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■第17話 ページをめくると、現れたもの



 

 

 

数学の時間だけは、とにかく目立たぬよう大人しくただただ1時間を

無難に過ごさなければならない。 


ショウタは背を丸めて退屈そうに教科書に目を落としていた。

本当のところ、授業の内容も教科書の文字もなにひとつ頭には入って

いないのだけれど。

 

 

ふと、シオリのおでこをうちわで扇いだ先日のことを思い出したショウタ。

 

 

 

 

  (ゼッタイ、可愛いのになぁ~・・・。)

 

 

 

 

無理やり扇いだから流石に怒られおまけに殴られたけれど、なんとかもっと

あの愛らしい困り眉を表に出したいものだと、ひとり考えあぐねる。

取り敢えず形だけ机に広げている真っ新なノートに、シャープペンを握る

手持無沙汰な手が無意味な幾何学模様を書いていた。

 

 

ふと、シオリの几帳面にマーカーや赤字書き込みがしてある教科書に

目を落とした。


しっかり勉強しているのが見て取れる、優等生らしいその教科書。

当たり前だがイタズラ書きなどひとつも無い。

 

 

 

 

  (歴史の教科書にもヒゲとかメガネとか


                描かない派なんだろうなぁ~・・・)

 

 

 

 

そんな流派があるのか定かではないが、その勉強家の美しい教科書を

ぼんやり眺めていた。

 

 

すると、ページ右下隅の余白部分になんとなくイタズラ書きをはじめたショウタ。


アルファベットの ”U ”の様に顔の輪郭を書き、一直線の前髪は ”― ”を書くと

”| ”で長い髪の毛を表す。 目鼻口は ”・ ”と ”< ”と ”へ ”で出来た。

 

 

暇つぶしに描いたシオリの似顔絵が思いのほか似ていてショウタはクククと笑う。


少しずつシオリの表情が変化する様を、右下隅に1ページずつ描いてゆく。

何ページも、何ページも。

 

 

 

そして、満を持してショウタの登場。 


 (*´▽`*)Ф~~~  うちわで風を起こす様を描いた。

 

 

 

繰り返し繰り返し、何ページも何ページも。


数学の授業中ずっと、机に突っ伏してにこにこ微笑みながらパラパラ漫画を

描き続けていた。

そしてそれは、授業終業のチャイムが鳴り響くと同時に完成した。

 

 

 

   パラパラとページをめくると、現れたもの。

 

 

 

几帳面な一直線前髪の仏頂面のシオリが、ショウタにうちわで扇がれて

風に吹かれ、前髪が揺れるとそこには困り眉が現れ、情けない顔をして

シオリが笑うという一連の流れ。


めくるページに合わせたどたどしい動きでカタカタと動く、シオリ。

 

 

 

   シオリが笑う。 笑う。 笑う・・・

 

 

 

ショウタはそれを嬉しそうに目を細め微笑んで見つめた。

 

 

 

 

 

『ホヅミさぁぁあああん!』 次の休憩時間に教科書を返しに行ったショウタ。

ニヤニヤと頬を緩めながらそれを手渡すと、シオリは目を眇めて言う。

 

 

 

 『なに・・・? ニヤニヤしてるけど。』

 

 

 

『ううん!』 大きく首を横にぶんぶん振って、なんでもないフリを装っ

たショウタ。 尚もニヤけながらお礼を言って戻って行くショウタを、

首を傾げながらシオリは見ていた。

 

 

 

 

 

その日の放課後、ショウタの席に慌ててツカサが駆け寄った。


『ちょ! 超特大ニュースだよ!!』 特ダネ入手とばかりに胸を張り、

しかしやたらと厭らしく勿体付ける。

 

 

『なん??』 それほど興味なさげに大きく欠伸をして、背中を反らしながら

ショウタが訊くとツカサは得意気に言った。

 

 

 

 『今日の2-Cの数学の時間・・・


  あの、笑わないホヅミが、


  なんか知らねーけど、ひとりで突然、爆笑したらしいぜっ!!


  ”ホヅミが笑った ”って 今、すげー噂になってるんだよ!!』

 

 

 

 

するとショウタはガバっと机に突っ伏して、真っ赤な顔をしてニヤけた。

 

 

 

  (やべぇ・・・ まーた怒られちゃうかなぁ・・・ まぁ、いっか。)

 

 

 


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