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第42話:アスカVSロードナイト

「ロードヲネラウモノ、タオス……」

「あ、あははは。やっべえ……」


 古代遺跡の大広間の中心で、ロードの守護者らしき騎士と対峙するアスカ。

 騎士の兜からは闇が漏れ出し、全身には黒いオーラが溢れ、神の器を守護するものとして充分すぎる実力を備えていることが推測できた。

 アスカは苦々しい表情でそんな騎士を見つめ、言葉を発する。


「できれば逃げ回りたいけどここ狭いし、無理かぁ。こりゃマジで、戦うしかないかもね」

「…………」


 騎士は剣を抜いた状態で、ジリジリとアスカとの距離を縮める。

 腰元の刀に手をかけ、アスカは騎士の動き全てに注視した。


「ハアアアアアアアアア!」

「くるっ!?」


 アスカに向かって大剣を振り下ろす騎士と、それを間一髪で回避するアスカ。

 騎士はどうやら重戦士系のようで、スピードに関してはアスカの方に分があるようだ。


「とはいえ、一撃貰ったらおしまい……か。スリルあるねえ、こりゃ」


 アスカはニヤリと笑いながらも、その額には大粒の汗が流れる。

 騎士は振り下ろした剣を持ち上げているため、その体には大きな隙ができていた。


「攻めるなら今しかない……か。行くよ!」


 ダッシュを使って一瞬にして騎士との距離を縮め、アスカは刀を横薙ぎに抜く。

 しかしアスカの攻撃が騎士の鎧に触れた瞬間、勢い良く刀が弾かれた。


「なっ!?」

「…………」


 騎士は動揺する様子も無く、じっとアスカの様子を伺っている。

 その姿には、ある種の余裕すら感じられた。


「今の弾かれた感じ……何? 今まで感じたことない感触だったけど……」


 不思議そうに自らの刀を見つめ、アスカはぽつりと言葉をこぼす。

 そんな少しぼーっとした様子のアスカに、カレンは警鐘を鳴らした。


「……! ……!」

「え? 何おねえちゃ……あっぶねえ!?」

「ウオオオオオオオオオオオ!」


 騎士は咆哮と共にアスカと同じく横薙ぎの攻撃を繰り出す。

 アスカは寸前のところでブリッジをし、その顎先数センチのところを騎士の剣が通り過ぎた。


「……!」

「あ、あははは、ごめんごめん。ちょっと油断しちった」


 カレンは無言ながらもぷりぷりと怒り、アスカへと何か言っているようで、それを受けたアスカは申し訳なそうな顔をして謝罪した、

 アスカはブリッジの状態から体勢を立て直し、やがて言葉を続ける。


「と、冗談はそのくらいにして……まさかとは思うけど、ちょっと試してみないとダメかな……」

「???」


 アスカの意味深な言葉に対し、頭に疑問符を浮かべるカレン。

 そんなカレンに構わず、アスカは横薙ぎ後で隙が出来ている騎士へと一瞬で詰め寄った。


「せああああああああああああ! ぐっ……!?」

「…………」


 アスカは立て切りや横薙ぎなど、刀での連続攻撃を行うが、その度に攻撃の全てが弾かれ、アスカの体は途中で弾かれるようにして吹き飛ばされる。

 そうして繰り返し攻撃を跳ね返されたアスカは、ある一つの結論に達した。


「やっぱり……間違いない。あの騎士の鎧全部、カウンターストーンで出来てる!」

「!?」


 アスカの言葉に驚き、両目を見開くカレン。

 それも当然だろう。カウンターストーンで出来た体を持つということは即ち、全ての物理攻撃は無効化されるからだ。

 そしてそれは今現在のアスカに、打つ手がないということになる。


「いやあ……さっすが神の器の守護者様。一筋縄じゃいかね……あっぶないなもう!? 喋らせてよ!」

「…………」


 騎士は話している最中のアスカにも構わず、その剣で再び横薙ぎの攻撃を仕掛けてくる。

 屈みを使ってその攻撃を回避すると、アスカはすかさず騎士との距離を取った。


「ああもう、どうしようどうしよう……何か無いか何か無いか……」


 困ったアスカはトントンと自身の頭を指先で叩き、良いアイディアはないか考えるが、その間にも騎士は、ジリジリとアスカとの距離を縮めてきていた。

 距離を取ったとはいえ広間はそれほど広大ではなく、騎士の剣の攻撃圏内に入ってしまうのも時間の問題だろう。

 騎士はすり足を使ってゆっくりとアスカへと近づき、そして咆哮した。


