第247話:スピード勝負
「アスカ様、今お見せします。先ほどの私の行動、その意味を」
「っ!?」
アスカは突然響いてきたイクサの言葉に驚き、その意味を尋ねようと口を開くが……口を開いたその瞬間、黄緑色の光が天空から降り注ぎ、イクサを包みこんだ。
イクサは天空から差し込んできた黄緑色の光に包まれ、アスカと竜族の姉妹達はその光の眩しさに目を細める。
やがてその黄緑色の光から、電子的な声が響いてきた。
CheckingMainSystem. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .. . OK_
RevolutionDriverLoading. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .. . . OK_
RevolutionSystem. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .Unlock_
Type. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .HighSpeed_
AreYouReady? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
REVOLUTION_
「はあああああああ!」
イクサは黄緑色の光に包まれながら、大声で叫ぶ。
その光の中で、イクサの両足に様々な機械的パーツがいくつも創造され、イクサの両足に機械的な外装が装着されていく。
やがてそれらのパーツは両足に装着を完了すると足防具のように変形し、その隙間から空気を噴き出すと、イクサの身体を数センチ浮遊させた。
「何を……あんた一体、何をしたの!?」
左側の竜族の娘は目の前の現象を理解できず、取り乱した様子で声を荒げる。
その瞬間一瞬の隙が生まれ、その隙をイクサは見逃さなかった。
「……ハイ・スピード」
「っ!?」
イクサは一瞬にして加速すると猛スピードで左側の竜族の娘を掴み、そのまま中庭の奥に向かって移動していく。
そんな娘の姿を見た右側の竜族の娘は両手のナイフを構え、娘を救い出そうと両足に力を込めた。
しかし―――
「おっと。君の相手はあたしだよ。無視はいかんってね」
「くっ……!」
アスカは一瞬にして距離を詰めると、刀の切っ先をその喉元に押し当てる。
そんな状況に追いやられた娘は悔しそうにしながらも表情を取り繕い、やがて言葉を落とした。
「ふ、ふん。いくら私達を分断したところで、力の差は歴然。勝てると思ってるわけ?」
「さーね。そりゃ、やってみなきゃわからんさ」
アスカは刀の切っ先を娘に突きつけたまま、笑顔で言葉を発する。
その笑顔を余裕と受け取った娘は憤慨し、驚異的なスピードでアスカと距離を取った。
「っ!?」
「見えなかった……って顔ね。ま、そりゃそーだけど」
「…………」
一瞬完全に娘の姿を見失ったアスカは、その目で竜族のスピードを目にし、額に大粒の汗を流す。
しかしあくまで表面上は平静を装い、そして言葉を続けた。
「そういや、自己紹介もまだだったね。あたしはアスカ。あんたは?」
「今から死ぬ人に自己紹介なんて無駄なんだけど……まあいいか。私の名はフレジット=ダブル。最後に聞く名前だから、よく覚えておいてね」
フレジットは両手でくるくるとナイフを回転させると、そのまま戦闘態勢に入る。
その構えに熟練した何かを感じたアスカは、自身も体勢を低くして二本の刀を構えた。
「フレジット……ね。おっけー、覚えとくよ」
アスカは二本の刀を構えたまま、じりじりとフレジットとの距離を縮める。
余裕の消えたアスカの表情と違い、フレジットは余裕のある笑顔を浮かべながら、やがてトントンと規則的なステップを踏み始める。
そのステップから驚異的なスピードが精製されることを予見したアスカは、再び大粒の汗を額から流していた。