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第229話:アイスの屋台へGO

「それにしても、レン。本当に私達についてきてよかったのか? クロックオーシャンは良い街だったろうに」


 海上を進む船の甲板で、リリィは心配そうに眉を顰めながらレンへと言葉を紡ぐ。

 レンは少し緊張した様子でリリィを見返すと、慌てて返事を返した。


「あっ、いえ、大丈夫です。確かにクロックオーシャンに長居はしていましたが、僕の目的はあくまでリリィさんと旅をすることでしたので」

「えっ?」


 リリィはレンの言っている意味がよくわからず、小さく首を傾げながら不思議そうに聞き返す。

 そんなリリィの反応を受けたレンは、顔を真っ赤にして俯きながら言葉を続けた。


「いっ、いえ、なんでもありません! とにかく、僕もリリィさん同様旅をしている身でですから、クロックオーシャンを離れても問題ないということ、です」


 レンは両手の指をもじもじと合わせながら、段々と小さくなる声で言葉を紡ぐ。

 そんなレンの言葉を聞いたリリィは、頷きながらたどたどしく返事を返した。


「そ、そうか。それなら良いのだが……」


 リリィはぽりぽりと頬をかきながら、少し腑に落ちないながらも頷いて返事を返す。

 そうして二人の間に沈黙が下りてきたその瞬間、突然レンの腕をリースが握った。


「ね、レン! あっちにアイスの屋台が出てるよ! 一緒に食べよ!?」


 リースは太陽のような笑顔を浮かべながら、レンの腕をぐいぐいと引っ張る。

 テンションの高いリースを見たレンは、二歩、三歩とリースに引っ張られながら返事を返した。


「あっ、ちょ、いきなり引っ張らないでください!」


 レンは驚いた表情を浮かべながらも、リースに引っ張られるままアイスの屋台に走る。

最初はほぼ強引に連れて行かれていたレンだったが、やがて二人一緒にアイスを購入すると、まんざらでもない様子でそれを口にする。

 リースは同じくらいの歳の仲間が出来て嬉しいのか、アイスを食べながら終始高いテンションで話しており、レンは時々ツッコミを入れながらリースの話を聞いているようだ。

 なんだかんだ言って仲良くアイスを食べている二人を見たリリィは、自分でも気付かないうちに笑顔を浮かべていた。


「ふふっ。今“レンを連れてきて良かったな~”って思ってるんじゃなぁい?」

「なぅっ!? せ、セラ。いきなり背後に立つな!」


 胸の下で腕を組んだセラがリリィの顔を覗き込んでニヤニヤとしながら言葉を紡ぎ、リリィは噛み付くように返事を返す。

 そんなリリィの返事を受けたセラは、まったく堪えていない様子で返事を返した。


「それよりぃ、私やっぱり良い事したんじゃなぁい? レンを連れてきたの、私のファインプレーっでしょぉ?」


 セラはニヤニヤと笑いながら、リリィの顔を見つめて言葉を紡ぐ。

 そんなセラの言葉を受けたリリィは、不満そうに腕を組みながら返事を返した。


「フン。確かにレンを連れてきたのは正解だった。しかし、お前のやり方は強引過ぎる! あれでは誘拐だろう!」


 リリィは言葉の語気を強めながら、セラに向かって言葉をぶつける。

 しかしセラはにっこりと微笑みながら、平然とした様子で返事を返した。


「あらぁ、そういえば誘拐って悪いことだったかしらぁ?」

「いや、完璧に犯罪だろうが!」


 セラの言葉を聞いたリリィは、右手を勢い良く横に振りながら言葉をぶつける。

 そしてそのまま言い合いをする、リリィとセラ。そんな二人を、アスカは頭の後ろで手を組みながら眺めていた。


「あーあ、また喧嘩してる。仲良くなれないもんかねぇ?」


 アスカは口をωの形にして眉を顰めながら、二人に向かって言葉を紡ぐ。

 そんなアスカの言葉を聞いたセラは、リリィの背後に自身の身体を転送すると後ろからリリィを抱きしめて言葉を返した。


「あらぁ、私と剣士さんは仲良しよぉ? 特に夜なんてすっごい仲良しなんだからぁ」

「っ!? へ、変なこと言うな馬鹿! お前が言うと本当みたいに聞こえるだろう!」


 リリィは後ろから抱きしめられた状態で頬を赤く染め、セラに向かって噛み付くように言葉を返す。

 そんなリリィの言葉を至近距離で受けたセラは背中の翼を動かし、空中へと逃げるように浮遊した。


「あらあら。剣士さんはこわぁいから、リース達のところに遊びにいってくるわぁ」

「あっ、こら!? せっかく楽しんでいるのだから、二人の邪魔をするな!」


 リリィは飛び去ってしまったセラを追いかけ、結局リース達のいる屋台へと走っていく。

 そんなリリィ達を見たアスカは、近くに立っていたイクサの手を掴んで屋台の方へと走り出した。


「おっ、なんか楽しそう! あたし達も行こっ、イクサっち!」

「アイス出撃ですね、アスカ様。是非お供させてください」


 結局屋台には女性陣とリース達が集まり、それぞれ違う味のアイスを注文しては分け合って食べている。

 楽しそうに笑う一行を遠目から見ていたアニキは、甲板の手すりに身体を預けると空を見上げながら言葉を落とした。


「平和だな……ま、たまにはこういうのもいいか」


 アニキはどこまでも突き抜けるような青空を見つめると、小さく息を落とす。

 しかしのんびりしていたアニキもやがてアスカに呼ばれ、大量のアイスを口に詰め込まれる事になるのだった。

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