■第2話 噂
『ショウタぁぁあああああ!!!
なんか、すんっげぇ噂になってっけど・・・
お前、どうしちゃったのっ?!』
ショウタのクラス2-Aの、同級生ワタベ ツカサはニヤニヤと緩みまくる頬を
堪えきれないまま、自席に座ってしょんぼり背中を丸めるショウタに、背後から
スリーパーホールドを決め込み、結構な本域の首締め具合で攻め寄った。
ジロリ。ツカサを一瞥したショウタ。
今更ながら、あんな公衆の面前で告白してしまった自分を、今朝にタイムリープ
してボコボコに殴り倒したい。
二の腕の内側に数字でも刻み込まれていないかと、某アニメ映画のワンシーンを
思い出す。
クルミっぽいもの踏んづけて転倒でも出来ればと真剣に考えあぐねる。
しかも、当たり前といえば至極当たり前なのだが、シオリからの告白への返事は
きっぱりさっぱり1秒の迷いも躊躇いも無く、NO。 瞬殺NO。 秒殺NO。
ツカサは興奮冷めやらぬ感じで、頬を高揚させ唾を飛ばしながらまくし立てる。
『お前さー・・・
なーんで、あんなトコ狙っちゃったんだよ~?
ムリに決まってんじゃ~ん! ホヅミだぞ、ホヅミ!!
ウチのオトコ共、誰一人恐れをなして手ぇ出す奴いないってーのに・・・
ましてや、八百屋のお前が・・・。』
『八百屋はカンケーないだろ。』 ショウタは机に突っ伏して口を尖らす。
すると、パコン。ショウタの突っ伏した後頭部に鈍い衝撃が走った。
後頭部を叩かれた気配にのっそり顔を上げ振り返ると、クラスメイトであり
中学からの腐れ縁であるセリザワ マヒロが苦い顔を向けて、ショウタの横で
仁王立ちしている。
胸の前で腕組みをして、その片手は後頭部にクリーンヒットさせた教科書を
丸めて握って。
『ヤスムラさー・・・
アンタ、もうちょっとホヅミさんのこと考えて告んなさいよねー・・・
アンタが玉砕しようが、砕け散ろうが、んなの正直どーでもいーけど
あんっな人前で、しかも変な ”夢オチ ”話なんかされて・・・
ホヅミさん、からかわれんに決まってんじゃんっ!!
・・・ったく、マジ信じらんない・・・。』
悔しいけれどマヒロの言っている事は正しくて、ぐうの音も出なくて、
ショウタは『すんません。』 とデカい体を小さく丸め、か細く呟いた。
『ホヅミさん、怒ってるよなぁ・・・。』
ショウタの呟きは、溜息と一緒に魂まで抜け出そうに力無く足元に落ちた。