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第250話:マルチプル・レヴォリューション

「舐めるなよ、ニンゲン風情がああああああ!」


 取り乱したアターシャは両手に持った剣をクロスさせながら、接近してきたイクサに剣撃を加える。

 不意打ちを受けた形となったイクサだったが、背中に浮遊した剣翼がイクサの身体の前に回りこむとアターシャの剣撃をガードし、致命傷には至らなかった。

 そうしてアターシャの剣撃を受け止めたイクサは、アターシャを睨みつけながら返事を返す。


「アターシャ様こそ、人間を舐めないで下さい。彼らは弱いが、同時にとても強い」


 イクサは真っ直ぐにアターシャを見つめ、確かめるように言葉を紡ぐ。

 そんなイクサの言葉を受けたアターシャは完全に頭に血が上り、歯を食いしばりながらその両腕に力を込めた。


「だから、その……その言い草が、舐めてるってんでしょおがああああああ!」


 アターシャは再び二本の剣をクロスさせて振りかぶり、正面からイクサに向かって切りかかる。

 しかしイクサは表情を欠片も変えないままその攻撃を回避し、アターシャの背後に回りこんだ。


「その攻撃は一度見ています。よって、私には通じません」

「っ!?」


 背後に回ったイクサが右手を上に上げると、それに連動して背中の剣翼のうちの一本が上空へと上がっていく。

 そしてそのままイクサが右手を振り下ろすと、一本の浮遊剣がアターシャに向かって振り下ろされた。


「おおおおおっ!?」

「…………」


 アターシャは上空からの攻撃に対応して剣を使って防御するが、イクサの剣圧を感じてうめき声を響かせる。

 そんなアターシャを見たイクサは、小さく息を落としながら右手を振り下ろしたまま、その姿をじっと見つめていた。


「ふふっ。なぁーんちゃって♪」


 やがてアターシャはイクサの剣圧などものともせず、自身に襲い掛かっていた浮遊剣を簡単に弾き返す。

 弾け飛んでいく剣を見たアターシャは勝利を確信し、高笑いを響かせた。


「あはははは! バァーカ! 力はアタシのが上だって言ったろ!?」


 アターシャは両目を見開きながら両手を左右に開き、イクサを見下して言葉をぶつける。

 そんなアターシャを見たイクサは小さく息を落とすと、再び右手を空に掲げた。


「まだです、アターシャ様。私の攻撃は終了していません」

「はぁ……? っ!?」


 イクサを嘲笑しようとしたアターシャに襲い掛かる、一本の浮遊剣。

 しかしアターシャは片手でそれを受け止めると、ニヤリと笑って見せた。


「だぁから。それはもう効かねーって! バッカじゃないの!?」

「はい。効かないのは承知しています」

「えっ」


 予想外の発言を受けたアターシャはポカンと口を開き、イクサの方を見つめる。

 するとイクサは両手を空に掲げ、そのままアターシャに向かって振り下ろした。


「一本では足りない。ならば八本ならどうですか?」

「あぐっ……!?」


 一本目の剣を片手で受け止めていたアターシャに、次々と浮遊剣が襲い掛かる。

 やがてアターシャは二本の剣をクロスさせて防御するが、それでも間に合わない。

やがてアターシャの剣はひび割れを始め、その気配を察知したアターシャは、自身の剣が折れるのと同時に横っ飛びをしてイクサの剣を回避した。


『ひっ……ひひっ! やった、避けた!』


 アターシャは醜い笑顔を浮かべ、無意味に地面へと突き刺さっていく浮遊剣を見つめる。

 しかし次の瞬間、横っ飛びしたアターシャの目の前にイクサの姿が現れた。


「言ったはずです。まだ私の攻撃は終了していない、と」

「っ!?」


 アターシャは目の前に突然現れたイクサに反射的に拳を打ち出すが、イクサは驚異的なスピードで若干後ろに身体を移動させ、その拳を回避する。

 そしてそのまま、お返しとばかりにアターシャの顎を蹴りで跳ね上げた。


「はぐっ……!?」


 顎を蹴り上げられたアターシャはそのまま、空中へと打ち上げられる。

 そしてそんなアターシャを、浮遊剣が取り囲んだ。


「確かにあなたのスピードは素晴らしい。ですが……避けられなければ、意味がない」

「っ!? この……この、くだらないニンゲン風情があああああああああ!」


 アターシャは最後の雄たけびを響かせ、中庭の木々を震わせるが……次の瞬間八本の浮遊剣がその身体に突き刺さり、鮮血と共にその命を落とす。

 そんなアターシャの姿を見たイクサは、悲しそうに目を伏せ、言葉を紡いだ。


「……やはり、名前を聞いておいて正解でしたね」


 そうしてアターシャに背を向けるイクサの背後で、地面に落下するアターシャ。

 そのままイクサはアスカの援軍へ向かおうとするが、すぐに自身の身体の異変に気付いた。


『!? からだ、が、うごかない。まさか、能力を使った反動……?』


 イクサの思考が事の原因までたどり着いた頃には、もう遅く。

 身体に装着された足防具と浮遊していた剣はいつのまにか塵に帰り、やがてイクサ自身も、ゆっくりと意識を手放していった。

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