに掛ける。
発生状況や痛み具合、腫れや変色を確認した後、レントゲンをとる為に
移動した。
大学病院ほど大きい訳ではないけれど、さすがに総合病院というだけあって
どこもかしこも病人だらけで混雑していて、ショウタの治療もやたらと
時間がかかった。
看護師に包帯を巻かれアームリーダーで固定されると、再び整形外科医の前に
座らされる。
レントゲン写真を見ながら左腕の状態の説明をするその担当医は、
とても穏やかでやわらかい雰囲気の医者だった。
パリっと清潔感のある白衣。 ネックストラップに院内連絡用の携帯電話が
ぶら下がっている。
まだ年の頃は20代後半といったところだろうか。
メガネの細縁の上に見え隠れするハの字の頼りない眉が、そのやわらかさを
助長している。
何気なくショウタは白衣の胸のネームに目を向けた。
しかし幅広なネックストラップと胸ポケットに差したペンに遮られ、
名前は見えなかった。
すると、
『そのジャージって、日の出高校・・・ ですよね?』
整形外科医が口許に笑みをたたえながら、ポツリと訊く。
右手にペンを持ち、それを左手の平にトントンと打ち付けながら。
イスがくるり回転して、ショウタと向き合う形になった。
『あ、そうです。』 返事をしたショウタへ、少し目を細めて医者は言った。
『僕の妹も、日の出高なんですよ。』
こんな偶然もあるのかと、ショウタが嬉々として丸イスから少し身を
乗り出した。
『何年生? なんて名前ですか?
俺、2年なんですけど・・・ 知ってっかな??』
すると、そのハの字の困り眉がやわらかく言った。
『2年ですよ、ヤスムラ君と同じ・・・
分かるかな~? ホヅミ。 ホヅミ シオリってゆうんですけど・・・。』
『ええええええええええ?????』 ショウタの叫び声が院内に響き渡った。




