第249話:死の淵に立って、ワタシハ
『死ぬ? 私が……シヌ?』
イクサはその白い瞳でアターシャを見つめ、両目を見開く。
その瞬間アターシャの足は地面に接触し、ステップインしたアターシャは一気にイクサとの距離を詰めてきた。
「……っ!」
どうする? どうすればいい。逃げるか? それはできない。ならば受けるか? それもできない。ならば返すか。どうやって? その手段がない。
イクサの頭の中を様々な言葉が飛び交い、やがてイクサの頭の中は真っ白になる。
その刹那―――イクサの瞳の奥に、勇ましく笑うアニキの横顔が映し出された。
「そう、だ。マスターはいつも、自分の可能性を疑わなかった」
その瞬間からもうイクサは、考えるのをやめた。
考えるのは逃げだ。動かなければ何も変わらない。変わるべきは相手でも、ましてこの世界でもない。
変わるべきは自分。自分の限界を超えられるのは、自分だけなんだ。
その思想に至った瞬間、イクサの中の何らかのスイッチが入り、思考が停止する。
イクサは両目を見開くとそのまま空に向かって右手を掲げ、その掲げられた右手はやがて、黄緑色の光をイクサに向かって呼び込んできた。
「なっ!? まぶし……っ!」
その光に目をくらまされたアターシャはステップインを中止してバックステップを繰り返し、黄緑色の光に目を細める。
やがてイクサは黄緑色の光に包まれながらその目を閉じ、やがてその場に、電子的な音声が響いてきた。
CheckingMainSystem. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .. . OK_
RevolutionDriverLoading. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .. . . OK_
RevolutionSystem. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .Unlock_
Type. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .Sword HighSpeed_
AreYouReady? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
MULTIPLE REVOLUTION _
「はあああああああああああああ!」
イクサは黄緑色の光に包まれながら雄たけびを上げ、やがてその身体の背中には、浮遊する白銀の剣で出来た羽が精製される。
白銀の剣翼はやがて日の光に照らされ、変わらず装着されている足防具は、イクサの身体を浮遊させ続けていた。
「なに、を……お前一体、何をした!?」
アターシャは動揺した様子で腕を横に振りながら、イクサに向かって声を荒げる。
そんなアターシャの言葉を受けたイクサは、淡々とした調子で返事を返した。
「私にも、わかりません。ただ一つ、わかっているのは―――」
「っ!?」
イクサは一度右手を横に振ると、その動きにアターシャが視線を向けた一瞬の間に距離を詰め、アターシャの至近距離まで接近する。
目にも留まらぬ速さで移動したイクサを見たアターシャは驚きに目を見開くが、そんなアターシャに構わず、イクサは言葉を続けた。
「ただ一つわかっているのは……私があなたを超えたという、その事実だけです」
「なっ……」
アターシャはイクサの言葉に驚愕し、言葉に詰まる。
イクサはそんなアターシャを冷静に見つめ、その瞳には何の感情も灯っていないように思えたアターシャは、悔しそうに奥歯を噛み締めた。