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第六話 勇者と転校生

名前がコンプレックスの勇者の末裔、巳継みつぐの前にまたまた転校生が現れる。そいつの名前は高町アリルという、銀髪ツーサイドアップの魔物の美少女だった。なにやら嫌な予感しかしない巳継。そして、巳継の嫌な予感は的中する。

 僕の名前、勇者巳継ゆうしゃ みつぐ。勇者の末裔だ。

 別に、僕は勇者になって新世界の神になるとか、勇者になって怨念返ししたいわけじゃない。

 信じられないことに、苗字が勇者なのだ。それって可笑しくないかな?

 二度あることは、三度あるなんてよく言ったものだ。うまい具合にそれが当てはまることがある。

 大抵嫌なことなんだけど。例えば、修学旅行で大凶を引くとか。

 中学の頃、修学旅行前日に星座占いで一二位になったと思ったら、旅行先の神社で大凶を引きさらには、帰りの目覚ましTVで見た星座占いも一二位だった時はもはや神に見放されたんじゃないか? と思った。

 まあ、そんなことはまれだけど。でも、大抵連続三回続くと相場が決まっている。

 なんで三回なのか。二回だけじゃ駄目なのか? なぜ三なんだ。

 人と三という数字には、何やら深い謎があるのかもしれない。はぁ……。

 つまり、僕が言いたいことは嫌なことほど連続で続くという事で。

「えぇ転校生の、高町アリル(たかまち ありる)さんだ。彼女は魔物だが、みんないきなり質問攻めとかせずに、仲よくしてくれよ」

 あたりが騒然とする。それは、歓喜なのか絶叫なのか……。一つだけ言えることがあるとしたら、クラスメイトみんな目が輝いているってことだ。

 魔王の末裔の次は魔物かよ……。なんか嫌な予感しかしない。

「高町アリルだ。よろしく」

 不意に僕の方を見る。なぜか思いっきり睨みつけられた。

 はぁ……勇者の末裔ってそんなに嫌われてるんですかね。まぁでも、ファラの場合は単純に僕と戦いたいだけだったけどな。

 でも、なぜかアリルの方から嫌な悪寒の様なものをすごく感じる。それは、ただ敵対視しているだけじゃなくまるで、増悪しているような感じだ。

 だが、僕には心当たりはない。だって僕とアリルは、初対面なのだから。

 アリルは深緑の瞳で僕を強く睨み、ツーサイドアップの白銀の髪をなびかせながら僕から目をとっさに逸らす。いったいなんなのだろうか?

 こんなに短い間隔で二人目の転校生がやってくるなんて。あぁ……本当にこのままじゃ二度あることは三度あるなんて事態になりかねない。それはさすがに辛いだろう。

 まあでも、いくらなんでもファラのようにしつこく絡んではこなさそうだ。

 アリルはどうみても、清楚でおとなしそうでなんかお堅い人物っぽく見える。

 ファラの二の前にはならないだろう。多分……。

 でも、どうしようもなくアリルからヒシヒシと殺気を感じるんだよな。

 そして、なんやかんやでホームルームは終わりファラも含めアリルの方に集まった。

「アリルって魔物なんだ!」

「あの、どんな魔物なんですか?」

「ツーサイドアップって素敵!」

 また、人気者が一人増えたな。僕は苦笑いしながらその光景を見ていた。

 えっ? あれから友達が増えたかって? い……いやそんないきなり増えるわけないだろう!

 というか、友達っていきなりなれるものなの? そもそも友達って定義ってなに?

 もういいじゃん。世界中みんな友達で、それでいいじゃん……。

 友達を作るのに僕は莫大な時間がかかるんだよ。もう、それは本当に莫大なね。

 いいい……言い訳なんかじゃなくてさ、もう友達とか変な定義づけするのはやめた方がいいと思うんだよね。

 人類みんなナマーカ! これでいいと思うんだよね。

「私は! なれ合う気はない!」

 いきなり、大声を上げるアリル。辺りが騒然とする。

 しばらく静寂が訪れ、アリルは何も言わずに教室から出て行った。

 なんなんだ? なにが起きたんだ?

 辺りがざわつく中、ファラは何やら難しい顔をしていた。あれ? こいつってこんなキャラだったっけ?

 僕は、ファラの方に立ち寄り、声をかける。

「おい? どうしたんだ? 何かあったのか?」

 ファラは僕の問にしばらく考えてから、静かに答えた。

「いや、わからない。しかしあの魔物、私はどこかで見たような気がするんじゃ」

 ふーん、と言って僕はもといた席に戻る。

 どこかで見たか……なんかいや~な伏線だな。

 こういう場合、どうなんだろ。彼女の殺視線から察するに、僕はもしかして恨まれているのかもしれない。理由はまぁ、十中八九僕が勇者の末裔だからだろう。

 いきなり、お前を殺すとか言われたらどうするかな……ははは。

 僕は、嫌な予感を感じながら机の上に突っ伏した。はぁ……昨日の疲れが全然取れてない。

 それなのに、立て続けにこんなことが起こるなんて、何か裏があるんじゃないのか?

