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第64話:職員室にて

「それにしても……どういうことだ? 学園内は一通り探したというのに、学園長の影すらも掴めん」


 リリィは奥歯を強く噛み締め、悔しそうに辺りを見回す。

 レンを助けてから二人で学園長を探して学園中を走り回ったリリィ達だったが、学園長どころか、どこかにいるという証言すら得られない。

 倒した教師を締め上げてみても、「知らない」の一点張りでらちが明かなかった。


「僕にも、わかりません……しかしこれだけ細かく探索したのに見つからないということは、学園長はどこかに潜伏している可能性が高いですね」


 レンは曲げた人差し指を顎に当て、何かを考えるようにして俯く。

 リリィはそんなレンの言葉に同意して頷きながら、言葉を紡いだ。


「確かにな。レン、どこか学園長の潜伏できそうな場所に心当たりは無いか? 例えば、噂話程度の情報でも構わないのだが……」

「噂話……ですか。あっ!?」

「何か思い出したのか!?」


 リリィはレンの肩を掴み、その瞳をじっと見つめる。

 レンは見つめられたことに驚き、顔を赤面させながら言葉を返した。


「あっ、あのっ。あくまで噂ですが。職員室には、緊急用の隠し通路があると聞いたことがあります」


 レンは一生懸命リリィから視線を外しながら、たどたどしくも言葉を紡ぐ。

 リリィはそんなレンの言葉を受け取ると、微笑みながら返事を返した。


「ふむ……よし! では職員室に行ってみよう、レン。何もしないよりはずっといい」

「あっ……は、はい! リリィさん!」


 レンはリリィの後ろについて走り、職員室を目指す。

 レンの顔の火照りは、その後職員室につくまでしつこく続いていた。






「さて、職員室についたわけだが……」

「ひどく散らかっていますね」


 職員室に到着したリリィ達だったが、その凄惨な状況に唖然とする。

 机の上の書類は床にまで散乱し、椅子や戸棚は倒れ放題。

 もっとも教師対生徒の戦いの真っ最中だ。校舎内の一部屋である職員室が荒れていたところで不自然ではない。

 ともかく二人は、職員室内を探索してみることにした。

「では私は、部屋の右半分を探索しよう。レンは部屋の左半分を探索。敵の気配を感じたら、すぐ大声で知らせてくれ」

「なるほど。わかりました」


 レンはリリィの提案にこくりと頷き、部屋の左半分を調べるべく歩みを進める。

 リリィもまた同じように歩みを進め。部屋の右半分を調べ始めた。


「ふむ、書類の類に怪しいものはないな。机や椅子も一般的に使われているもののようだ」

「そうですね。それらは探索対象から外しても良いと思います」


 リリィとレンは離れた位置で探索しながら、次第に部屋の中心へと近づいていく。

 そうして探索を開始してから数十分。ついに二人の肩がとん、とぶつかった。


「あっ、すまないレン。大丈夫か?」

「へぁっ!? あ、は、はいっ。大丈夫でつ!」

「???」


 リリィは赤面しながらぶんぶんと両手を振るレンを不思議に思い、頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 レンは首を傾げたリリィを見つめ、ぽつりと言葉を落とした。


「かわいい……」

「えっ?」

「あっいや!? なんでもないです! なんでも!」

「そ、そうか。何かあったら遠慮なく言ってくれ」


 焦った様子でぶんぶんと両手を横に振るレンを少し不思議に思いながらも、リリィは冷静に言葉を返す。

 レンはそんなリリィの様子に息を落として俯くと、立っている床の埃にわずかな亀裂が入っている事に気が付いた。


「!? リリィさん、これ……最近開いたような跡があります! もしかすると隠し階段では!?」


 レンは床に積もった埃がその部分だけ途切れているのを見つけ、リリィへと報告する。

 リリィは膝を折って屈むと、その床の部分を指でなぞった。


「む……確かに、この部分だけ埃が途切れているな。よしレン、少し下がっていてくれ」

「はっはい。わかりました」


 レンはリリィの言葉を受けると、数歩後ずさってリリィを見つめる。

 やがてリリィは剣を抜刀し、床板を切り裂いた。


「!? これは、やはり……隠し階段!?」


 切り裂かれた床板の下に、隠し階段が姿を現す。

 レンはその情景に驚き、声を荒げた。


「そのようだな……お手柄だぞ、レン」


 リリィは手甲を外すと、その手でぽんぽんと優しくレンの頭を撫でる。

 穏やかなリリィの微笑みを見上げたレンは、一瞬、時がたつのを忘れた。


「さて、時間もない。行くとしようか、レン」

「…………」


 レンはリリィの言葉に応えず、ただぼーっとリリィの横顔を見つめる。

 リリィはレンの顔の前でぶんぶんと手を振ると、さらに言葉を続けた。


「えっと……レン? 大丈夫か?」

「へぁっ!? あ、はい! 大丈夫ですじゃ!」

「そ、そうか。では、行くとしよう。気を付けてな」


 リリィは心配そうにレンを見つめながらも、地下に続くその階段を降りていく。

 レンは火照った顔を自身の両手で二、三度叩いて覚醒させると、真面目な表情で、リリィの後ろを歩いていった。



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