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第148話:まほにゃーと遊ぼう

「で、ここがマホマホ☆ランドか……随分広そうだな」


 マホマホ☆ランドの敷地内に入ったリリィは、胸の下で腕を組んで周囲を見渡す。

 ゲートをくぐった先では様々なアトラクションやショップが所狭しと立ち並び、楽しそうに笑うカップルや家族連れ等で溢れ返っている。

 やがてゲート前広場のある一角で、特に多くの人々が集まっている場所があることに気付いた。


「ん? 随分と人が集まっているようだが何を……お!? なんだあれは!?」


 リリィは人々の中心でぶんぶんと手を振っているネコミミキャラクターに向かって、びしっと指を指す。

 そんなリリィを見たイクサは、目の前のキャラクターについての解説を始めた。


「リリィ様。あちらはこのマホマホ☆ランドの妖精“まほにゃー”です。もこもことした愛くるしい見た目と動きに、人々はもうメロメロなのです」

「め、メロメロなのか」

「メロメロです」


 リリィからの返答に、力強く頷いて言葉を返すイクサ。

 説明を受けたリリィは、小さく息を落としながら言葉を紡いだ。


「まあ、確かに可愛いと思うが……今は子ども達が周りに集まってるし、我々は近づかない方がいいだろう。特にアスカ。はしゃいで迷惑をかけないように―――」

「うっひょおおおおおおおお! まほにゃーだああああああああああ!」

「ちょお!? 言ったそばから!?」


 アスカは一瞬にしてまほにゃーとの距離を詰めると、助走をつけた状態でまほにゃーの大きな頭に飛びつく。

 身体全体で抱きしめられたまほにゃーは、勢いに押されてふらふらとバランスを崩した。


「ばか! アスカばか! 子ども達も見てるんだぞ!?」


 リリィは取り乱した様子で、まほにゃーに飛びついたアスカへと言葉をぶつける。

 そんなアスカを見た子ども達は、口々に言葉を発しながらまほにゃーに飛びついた。


「お姉ちゃんずるーい! あたしもまほにゃーぎゅーってするー!」

「あたしも! あたしも!」

「わーい!」


 子ども達はタガが外れたようにまほにゃーへと飛びつき、まほにゃーはかろうじてバランスを保ちながら立っている。

 しかしその両足はガクガクと震えており、限界が来るのも時間の問題だった。


「ま、まほにゃーが、まほにゃーがヤバイ! 主に物理的に!」


 リリィは口の前に両手を当て、両目を見開きながら言葉を発する。

 その言葉を受けたイクサは、そっとまほにゃーを指差しながら言葉を紡いだ。


「ご覧下さい、リリィ様。マホマホ☆ランドの妖精まほにゃーが、物理的な重量で潰れていきます」

「いや、冷静に分析してる場合じゃないだろ! とにかくアスカを引き剥がすぞ!」

「そうですね。あのままでは私が飛びつく場所がありません」

「何か言ってる!? だから飛びつくんじゃないよまほにゃー限界なんだから!」


 リリィは隣にいるイクサにツッコミを入れ、言葉をぶつける。

 その言葉を受けたイクサは、右手を空に掲げながら返事を返した。


「わかりましたリリィ様。では、私のビーム砲で全員を一掃しましょう。それで私が飛びつけます」

「ストォォォップ! それ一番ダメなやつ! 子ども達完全に撒き沿いだろうが!」


 リリィは空に掲げられたイクサの右手を無理矢理下に下ろし、言葉をぶつける。

 その言葉を受けたイクサは、淡々とした調子で返事を返した。


「それもそうですね。では私が子ども達ごとまほにゃーを抱きしめますので、リリィ様はそれを見ていてください」

「それ私意味あるかな!? というか早くみんなを引き剥がさないとまほにゃーの、まほにゃーの足がもう限界!」


 リリィは両頬に手を当てながら、今にも崩れ落ちそうなまほにゃーの足を見つめる。

 その言葉を受けたイクサは、こくりと頷きながら返事を返した。


「了解しました。まずは皆さんを引き剥がしましょう」

「あ、ああ! 急ぐぞイクサ!」


 リリィとイクサは急いでまほにゃーへと駆け寄り、主にその大きな頭部に抱きついている子ども達とアスカを引き剥がす。

 なんとか全員をまほにゃーから降ろしたリリィは、ため息を吐きながら地面へと腰を下ろした。


「はぁ、まったく……子ども達よりはしゃいでどうするんだ馬鹿者め。まほにゃーも困っていただろう」


 リリィは地面に座った状態でため息を落とし、引き剥がしたアスカへと視線を向ける。

 アスカは困ったように笑いながら、ぽりぽりと頬をかいて返事を返した。


「いやぁ。まほにゃーが可愛すぎて、何が何だかわからなくなっちゃった。てへっ♪」


 アスカは自身の頭をこつんっと叩きながら、ぺろっと舌を出しながら返事を返す。

 そんなアスカをジト目で見つめたリリィは、ため息混じりで言葉を紡いだ。


「はぁ……まあ、いいけど。まほにゃーには謝っておけよ?」


 リリィはぺろっと舌を出したアスカに対し、突き刺すように言葉をぶつける。

 するとその瞬間、肉球が付いたまほにゃーのモコモコの手が、リリィの頭へと伸びた。


「えへぇっ!?」

『にゃ~』


 まほにゃーはリリィ達の会話を聞いていたのか、突然リリィに近づくとその頭をもふもふと撫でる。

 もこもことしたまほにゃーの手で突然頭を撫でられたリリィは、呆然としながらまほにゃーを見上げた。


「お礼……でしょうか。まほにゃーも助けてもらったことがわかっているのでしょう」


 リリィとまほにゃーの様子を見たイクサは、冷静に状況を分析して理由を説明する。

 イクサの説明を受けたリリィは、くすぐったそうに笑いながらまほにゃーを見上げた。


「お礼、か。ふふっ……ありがとう、まほにゃー」


 リリィはにっこりと微笑み、自身の頭を撫でているまほにゃーへと笑顔を見せる。

 その笑顔を見たまほにゃーはひげをぴこぴこと動かしながら「にゃーっ」と元気良く返事を返した。


「ていうか、まほにゃー。その撫で撫で私もやってほしいんスけど」

「私も希望します。引き剥がすのを手伝っていた私にも、その権利はあるはずです」

『にゃっ!?』


 アスカとイクサは両手をわきわきとさせながら、両目を妖しく光らせてまほにゃーに近づく。

 その様子を見たまほにゃーは、しっぽをピンッと立てながら数歩後ずさった。


「ていうか、もっかい抱きつくー! そりゃ!」

「私も抱きつきたいです。というか、抱きつきます」

『にゃー!?』


 アスカとイクサは一瞬にしてまほにゃーを包囲し、その大きな頭部に飛びつく。

 そんな二人を見た子ども達は、再びまほにゃーへと抱きつき始めた。


「ちょ、お前達!? 何回同じ事してるんだああああああああ!」


 リリィは両手で頭を抱え、大空に向かって言葉をぶつける。

 まほにゃーは再び訪れた大いなる重量の前に、再びガクガクと足を震わせていた。


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