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第223話:リリィの強さ

「一体……どういうことだ? 何故リリィさんは、石化しないでいられる?」


 レンはメデューサと正面で顔を合わせても石化する気配すらしなかったリリィの背中を、不思議そうに見つめる。

 すると隣にいたリースは俯いて思考を回転させると、やがて何かに気付いたようにその顔を上げた。


「っ!? まさか。リリィさん今……目を閉じているのかも」

「そんなっ!? メデューサを相手にして目を瞑るなんて、自殺行為だ!」


 レンは隣にいるリースの言葉が信じられず、荒々しく言葉をぶつける。

 しかしリースはそんなレンの瞳を真っ直ぐに見つめると、落ち着いた様子で返事を返した。


「でもそれしか、考えられない。実際リリィさんは、真正面からメデューサの顔を見ていても、石化しなかったんだから」

「くっ……しかしそれは、危険すぎる! 相手は並のモンスターではないんだ……!」

「うん……」


 レンの言葉に同意し、心配そうに眉を顰めながらリリィの背中を見つめるリース。

 そんな二人の視線を背中に感じたリリィは剣の切っ先をメデューサに向け、気合を入れた。


「私は、負けるわけにはいかん。負けられない理由がある」


 自分が倒されたら、一体誰がリース達を守るというのか。

 だから、自分は負けない。負けるわけにはいかない。

 リリィの心中にそんな言葉が錯綜し、戦闘に対する集中力をどんどん増していく。

 メデューサはそんなリリィの気迫を本能で感じ取り、苦々しい表情を浮かべた。


「フン。そっちが来ないのなら……こちらからいかせてもらおう!」

「そんなっ!? リリィさんから仕掛けるなんて!」


 リリィは一瞬にしてメデューサとの距離を詰め、縦切りの剣撃を大蛇の身体へと振りぬく。

 しかしメデューサは器用に大蛇の身体をくねらせ、その一撃を回避した。


「まだ、だあああああああ!」


 リリィはその場からさらに足を使って移動し、メデューサの背後へと移動する。

 圧倒的スピードにメデューサが驚いている間に、リリィは再び大蛇の身体へと横薙ぎに剣を振り抜いた。


『グッ……!?』


 しかしメデューサは再び器用に大蛇の身体を移動させ、ギリギリのところでリリィの剣撃を回避する。

 しかしそんなやり取りが数回、数十回と続いていく、リリィの呼吸が次第に乱れてきた。


「??? 何で、リリィさんがあんなに疲れて……攻撃しているのはリリィさんなのに」


 リースはその原因がわからず、疑問符を浮かべながら首を傾げる。

 そんなリースの言葉を聞いたレンは、厳しい視線をリリィに向けながら言葉を発した。


「目を瞑った状態での戦闘は、恐ろしく集中力を消費します。まして相手はメデューサ、並のモンスターではない」

「っ! そっか。攻撃一つとっても、体力と精神力の消費が段違いなんだ……!」


 リースはレンの言葉に納得して頷くと、再びリリィへと視線を戻してゴクリと唾を飲み込む。

 実際今のリリィに、余裕は無い。

 何十回と全力の剣撃を繰り出しているのに、クリティカルヒットは一度もない。

 無論メデューサとて多少は消耗しているが、目を瞑った状態で戦っているリリィの比ではない。

 このままでは遅かれ早かれ、リリィの集中力の方が先に切れてしまうだろう。

 そうして目を開いてしまえば……その先に待っているのは、間違いなく死だ。


「ちっ、仕方ない。短期決戦で終わらせるしかないようだな……!」

『っ!?』


 相変わらず目を瞑ったままのリリィ。しかしその身体からはこれまで以上の気迫が溢れ出し、メデューサの身体を自然と震わせる。

 これまで多くの生物を打ち倒してきた自分が、震えている?

 その事実はメデューサのプライドを著しく傷つけ、それはそのまま攻撃の理由となってしまった。


「っ!? リリィさん! 危ない!」

『シャアアアアアアアア!』


 メデューサは気合を溜めているリリィに向かって、全身全霊の体当たりを行う。

 その威力は凄まじく、仮にどこかの王城がその一撃を受けたなら、崩落してしまってもおかしくないほどだ。

 しかしリリィは無言のまま剣を構え、その場から動かない。

 やがてメデューサの大蛇の体が、リリィの身体を吹き飛ばそうという、その刹那―――


「……遅いな。いや、遅すぎる」

『ギッ、ギギャアアアアアアアアアア!?』


 いつのまにかリリィの身体には漆黒の翼と黒光りする鎧のような尻尾が生え、メデューサの背後でステップを踏む。

 そしてメデューサの身体である大蛇はその身体を切りつけられ、紫色の鮮血を吹き出していた。


『グッ……グオオオオオオオオ!』


 メデューサは怒りの咆哮と共に、大蛇の尻尾の切りつけられた部分を再生する。

 その様子を感じ取ったリリィは、感心した様子で言葉を落とした。


「ほう。再生能力もあるとは恐れ入る。もっとも、無駄な能力になりそうだがな」

『グゥッ……!』


 リリィは剣を片手に軽快なステップを踏みながら、メデューサに向かって言葉を落とす。

 その余裕がたまらなく許せないメデューサは奥歯を噛み締め、そんなリリィを真っ直ぐに睨みつけていた。

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