第一話 華
個人的に大好きなバンドであるミセスがモデルです!
「お前の歌には、華がないんだよ。……悪いな、氷斗。俺たちは上に行きたいんだ」
雨の渋谷。スタジオの裏口で突きつけられたのは、あまりに冷酷な宣告だった。
24歳の俺、九重氷斗の目の前で、昨日まで仲間だったバンドメンバーが目を逸らす。
「メジャーデビューが決まった。でも、ボーカルを、もっとビジュアルのいい、華のある奴に替えるのが条件なんだ」
「……俺の、歌は? 7年間、一緒に作ってきた曲はどうなるんだよ!」
「お前の歌は上手いよ。でも、今の時代、それだけじゃ足りないんだ。……悪いけど、今日でもう終わりだ」
足元に放り出された、雨に濡れるギターケース。
7年間の努力も、喉がちぎれるほど練習した日々も、すべては「見た目」という残酷な壁の前に粉砕された。
絶望した俺の目に映ったのは、スクランブル交差点の巨大ビジョンの中で、不敵に微笑む同い年の怪物だった。
世界的人気バンド、ルミナのボーカル、天音蓮。
天を突き抜けるようなハイトーン。宝石を散りばめたような完璧なルックス。
同じ24年を生きてきて、どうしてこうも違う。片方は世界の寵児、片方は仲間に捨てられたゴミ。
「……あいつになれたら、陽葵を幸せにできたのかな」
土砂降りの雨の中、脳裏に浮かぶのは陽葵の顔。
高校時代、学園一の美女として誰もが憧れた、高嶺の花。
同じクラスでも、しがない音楽オタクの俺には話しかける勇気すらなかった。
ただ遠くから彼女の横顔を眺め、いつか有名になってあの子に相応しい男になれたら……そんな叶わぬ夢を抱いていただけだった。
俺は、一歩を踏み出した。
ガードレールを越え、アスファルトへ。
意識が、プツリと途絶えた。
「……レンくん、レンくんってば!」
鋭い声に弾かれ、俺は目を開けた。
痛くない。
代わりに感じたのは、高級車のシートの感触と、わずかな芳香剤の匂い。
「次のライブハウス、入り時間ギリギリよ。寝ぼけないで」
隣に座るマネージャーの冴子が、手鏡を差し出してきた。
何気なく、その鏡を覗き込む。
「…………は?」
そこにいたのは、死ぬ間際にビジョンで見上げた彼だった。
さらさらと流れるプラチナブロンドの髪。吸い込まれそうなほど整った、完成された顔。
(……転生? 俺、天音蓮になってるのか!?)
スマホの日付は2019年3月。
俺が24歳で死んだ世界から遡ること、7年前。
だが、おかしい。鏡の中の顔は、俺が知る「24歳の天音蓮」そのものなのに、着ているのは名門私立高校の制服だ。
「冴子さん……今、俺は何歳だ?」
「何言ってるの、17歳でしょ。高2の春休みよ」
車がライブハウスの前に止まる。
入り口には数十人のファンが待っていた。
車を降りた瞬間、自分の喉から出た吐息の音だけで、空気が震えた気がした。
前世で、喉から手が出るほど欲しかった、音楽に愛される才能と美貌。
その時だった。
ライブハウスの向かいにあるコンビニから、一人で出てきた少女の姿が目に飛び込んできた。
地味な制服を着ていても隠しきれない、圧倒的な透明感。
まだ17歳の、手が届かなかった高嶺の花。
「……陽葵」
声に出した瞬間、自分の喉から出た天音蓮の美しすぎる声に、俺自身が震えた。
7年前の、まだ誰のものでもない陽葵。
「華がない」と捨てられた俺が、今、世界で一番の「華」を手に入れた。
天音蓮としての成功なんてどうでもいい。
俺は、マネージャーの制止を無視して、彼女の方へ駆け出していた。
今度こそ、俺が君を、特等席へ連れていく。
たとえ中身が、しがない24歳の、ただの九重氷斗だとしても。
第一話どうでしたか?天音レンは大森もときさんの超絶強化版だと思ってください!
ちなみに僕はミセスの「スターダム」という曲が好きです!
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