 ほとんどがファラ絡みなんだけどな。

 しかし、昨日の悪い魔物。いったいアイツはなんだったんだ?

 なんで、市街地に? なんでファラを襲った? 誰にテレポートされてきた?

 う~ん、一体誰なんだ? ファラがやったのか?

 けど、あいつは確かに馬鹿だがそんなことする奴には見えない。見えないんだけどぉ……。

 まぁ魔王の末裔らしくはないが、あいつはいい奴なんだよな~……う~ん。

 それからいつものように授業は進み、気が付くともう昼休みになっていた。

 僕は弁当を取り出そうと、鞄を探る。あれ? ない?

 しまった、家に置いてきた。購買に買いに行くしかないか……。

 僕が立とうとすると目の前に気配を感じる……。控えめな胸、あいつか……。

「勇者巳継! お前のクラスに魔物がいるとはどういう事だ!」

「フルネームで呼ぶな、あっちいけ。周りが変な目で見るだろ」

 この漆黒の髪のツインテール少女は、同じ学年の別のクラスの勇者の末裔。

 輝盟寺こうめいじ凛廻りんね。まるで中二のような名前だ。

 僕はいつもメイジと呼んでいる。それをいつも怒って訂正するのがちょっと可愛いので、病み付きになる。

 だが、こうして教室に来られるのはすっごい困る。なぜなら、同じクラスに二人も勇者の末裔がいると死ぬほど目立つから。僕は目立つのが嫌なんだ。

「メイジ、いい加減大声出すのと、僕の目の前に音もなく現れるのと、僕の名前をフルネーム呼ぶのをやめてくれないか?」

「またメイジってゆったぁぁぁ! 勇者巳継! お前こそその呼び方やめなさいよね!」

「はぁ……で? 何の用だよ」

「何って……今言ったでしょ! なんで勇者巳継のクラスに魔物がいるんだ!」

「知らないよ、大声出すな。い・き・な・り! また、転校してきたんだよ信じられないことにね」

「こんな時は勇者部だよな! な!」

「えっ!? そそそそうだな……今日は用事が」

「放課後呼びに来るからな! 絶対逃げるなよ?」

 釘を刺された。って、なんか恐ろしくデジャヴを感じるんですけど……。

 はぁ……また勇者部か。

 勇者部。名前の通り、勇者の末裔が集まる部活だ。

 僕は強制的に入部させられた。勇者の末裔という理由だけで、入部させられた。

 大迷惑だ! 

 具体的な活動は、中二談義。聞いているだけでこっちが恥ずかしくなってくる。

 というか、この勇者部に入っている奴は僕以外みんなノリノリなんだ。

 死ぬほど寒い。精神的な意味で。

 エターナルファースブリザードってレベルじゃねぇぞ! 僕はいつも凍え死んでいる。

 だから極力行きたくない。死ぬほど行きたくない。

 はぁ……憂鬱だ。とにかく今は弁当、弁当だ。

「それじゃあ、僕はいく。って、今日はファラさんはいないんだな」

 そういえばそうだ。いつもなら大量の焼きそばパンを抱えているはずなのに。

 ファラと、メイジはこの前勇者部でW○Iスポーツのテニス対決で戦って以来、仲良くなったみたいだ。メイジも馬鹿っぽいからな、何か共感するところがあったんだろ。

 メイジは、名残惜しそうに教室を出ていった。ちなみに、メイジは僕っ子だ。

 さて、僕も購買に行こうかな。僕が席を立ちあがろうとした瞬間。

 なんだか、背中に冷たいものを感じる。嫌な感じだ。

 僕はとっさに後ろを振り向くも、そこには誰もいない。なんなんだ? いったい。

 とにかく僕は、逃げるように購買へと向かった。

 購買で焼きそばパンとお茶を買った後、僕は屋上に向かった。

 なにやらさっきから、背中に感じる冷たいものが離れない。僕は冷や汗をかいていた。

 なんなんだ? いったい。僕は誰かにつけられているのか?

 僕は逃げるように、屋上に上がってきたわけだ。屋上に来ると嫌な感じはなくなっていた。

 ふぅ、これでゆっくり食べれる。そう思って座ろうとしたとき……。

「勇者……巳継」

 背中から声が聞こえた。僕がゆっくり振り向くと、そこにはアリルがいた。

 高町アリル。今日転校してきた、魔物のクラスメイト。

 僕は唖然として見ていると、さらにもう一度彼女は言った。

「勇者……巳継……だな?」

 僕は、嫌な何かを感じながらもゆっくりとうなづいた。アリルはそれを確かめると、不敵に笑った。

 なんだ……? いったい僕に何の様なんだ?

「やっと見つけたよ。私はお前を殺す、できるだけ残酷にな」

 えっ? 今なんて? ものすごい物騒な言葉が聞こえたんですけど!

