異変
4話目です。
いろいろと判明することが多くなっております。
では、どうぞm(__)m
見られている。
全てが、私を見ている。
聞かれている。
皆が、私の言葉を聞いている。
壁の向こうから、障子の隙間から、あちこちから私の情報を盗もうとしている。
私は、
「いやっ!!」
ものすごい勢いで身体を起こす。
息がまだ荒い。
冷や汗で服が貼り付いていた。
外を見ると晴れた空が広がっていた。
冷静になり夢だとわかると、賀張ゆきは深く息を吐いた。
彼女は、人を恐れていた。
人に見られ、聞かれることをひどく嫌っていた。
人間を信用できなかった。
「……あ~あ」
ピンポーン……
「!!」
いきなり鳴ったチャイムに驚いた。
……また、誰かに見られるのだろうか。
歯がガチガチと音を立てる。
嫌悪感に負け、叫んでいた。
「……ぇ、って…帰ってよッ!!!!」
少しの間。
その後、遠ざかっていく足音が聞こえた。
「………はぁ」
安堵と脱力感を含んだため息を吐く。
「芸能人失格ね……」
自嘲的に笑うが、気分は沈むばかりだ。
「はぁ……」
全ては数年前に起きた事件が原因だ。
その日から、人に見られ、声を聞かれることに対する恐怖を片時も忘れたことはなかった。
あんなことさえなければ……。
と、回想に浸っていたときだった。
ピチャッ
「……え?」
頭の上で水音がした。
大きな水の粒が頭に落ちてきたのだ。
「雨かしら?」
窓から外を見ると、青空が広がっている。
では、なぜ?
ボタッ
目の前に落ちてきた滴を見て、目を疑った。
赤黒い色をしていたのだ。
血に、見えた。
「……!?」
ゆきはバッと天井を見上げた。
そこには、血の涙を流す巨大な目があった。
沈黙。
そして、
「きゃああああああああああ!!!!」
耳を劈く悲鳴が響いた。
「『賀張ゆきストーカー事件』……恐怖の対象になるには十分すぎる事件ね」
その前日、賀張ゆきについてインターネットで記事を探していると、こんな記事が飛び込んできた。
香純の呟きに続き、遼が記事を読み上げる。
「賀張ゆきのデビュー1周年前後、彼女が14歳だったときに起きた事件。熱狂的なファンの1人が彼女の自宅前で待ち伏せし、強姦未遂にまで至った事件……惨いな」
顔を顰める遼は、画像をクリックする。
14歳の少女のあどけない笑顔に、胸が締め付けられた。
「……明日、賀張ゆきの家に行きましょう。話を聞かないと《元凶》かどうかもわからないわ」
「ああ……」
そして今日。
『もうすぐ着くわ』
香純のナビゲートを聞きながら、遼は坂道を上る。
「何で家知ってるんだ……」
苦笑する彼に、香純も作り笑いを返す。
『企業秘密よ』
あと数十メートルで着くというところで、
「きゃああああああああああ!!!!」
突然悲鳴が聞こえた。
女性の声。
「賀張ゆきさん!?」
『急いで!!』
遼はそれを聞き、一心不乱に走り出した。
途中、誰かにぶつかったが構う暇もなかった。
走る。
ただ走る。
走って走って走る。
なぜか鍵のかかっていないドアを開け、玄関で靴を脱ぎ捨て……そこで足が止まった。
充満する血の臭い。
思わず身震いするが、無理矢理引き摺るように身体を移動させた。
「賀張さん……?」
リビングに出ると、異様な光景が広がっていた。
壁や床が血塗れの部屋。
あちこちから現れた、傷ついた眼球。
そして、同じく血塗れで立つ賀張ゆきの姿。
「―――――――っ!!」
声にならない悲鳴を上げた遼を、彼女の2つの目がギロッと睨んだ。
『貴方の弱さを私の鍵にッ!!』
ほとんど反射的に香純は叫んだ。
同時に、遼の昔の記憶がこじ開けられる。
それは、1人の少女の記憶。
いつも何かに怯えていて、
人を拒絶して、
それでも彼にだけは心を開き、
依存していて、
『……さよなら、遼』
彼が形式上裏切ってしまった、遼の元恋人の記憶。
「う…ああああああ!!!!」
号哭するように声を上げた遼に呼応し、香純が本から飛び出した。
「賀張ゆき……ちゃんと話そうと思ってたけど、手遅れのようね」
賀張ゆきは無言で右手を振り上げる。
彼女の右手で、握られていた血塗れの包丁が鈍く光った。
いかがでしたか?
賀張さん狂いましたね…病んでる女の子個人的に好きです。
では5話目でお会いしましょう。