「オオオオオオオオオオオオ!」

「!? ああもう! ちょっとタンマ……とか聞いてくれるわけないか!」


 再び振り下ろされた騎士の剣に反応し、アスカは紙一重で回避する。

 攻撃の手段が無いのでは、決着がつかない。いや、スタミナに限りがある以上、いつかはアスカが負けてしまうだろう。


「さすがはロードの守護者様……ってわけか。でもこっちも、そう簡単に諦めらんないからね!」


 バックステップを駆使し、再び騎士との間に距離を取ったアスカは再び、思考を回転させ始めた。


「どうしよう……物理攻撃が効かないなら、当然陽術しかない。あたしの使える術の中だと……あっ!?」


 アスカは拳をぽんっと手のひらに当て、頭の上に豆電球を点灯させる。

 そして懐から金色のお札を一枚取り出し、カレンへと声をかけた。


「お姉ちゃんごめん! 時間稼ぎお願い!」

「……!」


 カレンはアスカの言葉にこくりと頷き、近づいてきた騎士と刃を交える。

 騎士の雄たけびが広間に木霊する中、アスカは呪文詠唱を始めた。


『もう、ちょっと……お姉ちゃん、頑張って!』

「……!」


 アスカが呪文を詠唱する間、カレンは懸命に騎士の刃を受け止める。

 騎士の攻撃は猛攻とも言うべき激しいものだったが、カレンは器用に力を流し、その刃を受け流す。

 どうやらカレンも生前は、かなりの実力を持った騎士だったようである。

 そうしてカレンと騎士の攻防が続く中、甲高いアスカの声が響いた。


「できたあー! 行くよ、お姉ちゃん! 式神召還、“妖姫・玉藻”!」


 アスカが最後の呪文詠唱を終えると、その手にあったお札から溢れた金色の光が辺りを包む。

 騎士はそんな輝きに視界を遮られ、苦しそうに呻きながら数歩後ずさった。


「わらわを呼んだかえ? アスカよ……」


 アスカの背後に突然、豪華な着物に身を包んだ豊満な体の女性が現れる。

 その女性はふんわりと抱きしめるようにアスカを包み、妖しく微笑んだ。

 着ている着物は肩のところまではだけ、その大きな胸がこぼれそうになっており、髪色は眩いほどの金色で、瞳も同じく金色に輝き、中心にある黒い瞳孔を際立たせている。

 唯一人間の女性と違う部分があると言えば、その女性には狐の耳と、九本の尻尾が生えていることくらいだろうか。

 そんな女性を見て笑顔になったアスカは、女性に向かって弾むように声を返した。


「やった! 成功したぁ! タマちゃん超久しぶりー!」

「た、タマちゃん!? 何を言うかアスカ! その呼び方はやめいと言うておろうが!」


 タマちゃんと呼ばれた女性は顔を赤くしながら、アスカへと声を荒げる。

 アスカは口を3の形にしながら、そんな女性へと返事を返した。


「ええー? だってタマちゃんはタマちゃんじゃん。じゃあ“しっぽちん”と“タマちゃん”どっちがいい?」

「何じゃその究極の二択は!? 先のはもう悪意しかないであろう! 玉藻と呼べ、玉藻と!」


 玉藻はガーンという効果音と共に、アスカへとツッコミを入れる。

 登場した瞬間の妖しさは、すでにどこにも見当たらなかった。


「じゃ、タマちゃんでオッケーってことで。やータマちゃん相変わらずもふもふだねえ」


 アスカは玉藻の尻尾を触りながら、ニコニコと笑って言葉を紡いだ。


「あんっ!? こ、こら! 尻尾に勝手に触るなと昔から言っておるだろう!」


 玉藻はさも当然かのように尻尾をもふもふするアスカに対し、怒号を飛ばす。

 アスカはちえーと再び口を3の形にしながら、頭の後ろで手を組んだ。


「あ、でさータマちゃん。ちょっとやっつけてほしいのがいるんだよねー」

「ぬう、唐突に本題に入りおって……わかっておるわ。先ほどから殺気を放ちながら近づいてくる、あの騎士であろう?」


 玉藻は口元を広げた扇で口元を隠しながら、騎士を横目で見つめる。

 騎士はゆっくりとした足取りで、しかし確実にアスカとの距離を詰めている。カレンはそんな騎士に対して引き続き注意しながら、剣を構えていた。


「そーなの! さっすがタマちゃん。話が早い!」

「ふん。伊達にぬしの数百倍生きておらぬわ」


玉藻はアスカと騎士の間にふわりと降り立つと、左手を騎士へと掲げた。


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