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第213話:セラの作戦

「でもこの巨人さん、あんまり素早くはないみたいねぇ。それに、弱点もわかりやすいわぁ」


 セラは大鎌を構えながら巨人を見上げ、言葉を落とす。

 そんなセラの言葉を聞いたレンは、頭に疑問符を浮かべて返事を返した。


「弱点……ですか?」


 自信満々なセラの言葉を聞いたレンは、横目でセラへと視線を送りながら言葉を落とす。

 そんなレンの視線を受けたセラは、穏やかな笑顔を浮かべながら大鎌の先端を巨人の頭部に向けた。


「あそこ。頭部だけ妙に重装甲でしょぉ? あれって、”大事なところだから守ってる”って解釈できないかしらぁ」


 セラの大鎌の先端を追いかけて巨人の頭部へ視線を向けると、確かにその頭部には重厚な兜が装着されており、逆にそれ以外の部分はほとんど守られていない。

 元々素早さの劣る巨人であるため、出来る限り身体を軽量化したのだろうが、それなら頭部だけ兜で守っているのは違和感が残る。

 セラの考察を聞いたアスカは目を見開き、うんうんと頷きながら返事を返した。


「そっかぁ! 確かにセラっちの言う通り、頭が弱点だからあんなに守ってるのかも! ていうかセラっち頭いいねぇ!」


 アスカは無邪気な笑顔を浮かべながら、セラに向かって言葉を発する。

 表裏のないアスカの言葉を受けたセラは、穏やかに微笑みながら返事を返した。


「ありがと。でもそう素直に褒められると、ちょっと照れちゃうわぁ」

「???」


 真っ直ぐで純粋なアスカの瞳に押されたのか、セラはほんの少しだけ頬を赤らめながら返事を返す。

 そんな二人の会話を聞いていたレンは、構えた槍の切っ先を巨人の頭に向けながら言葉を紡いだ。


「ともかく、狙うなら頭部でしょうね。問題は―――っ!?」

「っ! レン、危ない!」


 会話をしているレンに構わず、巨人は再びその巨大な拳をレンに向かって振り下ろす。

 そんな巨人のモーションに気付いたリースは声を荒げるが、レンの姿は巨人の拳によって舞い上がった土煙に覆われ、その無事を確認することもできない。

 リースが乾いた喉をごくりと鳴らしていると、やがて土煙の中に悠然と立っているレンの姿が見えてきた。


「っ!? 良かった……レン、無事だったんだね!」


 リースは鞄の紐を強く握りながら、にっこりと微笑んで言葉を発する。

 そんなリースの言葉を背中に受けたレンは、小さく息を落としながら返事を返した。


「そりゃ無事ですよ。まったく、君の心配そうな声を聞くと、本当に死んだんじゃないかと思ってしまうな」

「あっ。ご、ごめん……」


 リースはレンの言葉を受けると申し訳なさそうに俯き、小さく言葉を紡ぐ。

 そんなリースの声を聞いたレンは乱暴に頭をかくと、さらに言葉を続けた。


「とにかく、リースはその人たちを守ることに集中してください! でないとこちらも集中できない!」

「あっ……う、うん! わかったよ!」


 レンの言葉を聞いたリースはこくこくと頷き、納得した様子で返事を返す。

 そんな二人の様子を見ていたセラは、妖しく微笑みながらアスカとレンに向かって言葉を紡いだ。


「ね、二人とも。私良いこと思いついたんだけど、聞いてくれなぁい?」


 セラは妖しい笑顔を浮かべながら、アスカたちに向かって言葉を紡ぐ。

 そんなセラの言葉を聞いたアスカとレンは、巨人の動きに注意しながらセラへと近づいた。


「あのねぇ? ―――して、―――するのよぉ」


 セラは耳を近づけてきた二人に顔を突き出し、小さな声で作戦を提案する。

 そんなセラの作戦を聞いた二人は、それぞれ正反対の反応を返してきた。


「おおーっ! それシンプルでいいかも! てかそれしかないっしょ!」

「そうですか……? あまり現実的とは思えませんが」


 肯定的なアスカとは対照的に、レンは眉間に皺を寄せてセラの作戦を否定する。

 セラは艶っぽい笑顔を浮かべて頬に手を当てると、不満そうなレンに向かって返事を返した。


「あらぁ。だったら他に代案あるぅ? レンちゃんの作戦なら私、従っちゃうかも」


 にっこりと微笑んだセラは挑発的な視線をレンに向け、代案を聞かせるよう言葉を発する。

 そんなセラの言葉を受けたレンは腕を組んで俯き、思考をフル回転させて作戦を考えるが……やがて俯いたままの状態で、小さく言葉を落とした。


「……っ! ありません」

「「???」」


 ぽつりと落とされたレンの言葉の意味がわからず、セラとアスカは不思議そうに首を傾げる。

 そんな二人の様子を見たレンは、やがて顔を上げて言葉を続けた。


「だから、代案はありません! 思いつかないですよ、あんな巨人を倒す方法なんて!」


 レンは恥ずかしさに頬を赤くしながら、セラとアスカに向かって言葉をぶつける。

 そんなレンの言葉を受けたアスカは、大きく笑いながら返事を返した。


「あっはっは! そかそか、じゃあしょうがない。セラっちの作戦でいこう! なっ!?」

「くっ……わかりました。わかりましたから背中を叩かないでください」


 背中をばんばんと叩いてくるアスカの言葉を受け、がっくりと両肩を落としながら返事を返す。

 そんなレンとアスカを見つめると、セラは微笑みながら言葉を紡いだ。


「まぁ、失敗したらしたで別の手を考えましょぉ? 今はとりあえず、私の作戦通りに動いてねぇ」


 セラは大鎌を回転させつつ、レン達に向かって言葉を発する。

 そんなセラの言葉を聞いたレン達は、セラに向かってそれぞれ言葉を返した。


「……わかり、ました。仕方ないですね」

「あいあい、よろこんで! お姉さんにまっかせなさーい!」


 レンはがっくりと肩を落としたまま、セラに向かって気力のない声を届ける。

 一方アスカはびしっと敬礼しながら、元気良く返事を返していた。

 正反対な反応を返す二人を楽しく見つめつつ、セラはゆっくりと巨人に向かって相対する。

 巨人はリース達を攻撃すべきかセラ達を攻撃すべきか迷っていたらしく、握り込んだ拳を顔の辺りまで持ち上げた状態で、その拳の行き先に迷っている。

 そんな巨人の様子を見る限り、どうやらあまり知能はなく、対応力も高くはないらしい。

 そして巨人の様子を観察していたセラは、楽しそうに微笑んだ。


「ふふっ……これは、結構簡単な仕事かもしれないわぁ」

「???」


 楽しそうに笑ったセラに対し、疑問符を浮かべながら首を傾げるアスカ。

 やがてセラは背中の翼を動かすと、その身体を一瞬にして空中へと浮かべていた。

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