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第43話:ロードの行方は

「ふん、あんな騎士風情、わらわの衝撃波で吹き飛ばしてくれようぞ」

「あ、タマちゃん。その騎士にそれやっちゃうと―――」

「黙っておれアスカ! 今片付ける!」


 注意しようとするアスカを無視した玉藻は左手に光を集めると、そのままその光を騎士へ向かって放つ。

 光はふよふよと空中を進んだかと思えば、騎士の目の前で破裂し、衝撃波が騎士を襲った。


「……!」

「ふん、たわいもな……ひゃあああああああ!?」


 扇を開き、勝利のポーズをきめようとした玉藻に、当然のように衝撃波が襲い掛かる。

 玉藻は一瞬吹き飛ばされそうになるが、空中でかろうじて浮遊し、その勢いを寸断した。

 かろうじて空中を浮遊する玉藻に対し、アスカは人差し指を立てて声をかけた。


「あの騎士にそれやっちゃうと吹き飛ばされるから、気をつけてね♪」

「言うのが遅いわ! 着物の裾が乱れたであろう!」


 玉藻は乱れてしまった着物を整えながら、噛み付くようにアスカへと言葉をぶつける。

 アスカは「だって聞かなかったじゃんさー」と、つまらなそうに返事を返した。

 放置された騎士は、まるで玉藻とアスカの間に割って入るように口を開き、その剣を振り下ろした。


「オオオオオオオオオ!」

「……!」

「おわっ!? びっくりしたぁ! ありがとうお姉ちゃん!」


 唐突に響いた騎士の咆哮と、振り下ろされた刃を剣で受け止めるカレン。

 騎士はそのまま振り下ろそうと剣に力を込めるが、カレンの刃は動かない。

 アスカがそんなカレンにお礼の言葉を述べると、カレンは視線でアスカへと返事を返した。


「そっか……ごめんごめん。やっつけなきゃダメだよね」


 アスカは気を取り直したようにキリッとその表情を変え、カレンへと言葉を紡ぐ。

 その表情を見たカレンはこくりと頷き、再び騎士と打ち合いを始めた。


「と、いうわけでタマちゃーん! なんとかしてー! あの騎士衝撃を全部跳ね返してくるんだよぉ!」


 アスカは両手をメガホンのように使い、空中に浮遊する玉藻へと言葉を投げる。

 玉藻はその言葉を受け取ると、驚愕に目を丸くした。


「結局わらわ頼みなのか!? ……ええい、仕方ない! カレン、下がっておれ!」

「……!」


 玉藻と同じく浮遊した状態で騎士と刃を交えていたカレンだったが、一度大きく騎士の刃を弾き、アスカの下へと戻る。

 カレンが騎士から離れたのを見届けると、玉藻は右手を前に突き出し、騎士へと掲げた。


「衝撃を跳ね返すというのなら……仕方ない。その四肢、跳ねさせてもらう」

「グォ……!?」


 玉藻の右手からは無数の金の糸が伸び、騎士の体へと絡みつく。

 糸を使って騎士を空中へと浮遊させると、そのまま玉藻は叫んだ。


「散華!」

「!?」


 玉藻の右手から伸びた金色の糸は騎士の両手両足を引きちぎり、その中から噴出した闇を吸い込んでいく。

 騎士は「オオオオ……」と唸り声を上げながら闇を空中で霧散させ、やがて完全にその姿を消した。

 アスカはその様子を見ると両手をぐっと握りこみ、玉藻に向かって言葉をぶつける。


「うおおおお!? すっげえタマちゃん! さっすがー!」

「……!」


 カレンも同じようにこくこくと頷き、アスカに同意した。


「ふん。ま、わらわにかかればこんなものじゃ」


 玉藻はそんなアスカ達の様子に満足したのか、えっへんとその豊満な胸を張ってみせる。

 元々着物がはだけていただけあって、胸そのものがこぼれてしまいそうだ。


「ひゅー♪ さっすがタマちゃん! よっ、タマちゃん様!」

「いや、だからその名はやめいと言っておろうが!」


