時間をムダにしない断罪劇(やっぱムダかも)
時間をムダにする断罪劇
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の続編(完結編)です。
こちら↑を先に読んでもらえるとうれしいです。
「クラウディア、今日こそはおまえに引導を渡す!」
ここは王立学園の中庭にあるガゼボ。
いきなりツカツカと歩いてきて、そう宣言してきた彼は、この国の王太子であるアラン様。私の婚約者でもある。
私はため息をつきながら立ち上がっておじぎをした。
そして
「お言葉ですがアラン様、あなたは昨日も一昨日もそう言って、結局、おならの話で終わったじゃないですか。何の引導を渡すつもりか知りませんが、今日こそはちゃんと、実のある会話にしてくださいね」
と言うと、
「だからそれはおまえが…、いやいかん、その手には乗らないぞ、今日こそはおまえの悪事を断罪する!」
と鼻息荒くしている。
「あらまあ、私の悪事を。何か悪いことしてましたっけ。悪食なら身に覚えがあるんですけどね…お寿司にマヨネーズかけるのとか大好きだし…」
「オスシ……? マヨネーズ…?」
「お寿司はですね」
説明しようとすると、アラン様は頭をブンブン振って
「いやいかん! いちいち気になる単語にひっかかるから、話が進まない! 聞かなかったことにする!」
と手のひらを私に向けてSTOPのポーズをした。
「せっかく教えてあげようとしたのに…人の親切を無下にするとばちが当たりますよ」
「ばちとは…? いやだから話が進まないから! 本題! 本題だ! クラウディア! おまえはマチルダ男爵令嬢をいじめているだろう!」
「えっ」
「ごまかそうとしても無駄だ! 証人は大勢いる!」
「ごまかすつもりはないんですが…マチルダ様って、あれですか? ピンクの髪の?」
「そうだ! 愛らしいピンクの髪の令嬢だ!」
「いじめた覚えはないんですが…」
「しらを切る気か? だったら教えてやろう、先週おまえは、マチルダ嬢に魔物をけしかけた!」
「魔物……あっ、はい」
「いや、はいって…罪悪感とか…反省とか…なし?」
「けしかけたっていうか…『一緒にもふもふしようよ~』って魔猫を触らせに行っただけなんですが…」
「魔猫…」
「そうです、5キロの米袋ぐらいの大きさの。人に慣れてるので噛んだりしないんですよ」
「コメブクロが何なのかわからないので大きさもわからないが…たとえ小さいとしても魔物だ! いきなり触らせられたら怖いに決まってるだろう!」
「ええ~~~、だって、頭ピンクなんですよ?」
「だからなんだ!」
「ピンク髪といえばSnow Manのさっくんじゃないですか。さっくんだったら絶対喜ぶから、きっとマチルダ様も喜ぶと思ったんですよ~」
「すのーまん…雪だるま? さっくん…??? ああああああもういい、とにかくマチルダ嬢は怯えていたのだ! 怯えさせて悪かったと思え!」
「そうなんだ…たしかに、魔猫を抱きながらぶるぶる震えてたけど、あまりのかわいさに感動してるんだとばかり…。それは悪いことをしましたわ…マチルダ様に誠心誠意、謝罪しに行きますわ」
「わっ素直でびっくり」
「失礼なこと言わないでください。私は自分が悪いと思ったらちゃんと謝れる人間なんです王族と違って」
「今さらっと不敬なこと言ったが、また脱線しそうだから聞かなかったことにしてやる。おまえの罪はまだある!」
「なんと」
「おまえは突然マチルダ嬢に『ポン・ポン』と大声で話しかけるそうじゃないか。『意味が分からなくて怖い』と言っていたぞ!」
「それは…だって…ピンク頭だから…」
「意味が分からない」
「EXITのかねちーを思い出してつい…」
「よけい意味がわからない…EXIT…出口?」
「すみません、もう言わないように気を付けます」
「まだある」
「まだあった」
「誰かの誕生日が知りたいときにマチルダ嬢に聞きに行くのはなぜなんだ。答えられなくて恥をかかせるのが目的か!」
「まさか! だってピンクだから…!」
「またピンクか!」
「林家ペー、パー子夫妻を彷彿とさせるから…! 誕生日に詳しそうな気がして…!」
「言い訳を聞いてもさっぱり意味がわからない。とにかくもう誕生日を聞きに行くのはやめなさい。わかったな?」
「はい…」
「そしてもうひとつ」
「まだあった」
「『おばさんあるある』を思い出したように聞かせられると言っていた」
「言いましたたしかに」
「マチルダ嬢はまだ16歳なのに、おばさんに見えるのかととてもショックを受けていた」
「…それは悪いことをしました…ピンクのドレス着てたから…つい…阿佐ヶ谷姉妹を思い出して…」
「おまえの奇行はなんでみんなピンク由来なんだ…」
「申し訳ありません…でも、もう、たぶん、ピンクは制覇したと思うので…マチルダ様に迷惑をかけることはないと思います」
「本当だな!? もしもまた、マチルダ嬢に何かしたら、婚約破棄するぞ? 脅しじゃないぞ? さすがに奇行が過ぎると王家でも問題になってるんだからな?」
「そんなに…わかりました。肝に銘じます」
私はビシッと日本警察の敬礼をして見せた。
「なんだそのポーズ…いやもういい、おまえの言動を気にしていたら身が持たない…」
アラン様は疲れ果てた様子で去っていった。
そしてそれから私はマチルダ様に謝罪を受け入れてもらい、
公爵家の淑女として、それはそれは大人しく過ごした。
時は流れ…
◇◇◇
卒業パーティーの場で、私は婚約破棄された。
マチルダ様の前でカスカスダンスを踊ったからだ。
…こればっかりは、マチルダ様が悪いと思う。
ピンクのVネックノースリーブのドレスなんて着てるから!!!
どうしたってピンクベストを彷彿とさせるじゃないの!!
でも婚約破棄の宣言に対して、元気よく「トゥース!」と挨拶して帰ってきたので、後悔はない。
読んでくれてありがとうございます




