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第十七楽章

 寝てから数十分で目が覚めてしまった。腹が減っていたから、というのもあるが、何故かミラにあーんして薄緑色のアイスクリームを食べさせて貰う夢を見てしまったのだ。街中のおしゃれな喫茶店のテラス席でだ。頬をわずかに染めているミラは大変可愛かった。そんな夢を見たら起きますわ。

 また水の精霊に頼んで髪の毛を直し、ちょっと軽食でもつまみに行こうかと思ってドアに向かうと、ちょうどノックされたころだった。

「……また殺しに来たんですか?」

 冷や汗をだらだら流しながらドアの向こうの誰かさんに問いかける。

「何を勘違いしているのかしら? わたしよ、アリエル」

 ああ、アリエルさんか。

「どうしたんですか?」

 俺はドアを開けて要件を伺う。

「ちょっとお話いいかしら?」

「構いませんけど……アリエルさんにまで襲われたら俺この屋敷から逃げて野宿しますよ?」

 アリエルさんもあの夫婦みたいにならないか、正直心配だ。

「まさか、むしろ感謝しているぐらいよ。……色々な意味で」

 最後の言葉は小さく、ぼそりと呟くように言ったが丸聞こえだ。

「それでね、要件なんだけど……お父さんとお母さんは怖い?」

 アリエルさんは深刻そうな表情でそう問いかけてきた。

「……あれで怖くないって言ったらただのマゾヒストですよ?」

 もしかして流れ弾が頭に当たってしまったのだろうか。そんなことは聞くまでも無いだろう。

「……そういうことじゃなくて……いや、あってるのかしら……んー、ちょっと待ってね」

 アリエルさんは緩い喋り方で悩み始めた。唇にたおやかな人差し指を当てて考える姿はちょっと心惹かれるものがある。

「んー、率直に言っちゃうわね。これからも、ミラと関わるのを遠慮しないで欲しいの」

 アリエルさんの頼みに、俺は拍子抜けした。

「最初っからそんなつもりありませんよ」

 それこそ言うまでもないことだな。

「あら? あんな仕打ち受けたらもう嫌になりそうなものだけど?」

 落ち着いた声で緩く問いかけてくる。

「いや、あれはお二人がミラを愛しているからこその行動だって分かってますから。それにあのミラの様子だと結構キツイ説教をしたんでしょう? だったら、多分お二人も反省するんじゃないですかね」

 精々すれ違いざまに睨まれる程度だろう。

「そう……うふふ、じゃあ心配ないかしら。それと、今朝の騒ぎで厨房がダメになっちゃったから、今日は外食よ。あ、そうだ! せっかくだからミラと二人きりで出かけてらっしゃい」

 アリエルさんはさも名案、とばかりに顔を輝かせて手を打った。

「あ、いいですね、それ。なんかお勧めのお店ってあります?」

 実はと言うと、俺は基本的にこの屋敷で過ごしている。起きて、朝食、訓練or仕事手伝い、昼食、訓練or仕事手伝い、夕食、風呂、ミラと遊ぶ、寝る、というサイクルだ。しかもウェールズさんの意向で俺は冒険者になることが二週間ほど前に決定したので、そこからは手伝いを任されずに訓練ばかりやっていた。孤児院では俺がもうほとんど来ないことを知った子供たちが大変残念がってくれていた。こう思うのも何だけど、ちょっと嬉しい。

「それじゃあ『シャローム』なんかどうかしら。テラス席の景観もいいし、アイスクリームが美味しいのよ。今日は天気もいいから行ってらっしゃい」

 テラス席でアイスクリーム……何か頭に引っかかるがまぁ、いいだろう。

「じゃあちょっと誘ってきますね。俺も腹減ってますし」

「ミラはちょっと拗ねてると思うけど気にしないでね~」

「はーい」

 俺はそう言って、室内にアリエルさんを残したまま部屋を出た。中には見られて困るような物もないし、アリエルさんは人の部屋を粗探しするような真似はしないだろう。そもそも、今朝この部屋に引っ越したのだ。そんなものがあるわけない。


