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第134話:任務開始

「さて、ではわたくしからの依頼内容をご説明させて頂きますわ」


 ダブルエッジ支部から出た一行は、ファイアロッドについて歩き、今はラスカトニアの出口付近に集まっている。

 ファイアロッドの背後には豪華な装飾のされた馬車が一台止まっているが、カーテンが引かれているせいで中の様子まではわからなかった。


「依頼内容はいたってシンプル。ここから隣町であるラスニアまで、この馬車を護衛して頂きます。途中モンスターの襲撃等も考えられますので、充分注意してください」


 ファイアロッドは馬車に片手を置きながら、アニキ達へ任務内容を説明する。

 両腕を組みながら話を聞いていたアニキは、馬車の荷台を見つめながら質問した。


「この馬車には、誰が乗ってんだ? 護衛するってこたぁ、お偉いさんなんだろ?」


 至極当然なアニキの質問に同調し、同時に頷くイクサとリース。

 ファイアロッドは予想通りの質問に、余裕を持って返事を返した。


「それは、教えられませんわ。とにかく、素性が知られるだけで危険が大きくなるほどの人物……と、そう思っていただければ結構です」


 ファイアロッドは胸の下で腕を組み、にっこりと笑いながら言葉を発する。

 アニキはボリボリと頭を搔きながら、ファイアロッドへと返事を返した。


「へぇ、そりゃすげえや。まあとにかく、隣町までこの馬車を守ればいいんだろ? だったら簡単じゃねえか」


 すっかり拍子抜けした様子で、ファイアロッドへと言葉を紡ぐアニキ。

 ファイアロッドはにっこりと微笑むと、アニキに向かって返事を返した。


「さすがはアニキ様。頼もしいですわ。では、さっそく出発しましょうか」


 ファイアロッドは両手をぽんっと合わせると、馬車の運転手に目線で合図を送る。

 するとゆっくりとしたスピードで馬車が動き出し、ラスカトニアからラスニアまで伸びる街道を進み始めた。


「では、参りましょうアニキ様。わたくしが前方の警戒を致しますので、アニキ様は後方の警戒をお願いしますわ」

「おう、わかった」


 アニキは馬車の後方へと移動し、後ろを警戒しながら歩き始める。

 リースとイクサはそれぞれ別個に馬車の側面に立ち、やがて言葉を紡いだ。


「では、わたしとリース様は側面の警戒を担当致します。よろしいでしょうか?」


 イクサは淡々とした調子で、ファイアロッドへと言葉を紡ぐ。

 ファイアロッドは興味がなさそうに振り向くと、冷たい視線を向けながら返事を返した。


「ああ、まあ、あなたはどうでもいいですわ。どうせ役に立ちませんし」

「なっ!? そんな言い方……!」


 リースはファイアロッドの態度に怒り、言葉を返そうと口を開く。

 しかしそれを遮るように、イクサがファイアロッドへと返事を返した。


「……承知しました、ファイアロッド様。精一杯やらせて頂きます」


 イクサは目を伏せ、深々と頭を下げながらファイアロッドへと返事を返す。

 その声を聞いたリースは、不安そうな瞳で馬車の向こうにいるであろうイクサを見つめた。


『イクサさん。やっぱり元気ない……だいじょうぶかな』


 リースは眉を顰め、じっとイクサのいる方角を見つめる。

 しかし馬車はそんなリースの心配をよそに、ゆっくりとした速度で街道を進んでいく。

 アニキ達はそれぞれの配置に着き、周囲を警戒しながら移動を始めた。






 ラスカトニアの周囲は開けた平原で、爽やかな風が気持ちよく流れている。

 そんな平原に整備された街道の上を、馬車は音を立てながら真っ直ぐにラスニアを目指す。

 ファイアロッド達は周囲を警戒しながら、そんな平原を進んでいた。

 そんな中イクサは担当範囲を警戒しながらも、頭の片隅では自身の感情について悩んでいた。


『やはり、わからない。マスターと触れ合った時は確かに、あの感情が大きく揺れ動いた。しかし今は落ち着いている。落ち着いているのに、そこにいるのがよくわかる。この不思議な感情は、一体……?』


 イクサはどこまでも広がるような広い草原を見つめ、小さく息を落とす。

 そうしてラスカトニアからしばらく進み、大きな二つの岩が街道を挟むように置かれている地点に差し掛かった時、事態は大きく動き出した。


「おい……ファイアロッド、気付いてるか?」

「ええ、アニキ様。これだけ殺気を漏らされれば、嫌でも気付きますわ」


 ファイアロッドは左右に聳え立つ大きな岩を交互に見つめ、アニキに向かって返事を返す。

 するとその直後、左右の大きな岩の影から、複数の岩石型モンスター“ゴーレム”が姿を現した。


「あらあら、これはまた厄介ですわね。アニキ様、右側にいるゴーレムはお任せしましたわ」

「おう! 任せときな!」


 アニキは嬉しそうに両拳を打ち鳴らし、馬車の右側面へと移動する。

 ファイアロッドは馬車の左側面に移動すると、杖の先端をゴーレム達へと向けた。


「リース、イクサ! おめえらは下がって、馬車の入り口を守ってろ! ここは俺がやる!」

「う、うん!」

「了解しました」


 アニキの言葉を受けたリース達は、馬車を後ろへと下がらせて馬車の入り口を守るように立つ。

 二つの大岩から現れたゴーレム達は、低い唸り声を上げながらファイアロッドとアニキへ攻撃の照準を合わせた。


「おもしれえ……面白くなってきたぜ!」


 アニキは両拳を構え、ゴーレム達に向かって戦闘態勢をとる。

 ファイアロッドは後ろに下がったイクサを見ると馬鹿にするような笑顔を浮かべ、目の前のゴーレム達へと視線を戻していた。


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