 アスカ達がそんな問答をしている間に、広間にあったバリアは解けた。

そしてその後、別室に行っていたリリィ達が戻ってくる。


「おーいアスカ! バリアの解除法がわかったぞ! 宝箱の蓋を閉めれば……誰だ!?」


 リリィは空中で浮遊している玉藻を見ると、驚愕に目を丸くしながら言葉をぶつける。

 動揺した様子のリリィに向かってアスカは、手のひらで玉藻を指しながら言葉を紡いだ。


「あ、紹介するねリリィっち。こちら、式神のタマちゃん」

「違う! 玉藻じゃ!」

「ち、ちょっと待ってくれ。何がなんだかわからん……」


 バリアは何故か無くなっているし、代わりに金髪ボインの美女が空中に浮いているし、尻尾が生えてるし……リリィの頭は混乱の極みだった。

 その後状況を理解するために、実に数十分以上の時間を要したのは言うまでもない。






「いやぁー可愛いわっぱじゃのう♪ よしよし♪」

「わぷ……えっと、じゃあこのたまもさん? があの騎士を倒して、アスカさんは無事ロードを手に入れたと、そういうこと?」


 何故か玉藻に気に入られたリースは玉藻に抱きしめられながら、アスカへと言葉を紡ぐ。

 玉藻の胸に顔を埋められる形となっているリースは、少し話しずらそうだ。


「そーだよん♪ やーそれにしても、ロードって本当に器の形してんだねぇ♪」


 銀色に輝く器を抱きしめ、ほくほく顔でアスカはリースへと返事を返す。

 リースは「なるほどー」と返事を返しながら、玉藻に引き続き頭を撫でられていた。


「良いのう、この金色のわっぱは。なんとかお持ち帰りできないかのう?」


 玉藻は嬉しそうな笑顔でリースを抱きしめながら、とんでもない事を言い出した。

 アスカは玉藻に、注意する形で返事を返す。


「ダメだよータマちゃん。リースちゃんはあたしのなんだから」

「いや、どっちのものでもないだろう」


 リリィは冷静に腕を組みながら、玉藻とアスカにツッコミを入れる。

 そうしてしばらくリースを撫でている玉藻だったが、アスカが抱きしめているのがロードだと気付くと、真剣な表情で言葉を続けた。


「それにしても……アスカよ。それを手に入れたということはおぬし、あの術を使う気じゃな?」

「……ん。そーだよ。お姉ちゃんを生き返らせるには、それしかないからね」


 真剣な玉藻の表情に、同じく真剣な表情で言葉を返すアスカ。

 アスカの表情には普段のおちゃらけた雰囲気は微塵も感じられず、真剣そのものだ。

そんなアスカを、玉藻は無言のまま見返した。


「……ま、いいじゃろう。わらわはそろそろ、帰るとしようかのう」

「ちょっと待ってタマちゃん。リースちゃんは置いてって」


 浮遊しながらリースを抱えて持ち帰ろうとする玉藻の着物の裾を、がっしりと掴むアスカ。

 玉藻は舌打ちをしながら、アスカへと返事を返した。


「ちっ、ばれたか」

「そりゃバレるよ。バレバレだよ」


 ちゃっかりリースをお持ち帰りしようとする玉藻に、ツッコミを入れるアスカ。

 玉藻はべーっと舌を出すと、やがて光の中へと消えていく。

 アニキは玉藻が消えたことを確認すると、一度息をついて言葉を紡いだ。


「まあとにかくだ。ロードは手に入れたってことでいいのかよ?」


 これまで両腕を組んで沈黙を守っていたアニキが、不意に口を開く。

 アスカはこくりと大きく頷くと、天井に向かってロードを掲げた。


「おうよ! ロード、ゲットしたどおおおおおおおお!」

「やかましいっ! 雄たけびを上げるな響くんだから!」


 こうしてザラサ坑道奥地にある古代遺跡の大広間に、アスカの大声が響く。

 リリィは耳を塞ぎながら、そんなアスカにツッコミを入れるのだった。


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