表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/262

第62話:アニキの防衛線

「うおっしゃああああああああ! ぶっ飛ばすぞコラアアアアアア!」


 アニキは足に炎を纏い、教師や操られたモンスターを吹き飛ばしていく。

 そんなアニキが活躍する度、生徒たちから声援が上がった。


「うおー! アニキさんさすがっすー!」

「かっけええええええ!」

「おう! てめえらも無理せず俺にまかしとけや!」


 アニキは男子生徒たちの声援を受け、嬉しそうに歯を見せて笑う。

 その笑顔を見た男子生徒達は、より一層大きな声で声援を送った。

 しかしそんな一行の立っている地面を揺らしながら近づいてくる、巨大な影がひとつ。

 その体躯は体育館ほどもあり、鉄製の体は日の光を反射して鈍く輝く。

 アニキはその姿を見ると、満足そうにニヤリと笑った。


「アイアンゴーレムか……おもしれえじゃねーの」


 アニキはパシッと拳を手のひらに打ちつけ、アイアンゴーレムを見上げる。

 男子生徒達は口々に、アニキへと言葉をぶつけた。


「あ、ありゃやべえっすよアニキさん!」

「アニキさん逃げてー!」

「さすがにあいつを一人では無理っすー!」


 男子生徒達は前衛に一人で立つアニキを心配し、口々に後ろに下がるよう声を荒げる。

 アニキはそんな男子生徒達からの言葉を受けると、悪戯な笑顔を浮かべながら返事を返した。


「へっ、バーカ! この俺がゴーレムごときでビビるかよ! まあ見とけてめえら!」


 アニキはぐっとガッツポーズを決め、背後の男子生徒達へと言葉を発する。

 男子生徒達は自信満々なアニキの言葉に、思わず声を失った。

 しかしそんな彼らの様子などお構いなしに、ゴーレムはその巨大な右拳を振り上げ、アニキに向かって振り下ろした。


「!? アニキさん! あぶなーい!」

「…………」


 男子生徒の一人がアニキに警鐘を鳴らすが、アニキはその場を微動だにせず、モロにゴーレムの一撃を頭部に受ける。

 ゴーレムの拳の衝撃によって土煙が宙を舞い、アニキの姿を完全に覆い隠した。


「!? あ、アニキさん! アニキさああああああああん!」

「アニキさあああああああん!」


 男子生徒達は口々に、アニキの呼び名を叫ぶ。

 やがて土煙が晴れた頃……ゴーレムは驚きの声を上げた。


「グオッ!?」


 ゴーレムの拳の下。潰れているはずのその脆弱な生物は、潰れるどころか背中をぴんと伸ばし、頭に巨大な拳を受けながら、悠然と立っている。

 ゴーレムはそれを押しつぶそうと右拳に全体重と力を込めるが、その生物は腰を折ることもせず、ぴくりとも動かなかった。


「へっ……ぬるいぜ、ゴーレム野郎。話になんねえな」


 アニキは殴られた状態のまま瞳をゴーレムへと向け、ニヤリと笑ってみせる。

 その異様な眼力を受けたゴーレムは、うめき声を上げて数歩後ずさった。


「……下がったな? だったら、てめえの負けだコラアアアアアアアア!」


 アニキは一度強く片足を地面に叩きつけ、そこから炎を立ち上らせる。

 立ち上った炎はやがてアニキの右拳に宿り、逆巻く炎が右腕に巻き付いた。


「てめえに炎撃はもったいねえが……特別サービスだ。地の果てまで吹っ飛ばしてやるぜ!」

「グッ!? グオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ゴーレムは恐怖のあまり半狂乱状態となり、アニキを掴もうと両手を伸ばす。

 しかしその両手は空を切り、肝心のアニキは、ゴーレムの体の下に潜りこんでいた。


「これで……終わりだあああああああああああああああああ!」


 アニキは左足を前に踏み出し、右拳をゴーレムの胴体へと打ち込む。

 その瞬間ゴーレムの体は学園都市外まで吹き飛び、やがて空中で爆発した。


「ちっ……雑魚相手にしてもしょうがねえってのに……ここには雑魚しかいねえのか?」


 アニキは殴った右拳をブラブラさせながら、つまらなそうに言葉を漏らす。

 その言葉を聞いた男子生徒達は、一気に声を上げた。


「うおおおおおおおおおお! アニキさん、さすがっす!」

「アーニーキ! アーニーキ!」

「さっすが俺らのアニキさんだぜぇ!」


 男子生徒達は口々にアニキを賛美し、声を荒げる。

 アニキはそんな男子生徒達の言葉を受けると、歯を見せて大きく笑った。


「あっはっはっは! おおよ、俺に全部任せとけ!」


 アニキは右拳の炎を収束させ、ポケットに両手を突っ込んで次の襲撃を待つ。

 しかしそんなアニキに向かって、甲高い声が響いた。


「アニキさん! 大変! 大変だよぉ!」


 リースは慌てた様子でアニキへと駆け寄り、声を荒げる。

 アニキは落ち着いた様子で振り向くと、リースに向かって言葉を紡いだ。


「あん? どうしたリース。そんな血相変えてよ」

「レンが……レンがいないんだ! 体育館にも、どこにも!」


 リースはばたばたと両手を振りながら、慌てた様子で言葉をぶつける。

 アニキは両目を見開き、そんなリースへと返事を返した。


「はぁ!? レンが!? 体育館にいないってことは、おめえ……」


 アニキは嫌な予感を感じ、遠目に見える校舎へと視線を向ける。

 レンは、攫われているルルと同室に住んでいて、本人曰く、友人だったということだ。

 もしかしたらレンは、友人であるルルを助けるため、単身で学園長の下へ行ったのかもしれない。


「……マジか」


 アニキは片手を眼の上に当て、そのまま天を仰ぐ。

 リースは心配そうに、そんなアニキを見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