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第81話:機構都市カラクティア

「ここが、魔術機構都市カラクティアか……」

「すご。おっきい街だねぇ……」


 旅を続けてきたリリィ達の視線の先にはついに、魔術文様の刻まれた様々な機械が動く街、カラクティアが堂々とその姿を晒す。

 近未来的なフォルムをした民家や商店が立ち並び、奥に見える王城もまた魔術文様が壁一面に施され、ある種異様とも思える外観となっている。

 そんな中リースは視界の端で動く物体を見つけ、それを指差した。


「あっ! 見てリリィさん! あの四角い箱、自動で街のゴミを掃除してる! すごいすごい!」


 リースは瞳をキラキラさせながら、リリィに向かって言葉を発する。

 その言葉を受けたリリィは「ああ……見事な魔術機構だ。さすが最先端都市だな」と、感慨深そうに呟いた。

 しかしそんな空気をぶち壊し、アスカは全員へと言葉をぶつけた。


「それよりさ、お腹空いちゃった! なんか美味しいもの食べに行こうよ!」

「……む、そうだな。そういえばまだ昼も食べていなかった」


 リリィはアスカの言葉を受けると、街に置かれた大きな時計の針を見つめる。

 時刻は丁度お昼時。昼食を食べるには丁度良いだろう。


「じゃあじゃあ、せっかくだからあそこのお店に入ってみようよ! 全自動定食だって!」


 リースはキラキラとした瞳をしながら、くいくいとリリィのマントを引っ張る。

 リリィはそんなリースの頭をぽんっと撫でると、微笑みながら返事を返した。


「ふふっ。そうだな。せっかく機構都市に来たんだ。それらしい店に入るとするか」


 リリィからの返事にリースは笑顔で「うんっ!」と元気良く返事を返す。

 その言葉をきっかけに一行は、全自動定食店へと足を踏み入れた。






「うわぁ! すごいすごい! なんかいっぱい動いてるよリリィさん!」

「ふむ……そうだな。これはなかなか壮観だ」


 全自動定食店の中では、魔術文様の施された様々なアームが動き、次々と料理を作っている様子が視界に飛び込んでくる。

 その様子に呆けているリリィ達に、突然声がかけられた。


「イラッシャイマセ。ショクジケンヲ、ゴコウニュウクダサイ」

「し、ショクジケン……? なんのことかわからないが、この箱から声がしているようだな」


 リリィは声が響いてくる身長大の箱に近づくと、曲げた人差し指を顎に当て、考え込む。

 するとリースがくいくいとリリィのマントを引っ張り、ひとつの張り紙を指差した。


「リリィさんリリィさん。“当店を初めてご利用の方へ”って張り紙があるよ」

「む、本当だな。なになに……まずはこの箱で、食事券を購入するのか」


 リリィはお金を箱に投入し、適当な量の料理のボタンを押していく。

 すると食事券が即座に発行され、箱の下部にある取り出し口に排出された。


「ほう、見事な印刷技術だな……。で、次はこの食事券を、受付マシンに渡す……?」

「ウケツケハコチラデス。ショクジケンヲワタシテクダサイ」

「おおっ!? あ、アームが喋った。えっと、これを渡せばいいのか?」


 リリィは恐る恐る食事券をアームの指の間に挟み、手を引っ込める。

 アームは機械音を鳴らしながら食堂の奥に引っ込むと、また別の音声を再生した。


「オショクジノゴヨウイヲシテオリマス。カウンターノヒダリガワデ、オマチクダサイ」

「む、カウンターの左側……こ、ここか?」


 リリィは困惑しながらも、指示された通りカウンターの左側に立つ。

 するとリリィの目の前のカウンター部分が突然横にスライドし、地面から大量の料理がせり上がってきた。


「オマタセシマシタ」

「はやっ!? お待たせしてない! いや、どうやって短時間でこの量の料理を……ううむ。興味深いな」


 リリィは曲げた人差し指を顎に当て、料理を目の前にして考え込む。

 そんなリリィに対し、アニキは乱暴に言葉をぶつけた。


「なんでもいーけどよ、とにかく食おうぜ! 俺ぁもう腹減っちまったよ!」

「さんせー! あたしもお腹空いたー!」

「あ、ああ、すまない。それもそうだな」


 リリィは背後から聞こえてきたアニキとアスカの声に驚きつつも、大量の料理を食事用の円卓へと運ぶ。

 こうして一行の目の前に、大量の料理と飲み物が並んだ。


「マスター。マスター」

「ああん? なんだよイクサ。せっかくこれから食事だってのに……」


 いただきますをしようと両手を合わせていたアニキのズボンを、ぐいぐいと引っ張るイクサ。

 やがてイクサは感情の灯っていない瞳で、アニキへと質問した。


「私は彼らを見ていると、心拍数が安定し、安らぎを感じています。これは一体、何でしょうか?」


 イクサは懸命に働くアームを見回し、アニキに向き直ると首を傾げる。

 アニキはそんなイクサを見ると、面倒くさそうに返事を返した。


「ああ? そりゃおめえ、親近感でも感じてるんじゃねーか? なんとなくこいつらとお前、似てるしよ」

「似てる……親近感……。なるほど。承知しました」


 イクサはその表情を変えることなく、白い瞳でアームたちを見つめる。

 その後アニキの乱暴な「いただきます!」の声を皮切りに食事は開始され、一行はアームたちの作った料理に舌鼓を打つ。

 しかしイクサは食事に手をつけることはなく、ただじっとアームたちを見つめていた。

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