第87話:R02のこころ
ガイムがZ04の最終調整をしている間、「どうせなら動いてるところが見たい!」というアスカきってのお願いにより、その場に留まることになった一同。
今は倉庫の片隅に集まり、R02を加えた全員でカードゲームに興じていた。
「はい! じゃあ次、R02さんの番ね! 一枚引いて!」
リースは満面の笑顔を見せながら、R02へと扇状に開いたカードを突き出す。
R02は頭に取り付けられた回路で何か計算を行うと、迷わずヴぁヴぁのカードを引いた。
「やったぁ! 僕の勝ちだ!」
「ザンネンデス。マケテシマイマシタ」
R02は今にも壊れそうな機械音を鳴らしながら、リースに向かって音声を発する。
リースはカードを片付けると、悪戯に笑った。
「R02さんよわーい。もう八連敗中だよ?」
「フフ。ソレハ“ウッカリ”デスネ」
R02は心なしか楽しそうに、リースへと返事を返す。
リースは「うっかりかー。じゃあしょうがないねえ」と、楽しそうに笑う。
それを見たR02は壊れそうな機械音を鳴らしながら、こくりと頷いた。
「それにしてもR02ちゃんはおりこうさんだねぇ。機構兵士ってのはみんなこうなのかな?」
アスカはR02の頭を撫でながら、頭に疑問符を浮かべて言葉を紡ぐ。
リリィはそんなアスカへと、返事を返した。
「ふむ……私も詳しくはないが、少なくともカードゲームに興じる機構兵士はいないと思うぞ」
リリィは腕を組み、頷きながら返事を返す。
アスカは「そっかー。あたしは一緒に遊べるR02ちゃんが一番いいなぁ」と、相変わらずR02の頭を撫でながら言葉を紡いだ。
R02はアスカに褒められたのがくすぐったいのか、少し慌てた様子で、返事を返す。
「イ、イエ、ワタシナド、タイシタコトハアリマセン。オソレイリマス」
R02は心なしか照れながら、アスカへと返事を返す。
アスカはそんなR02を見ると「あははっ。ういやつじゃ」と、さらにその頭を撫でた。
その様子を見ていたイクサは唐突に、アニキへと質問した。
「マスター。R02様は機構兵士ですが、確かに“心”があると、そう思えます。そんな私の考えは、異常でしょうか?」
イクサはいつのまにかアニキを真っ直ぐに見つめながら、真剣な表情で言葉を発する。
そんなイクサの言葉を受けたアニキは頭の後ろで手を組みながら返事を返した。
「……さぁな。心なんて形のないもんがあるかどうかなんて、俺にゃわかんねーよ。ただ―――」
「ただ?」
イクサは小さく首を傾げ、アニキへと続きの言葉を促す。
アニキは歯を見せて悪戯に笑いながら、イクサへと言葉を続けた。
「形のないもんなんだから、あるかどうか考えるのも、こっちの自由なんじゃねえの? お前があいつに“心がある”って思ったんなら、きっとそうなんだろう。それでいいじゃねえか」
アニキはさらに「って、これじゃ答えになってねえか。まあいいや、わからん!」と、頭をボリボリと搔いてごろんとその場に寝転がる。
イクサはそんなアニキを見つめ、小さく言葉を落とした。
「私の、自由……了解しました」
イクサは真っ直ぐにR02を見つめ、何かを心に決めたように瞳を輝かせる。
R02はそんなイクサの視線に気付くと、首を傾げながら質問した。
「イクササマ、ドウカナサイマシタカ?」
R02は不思議そうに、イクサの瞳を真っ直ぐに見つめる。
イクサはどこか解き放たれたように息を落とすと、やがて無表情のまま、返事を返した。
「いいえ、こちらの話です、R02様。あなたは本当に優秀で素晴らしい、機構兵士ですね」
「???」
R02はイクサの言葉の意味がよく理解できず、頭に疑問符を浮かべて反対側に首を傾げる。
そしてそんな一行の元に、突然ガイムの声が響いた。
「お前、何言ってるんだ? そのポンコツが優秀なわけないだろう」
ガイムの甲高くも冷たい声が、倉庫内に響き渡る。
そんなガイムをイクサは、白い瞳で真っ直ぐに射抜いていた。
【2015/10/22/18:25】最後の数行を変更しました。