出逢い
実質3作目です。
これを機に日本語やことわざに興味を持ってくれたら嬉しいです。
では、どうぞm(__)m
黒に近い、しかし目が回りそうになるほど目まぐるしい世界。
そんな場所に私はいた。
目を閉じることしかできなかった私を、貴方は―――…
「ふぅ……」
近所の図書館に着くと、少年はため息をついた。
制服のポケットから取り出したハンカチで汗を拭う。
8月の昼間に出かけたのは間違いだったかもしれない。
少年・浅野目遼は苦笑いを浮かべ、手に持った本に視線を落とした。
深緑の表紙に金色の文字で記された『Birdcage』という題名の本。
鳥籠という意味だ。
これは、十数年前に今は亡き父が借りて、今まで返し忘れていたものだ。
幸い、本に欠損はない。
弁償はさせられないだろう。
意を決して、カウンターに向かって声をかけた。
「すみませ~ん…」
――――静寂。
どうやら誰もいないらしい。
「誰かいませんか~……?」
やはり誰の返事もない。
仕方なくその場を立ち去ろうとしたそのとき。
じっとこちらを見据える視線を、視界の端に感じた。
「!?」
驚いた拍子に本が地面に落ちる。
バサッ、
『きゃっ!!』
……………きゃっ?
本来なら聞こえるはずのない声が、本から聞こえてきた。
遼は恐る恐る本を拾い上げ、おっかなびっくりページを捲る。
本の中盤に差しかかったとき、それは姿を現した。
小さな女の子が、本の中から顔を出していた。
『「……………え?」』
声が重なる。
『洋輔…?洋輔なの?』
少女は戸惑いのような表情を浮かべ、彼に言った。
遼は、その声に思考を取り戻す。
高校生ぐらいの容姿をした、小さな少女が自分を『洋輔』と勘違いしているらしい。
「……僕は浅野目遼。洋輔は、父の名前だ」
『父……そう。貴方、洋輔の息子ね?』
ひどく悲しげに俯いて、少女は言った。
「君の名前は?」
遼が問うと、彼女は少し顔を上げた。
親指姫を思わせる背丈。
16、7歳に見える顔立ち。
垂らした髪と不釣り合いな、ロック調の服装。
異様な雰囲気を纏わせながら、彼女は言った。
『妹尾香純よ』
『貴方…驚かないのね』
帰り道、急に言われて面食らう。
勿論本はまた持ち帰ることにした。
置いてはおけないだろう。
「何が?」
『普通、皆気味悪がるわ。本から人間が出てきたら誰だってそうなるはずよ。なのに…貴方は何故驚かないの?』
心底不思議そうに尋ねられた。
遼は困る。
「別に気味悪がることもないんじゃないかな…?」
『………変な人』
褒めているのか貶しているのか、香純は笑ってそっぽを向いてしまった。
……と、ふと思いついて遼は聞いた。
「香純さん、あのさ…」
『香純でいいわ』
「……じゃあ香純。何で本の中にいるの?」
香純は黙る。
迷ったように目線を泳がせ、そして口を開いた。
『貴方のお父さん、浅野目洋輔は…《言霊使い》だったの』
「……《言霊使い》?」
『ええ。《言霊》というのは、言葉に宿る力のことよ。それは実在する。それぞれの言葉の意味を正しく理解すれば、大抵の人間は少しだけなら使えるわ。……ただ、洋輔は異常なほど使えたの。それこそ制御できないほどに』
一息。
『全ての言葉が凶器に変わる。彼はそんな恐怖に怯えていたわ。でも、それを役立てるために彼は仕事を始めたの。《言霊使い》として、《怪奇現象》を駆逐する仕事を』
横顔を覗き込むと、複雑な表情が目に入った。
憎悪のような、感謝のような、入り交じった感情。
そんな表情をしたまま、香純は続けた。
『……私はね、ある《怪奇現象》の引き金になってしまったの。これはその罰よ。私は…そちらの世界でのうのうと生きられる人間じゃないの。……私に課せられた《言霊》はね』
泣きそうな声で、告げた。
『……《終身刑》なのよ』
いかがでしたか?
私も《言霊》使ってみたいです(笑)
では2話でお会いしましょうm(__)m