                 ■


 ミラの部屋の前に行き、ドアをノックする。

「……どちらさま?」

 不機嫌そうな声だ。若干声が低い。

「俺だ。タクトだよ」

「……お兄、ちゃん?」

 ドアの向こうから聞こえてくる声は、どことなく怯えているようだった。

「ちょっとした用があって来たんだ。部屋に入れるのが嫌なら廊下で立ち話にするけど、どうする?」

 俺が問いかけると、しばし、考えているような沈黙が流れた。

「……どうぞ」

 中からそんな声が聞こえると、ドアが開いた。

「お邪魔します」

 俺はそう言って中に入る。全体的に、年頃の女の子の部屋にしては簡素だが、それでもどことなくデザインがファンシーな部屋だ。色はペールトーンが多い。うっすらと、ミラ特有のいい匂いを感じる気がする。

 ミラの勧めでソファーに座り、その対面にミラが座る。

「それで、要件なんだけどな。どうやら今朝の騒ぎで厨房がやられたみたいでさ、食事は各自で外食らしいんだ」

 俺がそう前置きを言うと、ミラは分かった、という合図のように一つ頷く。

「そこでさ、アリエルさんから良さげな店紹介して貰ったんだけど、どうだ? 一緒に行かないか?」

 俺の誘いを聞いて、ミラはびっくりしたような表情をする。そして、

「……別に、気を遣わなくていい。今朝の事のフォローなんかいらない」

 顔を赤くして、どこか拗ねたような声そう言ってそっぽを向かれた。あー、この年頃って気を遣われると余計に鬱陶しく感じるころだよな。ちょっと雰囲気はとげとげしくなったけど、代わりに先ほどの怯えているような感じは消えていた。ふむ、どうやら俺が遠慮をするのではないかと不安に思ってくれていたのかな? 気苦労を背負ったのはミラだから不謹慎だが、そう思ってくれていたのは素直にうれしいな。

「別に気を遣ってるわけじゃないさ。単にミラと行きたいと思ったからだよ。提案したのはアリエルさんだけど、賛成したのは俺だからな」

「…………」

 ミラは黙ってしまったが、放つ空気はかなり柔らかくなった。もうひと押しだ。

「そこはどうやらテラス席がいい場所らしくてな。景色がいいらしいぞ。『シャローム』って名前だったかな?」

 俺はその店の魅力を並べていく。そう言えばシャロームって、地球だと、どっかの国の挨拶だったな。こっちではどうなのだろうか。

「……シャローム?」

 ミラが食いついた。どうやら店の名前に反応している。ぱっと顔を上げ、俺を見上げている。

「そう、シャローム。そこにミラと言ってみたいと思ってさ」

 魚が食いついた釣り人の気持ちがどことなく分かる気がする。食いついてくるとなんか嬉しいな。

「……お兄ちゃんが、私と、そこで食事を、したい? ……分かった。今から支度する。ちょっと待ってて」

 よし! どうやら俺の気持ちが伝わったようだ!

「ああ、じゃあ外で待ってるから」

 俺はそう言って部屋を出る。そうだな……折角だから一緒に街中を巡るのもありかもな。ちょっとミラが出てきたら相談してみよう。


                 ■


 シャロームに行く前に、ある場所に用事があった。

「そうそう。その報酬を貰いに行こうと思ってさ」

 俺はそうミラに言った。

「……そういえば、昨日の報酬を貰ってない」

 ミラも今思い出した、といった感じだ。ミラの服装は黒を基調とした少しフリルが付いたのワンピースだ。涼しげで、ちょっと暑い今日には目の保養になる。

 そう、冒険者ギルドだ。昨日は報告とギルドマスターのせいで報酬を貰うのを忘れていたのである。アルバートさんから渡されていた収納袋も持ってきている。中に入っているオーガの素材を売るためである。分け前は、当初は折半にしようとしたのだが、アルバートさんが断ったのだ。曰く、

