表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/262

第94話:キミノヅカ=セイ=ダークマター

 噴水広場での騒動から数時間後。リリィ達は裏路地に逃げるように隠れ、アスカを中心にそれぞれが階段などに腰掛ける。

 リリィは真剣な表情で、地面に座って俯いたままのアスカに質問した。


「それで……アスカ。一体どうしたというんだ? 何故暗黒卿……いや、ダークマターに切りかかった?」


 リリィは俯いたまま沈黙を守り続けるアスカへ、質問をぶつける。

 アスカはゆっくりと顔を上げると、ぽつり、ぽつりと語り始めた。


「あいつの今の名前は……キミノズカ=セイ=ダークマター。元々あたしやお姉ちゃんと同じ極東の国の出身で、あたしやお姉ちゃんとも、知り合いだったんだ」

「キミノズカ=セイ……? 確かに響きが、アスカの名前に似ているな」


 リリィは腕を組み、アスカに向かって言葉を返す。

 アスカは自身の腕をぎゅっと握りしめると、さらに言葉を続けた。


「でも、あいつは……お姉ちゃんを殺した犯人なんだ。“暗黒卿”なんて呼ばれてるのは、今日初めて知ったけどね」

「!? カレンを、殺した……? 一体、どういうことなんだ? 同郷の仲間、だったのだろう?」


 リリィは少し困惑した様子ながらも、アスカへと質問を続ける。

 アスカは体育座りをして、腕に顔を埋めながら言葉を続けた。


「言った通りだよ。あいつは、自分の魔術の実験のために、お姉ちゃんが騎士をしていた国を丸ごと滅ぼしたんだ。お姉ちゃんも、罪も無い人たちも大勢、撒き沿いにして」

「国ごと……だと!? 馬鹿な。そんなことが人間に可能なのか!?」


 リリィは動転し、アスカへと言葉を発する。

 アスカは暗い表情のまま、返事を返した。


「本当だよ。お姉ちゃんから直接聞いたんだから、間違いない。あいつはそれくらい、強大なチカラを持ってるんだ」

「そんな……馬鹿な。いや、しかし、本人の証言だ。疑いようもないか……」


 リリィは曲げた人差し指を顎に当て、何かを考えるように俯く。

 その間にアニキが口を開いて、アスカへと質問した。


「しかしよ。国を滅ぼすなんざ、普通の神経で出来ることじゃねえぜ。何千、何万の命を奪うことになる。野郎は一体なんだって、そんなことしたんだ?」

「そんなこと……あたしにもわかんないよ。ただあいつは、お姉ちゃんの仇なんだ。それだけは、間違いない」


 アスカは腕に顔を埋めたまま、アニキへと返事を返す。

 アニキはどこか腑に落ちない様子で頭を搔きながら、「そうか。まあそりゃ、切りかかりたくもなるわな」と、小さく息を落とした。

 アスカはそんなアニキの言葉を受けると、ゆっくりと顔を上げ、口を開く。


「とにかく、あたしは―――ん? お姉ちゃん。どうしたの?」


 話をしようとしたアスカの意思と裏腹に、カレンは懐のお札から姿を現し、アスカの肩に手を置いた。


「…………」

「っ!? お姉ちゃん、あいつが国を滅ぼした理由を知ってるの!?」


 アスカは両目を見開き、カレンの方向に顔を向ける。

 カレンはこくりと頷き、さらにアスカへと意思を伝えた。


「え……お姉ちゃんが、話してくれるの? あいつの過去に、一体何があったのか」

「……っ」


 カレンはアスカの言葉にこくこくと頷き、その言葉を肯定する。

 リリィは真剣な表情で、カレンへと言葉を発した。


「……わかった、カレン。話してくれ。これから何をするにせよ、奴の過去は知っていた方がいい」

「……っ」


 カレンはリリィの言葉に反応し、意を決したように表情を引き締めると、こくりと大きく頷く。

 そうして今度は、アスカへとその意志を伝えた。


「ん……そっか。お姉ちゃんの言葉は、あたしがみんなに伝えればいいんだね?」

「……っ」


 カレンはアスカに向かってこくこくと頷き、その言葉を肯定する。

 こうしてカレンは一行に向かって、自身とダークマターの過去を、語り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