第84話:ガイムの最高傑作
「存分に見ろ! そして感嘆の声を上げるがいい! これがボクの最高傑作、Z04だ!」
ガイムは巨大な機構兵士の前で両手を広げ、堂々と胸を張る。
そんなガイムの背後には、漆黒の身体を持った巨大な機構兵士が、膝を折って座った状態で格納庫に鎮座していた。
Z04と呼ばれたその機構兵士はぴくりとも動かず、ただただ格納庫の中央に座る。
一行はその巨大な身体を見ると、ガイムの言う通り感嘆の声を上げた。
「これは……見事だな」
「すっごーい! でっかいねぇ!」
「へっ。なかなか戦いがいがありそうじゃねえか」
リリィとアスカは感嘆の声を上げ、アニキはうずうずした様子で拳を打ち鳴らす。
リースは声も出ない様子で、ぽかんとZ04の身体を見上げていた。
「はっはっは! 君達は幸運だよ、このボクの最高傑作をその目で見ることができたのだから。さあ、存分に感謝するがいい!」
ガイムは両手を広げたまま、一行へと言葉をぶつける。
リリィは不思議そうに首を傾げながら、「な、何故感謝を?」と言葉を落とした。
ガイムはそんなリリィの様子に構わず、さらに言葉を続ける。
「ふふっ、感動のあまり言葉もないか。まあいい。ボクはこれからZ04の最終調整に入る……おい、R02!」
「ハイ。ゴシュジンサマ」
リリィ達の横に立っていたR02は、機械音を鳴らしながらガイムへと近づく。
ガイムはR02のボディに蹴りを入れると、苛立った様子で言葉をぶつけた。
「ハイじゃない! Z04の調整にはリーム社製の魔術回路がいるだろうが! さっさと買ってこい!」
「ハイ、ゴシュジンサマ。リョウカイシマシタ」
R02はぎこちない動作でぴんと背筋を伸ばし、ガイムへと返事を返す。
ガイムは「ふん。グズめ……」と蔑むような目線をR02に向けた後、買い物用のお金をR02へ放り投げた。
「あの、マスター。私もR02様に同行したいのですが、よろしいでしょうか」
「あん? ああ、勝手にすればいいんじゃねえの?」
突然言葉を発したイクサに対し、耳をほじりながら適当に返事を返すアニキ。
リリィはそんなアニキに、噛み付くように言葉をぶつけた。
「馬鹿者! イクサ一人では心配だろう! 貴様も一緒に行ってこい!」
「ああ!? あー……まあ、いいか。ここにいるよりは面白そうだ」
アニキはリリィの言葉に最初威嚇するような表情を返すが、よくよく考えてみれば市場に行った方が楽しそうなことに気付き、最終的にはリリィの言葉を了承する。
その言葉を受けたイクサは、調整のためZ04へとよじ登っているガイムに言葉を紡いだ。
「ガイム様。お聞きになった通りです。私とマスターも、R02様に同行してよろしいでしょうか」
「は? 随分物好きだな……まあいい。好きにしろ」
「ありがとうございます」
イクサはぺこりとガイムに頭を下げ、今度はR02の下へと歩みを進める。
そしてそのまま、言葉を紡いだ。
「そういうわけです、R02様。私とマスターも同行させて頂きますが、よろしいですか?」
イクサはR02の頭部に向かって、首を傾げながら言葉を発する。
R02はぎこちない動作で頷きながら、返事を返した。
「ハイ。リョウカイシマシタ。ヨロシクオネガイシマス」
R02の頷きを見届けたイクサは、「こちらこそ、よろしくお願いします」と頭を下げる。
その様子を見ていたアニキは、苛立った様子で言葉をぶつけた。
「んだぁぁ! まどろっこしいな! 行くならさっさと行こうぜ!」
アニキは両手をズボンのポケットに突っ込み、ずんずんと市場の方角へと歩いていく。
イクサはその様子を見ると、R02へと声をかけた。
「いけない。ああなったマスターは高確率で我々を待ってくれません。急ぎましょう」
「ハイ。リョウカイシマシタ」
イクサは相変わらず感情の灯っていない瞳ながら、R02の背中をぐいぐいと前に押す。
R02はそんなイクサの言葉に律儀に返事を返しながら、壊れそうな機械音を鳴らして、市場へと足を踏み出した。