「わたくしめはお仕事で相対したので、それ相応の特別給与を旦那さまから頂いております。そもそも、どちらもタクト様がご活躍成されて倒したのですから、その報酬はタクト様が貰うべきです」

 とのことだ。ここまで言われたら受け取らざるを得ない。実際に、二匹目は俺が倒したんだからな。遠慮するのも失礼ってもんだろう。だが、一匹目はアルバートさんがいなければ倒せなかったかもしれないのだ。貰った報酬の四分の一はアルバートさんに渡すつもりだ。

「はい、承りました。こちらが報酬です」

「ありがとうございます」

「……ありがとうございます」

 俺とミラはそれぞれギルドカードを提出し、昨日のハウンドドッグ討伐の報酬を貰う。歩合制だったため、そこそこいい金額になった。

「それと、昨日取った素材を売りたいのですが」

「はい、では裏庭にどうぞ」

 俺がそう言うと、受付嬢がギルドの裏庭に案内してくれる。ここで鑑定士に素材を見せて、金を貰うのだ。

(しかし、もったいないなぁ……)

 俺は裏庭に向かう道中でそんなことを心の中で呟いた。

 俺はオーガを二匹倒しているから、後からとはいえ、ギルドカードで証明できる以上、オーガ討伐のクエストを受ければその分報酬が増えたはずだ。しかし、俺はランクが最低なので、オーガ討伐のクエストを受けることが出来ない。故に、オーガを倒したと言う記録と思い出だけが残るのみだ。虚しい。

 裏庭に着くと、鑑定士の人に収納袋から出したオーガの素材を一つ一つ見せていく。脚、牙、爪、角、腕、金棒、その他もろもろ。

 結果的に、金額は普通に生活していれば一カ月働かなくてもいいレベルで貰えた。素材をすべて持って帰ってこれたからこその金額だな。これは、四分の一じゃなくて半分くらいはアルバートさんに渡すべきだろう。収納袋を持ってきたのもアルバートさんだしな。

「さて、じゃあお待ちかねの飯とするか」

 金を受け取ると、俺はそう呟いた。腹が減りすぎてもはや吐き気がしてくるレベルだ。いや、吐くものはないけどさ。朝食抜きなせいか、ちょっと頭も痛い。

「……うん、楽しみ」

 横でミラも頷いた。


                 ■


「ミラはどうする?」

「……おすすめパンケーキと季節のアイスクリーム」

「ん、分かった。俺は……海鮮パスタ大盛りと季節のアイスクリームだな。アイスはメインを食べ終わってからの追加注文でいいよな?」

「……うん」

 そんな会話を交わした後に、ウェイトレスを呼んで注文をする。

「なるほど。確かにこれはいい眺めだな」

 シャロームの二階テラス席。その一角で、俺は景色を見て呟いた。

 まず、下に広がるのは行き交う人々と情緒ある街なみ。石畳と煉瓦で出来た建物の数々は中々いいものだ。人々はまさに千差万別。服装、表情、目的や大小、それぞれが全く違う人々が行き交う光景は、一種の壮観さを覚える。

 次に遠くを見上げると、そこに見えるのは、真っ青な空と山。季節は夏の後半ぐらいだから、山の木々も生い茂っており、空の青とのコントラストが素晴らしい。

「…………」

 ミラもその景色に見入っているようで、遠くの方を見て視線を動かさない。

 心地よい沈黙が俺たちを包み、しばし二人で景色を楽しむ。周りの喧騒は遠く聞こえ、適度なざわざわした音がいいBGMになっている。

「お待たせしました。おすすめパンケーキと海鮮パスタ大盛りでございます」

 そんな俺たちの沈黙を破ったのはウェイトレス。俺たちはそれぞれお礼を言うと、早速料理に口をつけ始めた。景色もいいけど空腹がヤバい。花より団子と誹られても構わない。

 俺が頼んだ海鮮パスタは、あさりのような貝と海老のような何かがメインの具になっている塩味系のパスタだ。海鮮の出汁が効いていて、具も食感がぷりぷりで美味しい。

 一方、ミラが頼んだパンケーキは、上に生クリームと黄色い苺が乗っているものだった。あの黄色い苺は、見た目に反して味はメロンみたいだったりする。

 ちなみに、俺のパスタの具に『ようなもの』をつけたのは、それじゃない可能性があるからである。異世界だからこれらが魔物という可能性も大いにあり得るわけだからな。実際、アサリのようなものは身が赤いし、海老のようなものは尻尾が二つある。