 僕は聞こえなかった風に装ってもう一度、聞いてみた。

「ええーっと。今……なんて?」

「お前を殺す、できるだけ残酷に」

 …………。屋上、限られた空間、逃げ場はない。死亡フラグ!?

 いや、でも逆に相手にお前を殺すって言われたら死亡フラグは大抵回避できるんじゃないか?

 そうだ、慌てるな。まだ話は終わってないみたいだし。ここでいきなり戦闘はないだろ。

 いや……本当に……まじで……なんで、懐からナイフらしきものを出してるんですか?

 いやいや、冗談ですよね? これって、次回宿命の対決みたいな感じで見逃してくれるあれじゃないんですか? こういう場合は、お前が強くなってから戦うみたいな感じになるんじゃないんですか!?

 ちょ……その構えは駄目だって! ナイフを両手で握って突撃するとか、確実に死じゃないか!

 そんな、驚きのフラグ回収の速さだよ! ちょっとまってここで死ぬのはまずいから!

 やばいから! 考え直してよ! こっちくんな。こっちくんなってばぁぁぁぁぁぁ!

「うわぁぁぁぁぁぁ! こういう場合は演出もかねて次回に回すんじゃないのかよぉぉぉぉぉぉ!」

「あははははははっ!! 言ってる意味が分からないぞ、勇者。私は今すぐお前を殺したいんだよ。はやくはやくはやくはやくはやくはやく」

 狂ってる! 狂ってるよ! 駄目だこいつ、早く何とかしないと僕が死ぬ!

「まだ、僕が死ぬのはいろんな意味でまずいと思うんだ! いつか人間は死ぬんだから気長に待っててよぉぉぉぉぉぉ!」

「駄目だ駄目だ駄目だ勇者。いまここで、私がお前を殺す」

 いやぁぁぁぁぁぁ! でたよ、話が通じないタイプ! 説得不可能な狂人タイプ!

 こういう奴は、リアルに出したらあかんて! 本当に殺しちゃうから!

 いやぁぁぁぁぁぁ! なんでツーサイドアップの白銀の髪の美少女に、追いかけられながら死ななきゃなんないんだよぉ! 僕はそんな死に方望んじゃいない!

 まって、早い早い! 少しは、自重しろ! 110番! 110番!

 こういう話が通じない奴は、魔王より怖いんだって! 駄目だってこいつは!

 マジありえないから、ありえないからぁぁぁぁぁぁ!

 不意に、昼休みが終わる鐘が鳴った。あまりにも、非日常的な事が起こっているため僕はその音がなんなのか、しばらくわからなかった。

「あ~あ、授業が始まる。続きは放課後だな」

 アリルは握っているナイフを懐にしまい、何事もなかった様に帰っていった。

 僕はただ茫然と、その場にへたり込むことしかできなかった。

「お~い? お主顔色が悪いぞ? 大丈夫か?」

 放課後、僕はメイジに言われる前に勇者部に来た。あれからずっと震えが止まらない。

 授業中ずっと、アリルに睨まれていた。そう、ずっと。

 瞬きすらしていない! 本当だ! うわぁぁぁぁぁぁ! サイコホラーだよぉ!

 今日ばかりは勇者部があってよかった。メイジに感謝した。

 少なくとも、ここにはメイジ、なぜかファラ、天川、そして秋宮がいる。

 一人でいるより、遥かにマシ! このままだだと絶対、下校中に追いかけられて刺されるよ!

 ここなら、僕も合わせて五人いるしなんとかなるよ。なんとか……。

 でも、手の震えが止まらない。初めて、人間の狂気って奴に触れた気がする。

 人間じゃないんだけど。

「さて」

 秋宮は、なにやら広辞苑ほどの太さの原稿を僕の前に出した。

 あっ……またそれか。

「じゃあ、私の物語を読んで、いつものように感想をくれ」

 僕が、勇者部に来たくない理由。それは秋宮の恥ずかしい、中二病満載解読不可能な、詩のような小説の様なダークマターの様な何かを読まされることだ。

 信じられないほどの多さと、低クオリティー。読み終わると一緒に魂も抜けかける。

 この量を、何度も書き上げるのは褒めるべきところだが、それ以上に秋宮の文章は中二病満載で僕を何度も凍りつかせる。

 だが! 今回、謎の転校生高町アリルに命を狙われているこの状況では、それすら天国に思える。

 これだよ! 現実の怖さと、フィクションの怖さの違い!

 現実は……本当にやばいって。もう、なんで? なんで? こんな思いしなきゃいけないの?

 今日ほど、勇者部に入っててよかったと思ったことは無い。

 僕は、涙をのみながら秋宮が出した中二病満載解読不可能な、詩のような小説の様なダークマターの様な何かを読み始めた。

 しかし、僕はまだ……忍び寄る影に、この時気づいてはいなかった。

 あっ……昼飯食い損ねた。

 

 

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