第79話:機構都市カラクティアへ
「……で、これからどうすんだ? 旅は続けるんだろ?」
アニキは頭の後ろで手を組みながら、抱き合っている女性陣へと声をかける。
その声を聞いた女性陣は抱き合っていた腕を解くと、アニキへと返事を返した。
「ふむ。とりあえずは大きな街に行って、リースの母親とロードの情報を探してみよう。この街では得られる情報に限りがあるからな」
「あたしはね~、なんか美味いもの食べたいな! ここのご飯って美味しいのかな!?」
「私はマスターに付いていきます」
「バラバラじゃねーか! 統一させてから話せよお前ら!」
それぞれ別の事を話す女性陣に、ツッコミを入れるアニキ。
リースはそんなアニキへ、まあまあと声をかけながら言葉を紡いだ。
「アニキさん。とりあえずみんなで次の行き先を決めようよ。竜族の追っ手もあって、ここに長居はできないんだし……」
「ちっ。そうだな。めんどくせーからさっさと決めようぜ」
アニキは腕を組みながら舌打ちを鳴らし、言葉を発する。
リリィはみんなの方へ身体を向けると、言葉を紡いだ。
「ふむ、思ったのだが。私の意見である“大きな街”に行けば、美味しいものも食べられるのではないか?」
リリィはアスカへと目配せしながら、言葉を発する。
その言葉を受けたアスカは、驚きに両目を見開いた。
「あ、そっかー! リリィっちナイスアイディア!」
アスカはリリィの言葉に同調し、ぐっと親指を立てて突き出す。
その様子を見たアニキは、腕を組んだまま言葉を発した。
「決まりだな。じゃあ町長のじーさんにでかい街の場所聞いて、さっさと出発しようぜ」
「いやだから、じーさんとか言うなと……まあいい。私が聞こう」
リリィは相変わらず失礼なアニキの言動に頭を抱えながら、言葉を紡ぐ。
そんな一行の会話が一段落ついた頃、控えめに書斎のドアが開かれた。
「皆さん、調子はどうですかな? 何か分かったことはありましたでしょうか」
町長は杖をついた状態で、穏やかな笑顔を浮かべながら一行へと言葉を紡ぐ。
リリィはポリポリと頬を搔き、そんな町長へと返事を返した。
「あー、それなんですが。彼女の言葉の理解はできませんでした。というよりそれより先に、彼女が私達に合わせてくれました」
リリィは部屋に入ってきた町長に対し、言葉を紡ぐ。
その言葉を受けた町長は、不思議そうに首を傾げた。
「??? それは、どういう―――」
「マスター。この方はどなたでしょうか」
「あれっ!? 現代語を喋ってる!? お話できたのですか!?」
町長は目を見開き、普通に話をしているイクサを見つめる。
リリィはどう説明したものかと悩みながら、やがて言葉を発した。
「あー、まあその、そうなんです。どうやら彼女、現代語も話せたようです」
「そうですか……いや、それなら何よりです。意思疎通できないと何かとご不便もありましょうからな」
町長はほっほっほと笑い、リリィへと言葉を返す。
リリィは心中で『数分で現代語を習得したと言っても驚かせるだけだしな……』と呟き、そんな町長へと笑顔を返した。
「ええ、そうなんです。それで少しお伺いしたいのですが、この街の近辺でどこか、大きな都市はありますでしょうか」
街の町長に向かって「大きな街はあるか」と質問するのも多少失礼な気もするが、今はそうも言っていられない。
リリィは少しだけドキドキしながら、町長へと質問した。
「ああ、それでしたら。“機構都市カラクティア”が最も近いですな。丁度地図を持っていますから、よろしければ差し上げましょう」
「あっ、も、申し訳ない。遠慮なく頂戴します」
リリィは町長から手渡された地図を広げ、カラクティアの文字を探す。
町長はゆっくりとした歩調で地図へと近づくと、指先で一点を指し示した。
「カラクティアはこちらですね。この街からは丁度南に位置していますから、南門を出て真っ直ぐに進めば難なく到着できるはずです」
「ん……なるほど。承知しました。重ね重ねありがとうございます」
リリィは町長に感謝し、小さく頭を下げる。
町長はほっほっほと笑いながら、「いえいえ、どうぞお気になさらず」と返事を返した。
「よぉし、じゃあ早速、機構都市へレッツゴー!」
「おー!」
アスカは突然右手を天に突き上げ、言葉を発する。
リースはそれに同調し、同じように右手を突き上げた。
こうして一行は、機構都市カラクティアに向けて進路を取り、旅路を続ける。
そのカラクティアで大きな事件に巻き込まれるとは、知る由もなく―――