 二人して無言でがっついているうちに、ほぼ同時に食べ終わった。ミラのパンケーキのほうが格段に量が少ないが、そこは少女と男子高生に片足を突っ込んでいる俺との違いだろう。いやはや、満足した。結構食べごたえがあったな。

「さて、じゃあアイスを注文するか」

「……うん」

 ウェイトレスさんを呼び、注文する。

「季節のアイスクリームは三種類ございますが、どれにいたしますか?」

 ウェイトレスはそう言ってメニューを見せてくれる。ああ、これは失敗だな。三種類あるのに気付かなくてウェイトレスに手間をかけさせるとは。

「……ランダムコース」

 そんないい選び方があったのか。説明を見てみると、ランダムコースは迷った客向けにあるコースで、この三種類の中からランダムで選ばれるんだとか。

「じゃあ俺もランダムコースで」

 どうせ果物の種類とか分からないし。選んで後悔するより、ランダムにして失敗、というネタにする方がダメージも少ないだろう。

 さて、じゃあ注文したアイスが来るまでミラと雑談でもしてようか。そう思ってミラを見ると、何だかきょろきょろしている。顔が若干赤いな。

 俺もそれにならって周りを見てみる。ふむふむ……若い男女二人組が多いな。それもお互いの距離が近く、仲睦まじげだ。お互いに食べさせあっているアベックもあることから、どうやらここはカップルが多いようだな。なるほど、どうにも恋愛方面に疎いらしいミラはそれを見て顔を赤くしていたのか。一方で恋愛に興味が出てくるお年頃だからこうして恥ずかしいながらも見てしまっていると。

 うーん、それにしても、このテラス席、どっかで見たことある気がするな。どこだっけなぁ……。

「お待たせしました。季節のアイスクリームお二つです」

 そんなことを考えている間にアイスが来た。それぞれ、正面に置かれたアイスにスプーンを入れる。俺のはピンク色、ミラのは薄緑色だ。

 ふむ、見た目は苺っぽいが味は桃に近いな。あと……バナナっぽくもある。桃とバナナを足したような感じだな。ちょっと今日は気温が高いので、火照った体にアイスが美味しい。

「……美味しい」

 ミラは、一口食べてそう呟くと、次々とアイスを口に運んでいく。

「どうだ、ミラ。こっちも食べてみるか?」

 俺は自分のアイスを示してミラに問いかける。

「……お願い。ありがとう」

 ミラはわずかに頬を染めてそう言うと、俺が差し出したアイスをスプーンで掬って口に入れる。

「……美味しい」

 ミラはわずかに微笑んでそう呟いた。

「……お兄ちゃんもどう?」

 ミラは自分のアイスを示すと、俺に問いかけてきた。

「あ、じゃあ遠慮なく」

 俺がスプーンをミラのアイスに伸ばそうとすると、何故か遮られた。そして、ミラは自分のアイスをスプーンで掬い、

「あ、あーん……」

 俺の口元にそれを伸ばしてきた。恥ずかしそうに、わずかに頬を染めて差し出してくるその姿は、とても可愛らしく、夏の暑さとは別にクラッと来た。

 なんだろう、この既視感……はっ! そうだっ! さっき夢だ! なるほどなるほど……ミラの服装、場所、アイスの色……何もかもが同じだ。はっはっはっ、なるほど。俺は正夢を見たんだな。びっくりするぐらいおかしな出来事だが、とりあえず目の前には美少女が差し出すあーん、があるんだ。躊躇わずに食べよう。ミラのあーん、に比べたら正夢など些事だ。

