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第166話:やってくれるぜ

「レヴォリューション完了です、リース様。これで私も創術のお手伝いができます」

「わ、わかった。一緒に頑張ろう、イクサさん!」


 イクサの変身ぶりに驚いていたリースだったが、今はそんな状況でないことを思い出し、再びアニキの右腕に精神を集中させる。

 やがてアニキの右腕の下には、黄緑色に輝く練成陣が現れた。


『練成陣もチョークでおっかなびっくりに描いてた小僧が、成長したもんだぜ……』


 アニキはなんだかおかしくなって、歯を見せて大きく笑う。

 そんなアニキの様子を見たリースは不思議そうに首を傾げながらも、やがて気を取り直してアニキの右腕へと両手を掲げた。


「イクサさん、僕が創術を使おうとすると何故か風が襲い掛かってくる。でも、決して創術を止めないで!」

「了解しました。最後までやりとげます」


 両手を掲げたリースをそのマントで包み込むように立ったイクサは、リースと同じように両手をアニキの右腕へと突き出す。

 やがてリースは大きく息を吸い込み、精神を集中させた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 甲高い声が響き、まるでその声に呼応するように、錬成陣から淡い光が昇り出す。

 するとそんなリースに対抗するように、強い風が吹き始めた。


「くっ……!? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「くそ……! また突風かよ!」


 アニキの右腕を、逆立った髪を大きく揺らす突風。

風はリースとイクサへ容赦なく襲い掛かり、飛び散った鮮血がアニキの顔を赤く染める。

 そして今度はアニキの右腕に、何かが乗せられたような感覚が走った。


「っ!? こいつは……」


 アニキの右腕には赤い風が逆巻き、何かの形を成そうと蠢いているように見える。

 リースの身体は風によっていくつも切りつけられ、流れる鮮血が痛々しい。

 その後ろに立つイクサの身体もいつのまにか風によって切りつけられ、全身に怪我を負っていた。

 その白いマントは強い風に引っ張られ、ばたばたと揺れる。

 しかしイクサとリースはまるで見えない何かに支えられるように、両手を練成陣に掲げ続けた。


「まだ、だ……まだ完成してない。ここで逃げちゃ、ダメなんだ……!」


 風によって額が切れ、流れ出した鮮血がリースの片目を塞ぐ。

 それでもリースは大きく息を吸い込み、その様子を見たイクサも息を吸い込むと、二人は同時に叫んでいた。


「「鉄甲錬成:シェルベルム!」」


 リースとイクサの声は強く重なり、赤い風がアニキ達を包み込む。

 そんなアニキ達の様子に気付いたのか、アスカの相手をしていたドラゴンは、踵を返してアニキに向かって突進した。


「しまっ!? アニキっち、気をつけて!」

『グォオオオオオオオオオオオ!』


 ドラゴンは衝撃波を巻き起こしながら、一瞬にしてアニキとの距離を詰める。

 そんなドラゴンの牙がアニキ達を捉えようという刹那……その動きがピタリと止まった。


「大丈夫……だ。てめえもこいつのヤバさは、わかってるみてえだな? 野生の勘ってやつかよ」

『グルルルルッ……』


 赤い風の中から歩みだしてきたアニキの右腕には、肩までカバーされた赤い重手甲が輝く。

 アニキは重厚な手甲に包まれた右腕を突き出しながら、ゆっくりとドラゴンに向かって歩みを進め、ドラゴンは唸り声を上げながら数歩後ずさる。

 そんなアニキの背後では、白いマントに包まれたイクサとリースが穏やかな寝息を立てていた。


「やってくれたぜ、ったくよぉ。やってくれたけど……これクッソ重いぜぇ!?」

『グォオオオオオオオオオオオオオ!』


 嬉しそうに挑発的な笑顔を浮かべるアニキに対抗するように、ドラゴンは咆哮を響かせる。

 アニキは右腕を盾のようにしながらリース達を衝撃波から守ると、挑戦的な瞳で眉間に皺を寄せ、歯を見せて笑った。


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