第146話:いざ、入場ゲートへ
「うう。またこの格好をする機会があろうとは……」
リリィは学生服を着た状態で、がっくりとその両肩を落とす。
そんなリリィを見たアスカは、両手を合わせて笑いながら言葉を紡いだ。
「なーに言ってんのリリィっち! ちゃんと似合ってるから大丈夫だって!」
今のリリィは黒く艶のある髪を結っており、赤い縁のメガネが印象的に輝く。
制服は胸のあたりがかなりきつそうではあるものの、短いスカートから伸びる脚の曲線が美しく、そちらにも目を引かれる。
腰元に剣を下げているところがいかにもリリィらしいが、今回は手甲と足防具を外しているため、肌の露出は普段よりもかなり増えていた。
いずれにせよ元々の全身黒ずくめよりは、だいぶ武骨さも軽減されただろう。
「ほんとは剣も置いて行きたいんだけどね~。まあ何があるかわからないし、これはしょうがないか」
「ああ、勘弁してくれ。さすがに剣が無いのは落ち着かないからな」
リリィはため息を吐きながら頭を抱え、アスカへと言葉を返す。
その視界の端に、呆然とするイクサの姿が映った。
「??? どうした、イクサ。まだどこか変なところがあるのか?」
じっとリリィを見つめるイクサの視線を感じたリリィは、頭に疑問符を浮かべながら自身の姿を鏡で見る。
イクサは小さく顔を横に振ると、そんなリリィに言葉を紡いだ。
「いいえ。ただ私がリリィ様のお姿を拝見するのが初めてなので、少し驚いただけです。美人とはお伺いしていましたが、想像以上でした」
イクサは相変わらず淡々とした調子で、リリィの姿を見た率直な感想を伝える。
その率直すぎる言葉を聞いたリリィは、頬を少し赤くしながら返事を返した。
「えっと……あ、ありがとう。そう面と向かって言われると、なんだか照れてしまうな」
リリィは困ったように顔を伏せ、赤くなった頬をポリポリとかきながらイクサへと返事を返す。
その様子を見たアスカは頭の後ろで手を組むと、口を尖らせながら言葉を紡いだ。
「あーあ、二人とも綺麗でいいよね~。あたしちんちくりんだからなぁ」
アスカは口を尖らせながら、眉を顰めて言葉を紡ぐ。
その言葉を聞いたイクサはアスカへと身体を向け、全身をスキャンするように見つめると、やがて言葉を返した。
「アスカ様も、充分整った顔立ちとプロポーションであると思われます。胸は平均以下ですが、大きければ良いというものでもありませんので」
イクサはまたしても淡々とした調子で、自身の目で見たアスカの見た目の感想を述べる。
その言葉を聞いたアスカは、両腕で胸を隠しながら返事を返した。
「ぐぅっ。む、胸の事は言わないでください! でも、まあ……ありがと」
アスカは両腕で自身の胸を隠しながら、相変わらず口を尖らせた状態でお礼の言葉を返す。
その様子を微笑ましく見つめていたリリィは、やがて思い出したように言葉を紡いだ。
「ところでアスカ。その遊園地とやらはいつから開いているんだ? 沢山遊びたいなら、早めに行かなければならないだろう」
リリィは胸の下で腕を組み、アスカに向かって質問する。
その言葉を受けたアスカは、大きく両目を見開いて返事を返した。
「あっ!? そ、そうだ! 早く行かなきゃ! 遊園地は待ってくれないかんね!」
「あっ、おい、アスカ!? 一人で行くな!」
アスカはぽんっと両手を合わせると、そのまま宿屋をダッシュで飛び出していく。
その脚力は圧巻で、気付いた時にはリリィの部屋の窓から小さくなったアスカが見えていた。
「ああもう、一人で行ってどうする……! 仕方ない、追いかけるぞイクサ!」
「了解しました」
こくりと頷いたイクサを連れ、リリィはアスカの後ろを賢明に追いかけていく。
やがて遊園地の入場ゲート前でこけているアスカを見つけるのに、それほど時間はかからなかった。