「はむ。……うん、おいしい。ありがとな」

 薄緑色の見た目に反して、味は葡萄に近かったかな。ミラは俺がお礼を言うと、無言で顔を赤くしながら一つ頷き、またアイスを食べ始めた。……昨日気にしていた間接キスはどこにいったのだろうか。普通に躊躇いなく食べているよ。

 ま、とりあえず深いことは考えないでおこう。今は、この瞬間を楽しむのが一番だ。

 その後、俺たちは雑談を楽しみながらアイスを食べた。


                 ■


 昼飯の会計は収入がある男のプライドで全額支払わせてもらった。

 そういえば、日本の一部では、男女で出かけたら食事代は男性が出すのが常識、みたいな風潮が飛び交っていた。あくまで持論だが、あれは平均的に見て男性の方が収入がいいからだろう。とはいえ、最近は男女の収入格差が少なくなってきたらしいから、この風潮が無くなるのも近いかもしれない。

 余談ではあるが、俺の同級生が彼女とデートした際に、この風潮を突きつけられて払わされていた。しかも本人は嬉々として払っていたのである。思うに、これはあくまで『仕事による収入差』から生まれた風潮であって、収入が自ら働いて得ることが難しい中学生以下やアルバイトが禁止な学校に通っている高校生には通用しないものではなかろうか。

 さて、この場合だと、俺は『収入を得ている』人間である。また、ミラの家にお世話になっている身であるため、これくらいの出費はしてもいいだろう。それに、先ほどのオーガの素材やハウンドドッグ討伐の報酬がそこそこあったため、正直大した出費ではない。ボーナスが出た父親が家族サービスをするようなものである。

「……お兄ちゃん、何をぶつぶつ呟いてるの?」

「……ん? お、すまんすまん。ちょっとした考え事だ」

 どうやら口に出ていたようだ。

 今、俺たちは人通りが多い道を歩いている。よって、はぐれないために手を繋いでいたりもする。ミラはしっかりしているから別に大丈夫そうだが、体格差の都合で人波に呑まれる、ということもあるかもしれないからこうしているのだ。不思議と、ミラも抵抗がないようだ。

 それにしても、周りの雰囲気がちょっと尖っているな。具体的に言えば、冒険者が多い。周りの会話を、風の精霊にお願いして盗み聞きする。

「知ってるか? あの山にオーガが二匹出没したらしいぜ」

「ああ、今朝にギルドと領主の連合調査隊が出ていくのを見たぜ」

 どうやら、昨日のオーガについての話題らしい。あー、朝襲い掛かってきた時のウェールズさんの隈はこれが原因か。ろくに寝ないで編成とか連絡とかをやっていたのだろう。その後にあれだけ大暴れできるのだから大したものだ。いや、本当に。身を持ってウェールズさんの凄さを思い知らされたもん。

「それにしても、あの山にCランクのオーガが? いったい何が原因なんだ?」

「だよな。流入だとしてもオーガの生息地とは大分離れているしな。不自然だな」

「おいおい、やめてくれよ。まさか変異種が出たから街に徒党を組んで襲い掛かってくる、なんてことないよな?」

「ははっ、まさか! 変異種なんて数年に一回出る程度だぜ。しかも街に徒党を襲い掛かってくるほど賢くて強い変異種なんてそうそう生まれねぇよ!」

「それもそうだな。仮に襲われても領主夫婦を筆頭にギルドマスターや領主ん所の使用人もいるからな! これほど安全な街はそうそうねぇよな!」

 なるほどね。こんな会話をしているわけか。こうして冒険者が多くいるうち、ほとんどは異常なニュースを聞いて興奮している野次馬ばかりなんだな。

「どうだ、ミラ。今日は楽しんで貰えたか?」

「……うん、楽しめた。ありがとう、お兄ちゃん」

「そうかそうか。それは良かった」

 俺とミラはそんな会話を交わしながら、屋敷への帰り道を進んでいった。

累計点数が一万点突破しました。ありがとうございます。

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