第十三話 結局何も
もう第十三話ですか...
ソロライブのステージ、巨大スクリーンに映し出されたのは、恭介たちに蹂躙され、絶望の表情でこちらを助けようと縋る陽葵の姿。その瞬間、俺の中で「天音蓮」としての理性が、そして「九重氷斗」としての誇りが、どろりとした黒い殺意へと溶けていった。
「……あは、壊れちゃった」
舞台袖でそれを見ていためいが、悦びに震える声で呟く。
聖は冷徹な笑みを浮かべ、俺に最後通告を突きつけた。
「天音くん。彼女を救いたければ、今すぐこの場で私への絶対服従を誓いなさい。貴方の音楽も、身体も、未来も、すべて私に捧げるのよ」
だが、俺が選んだのは救済でも服従でもなかった。
俺はマイクを掴み、天音蓮の最強の喉を使って、この世のものとは思えない不協和音の咆哮を放った。スピーカーが火を噴き、観客たちが耳を押さえて悲鳴を上げる。
「愛? 才能? ……そんなもの、最初からこの世界にはなかったんだ」
俺は舞台を降り、楽屋に置いてあったガソリンを撒き散らした。
驚愕する聖とめいを突き飛ばし、狂ったように笑いながらライターを落とす。
燃え上がるアリーナ。逃げ惑う群衆。
俺はそのまま、陽葵が囚われているはずの場所へと向かったが、そこにいたのは、恭介によって廃人のように変わり果てた彼女の姿だった。
「遅かったな、九重。……いや、天音。お前が手に入れた華なんて、結局誰も守れやしないんだよ」
恭介の嘲笑を聴きながら、俺は陽葵の亡骸を抱きしめた。
俺が欲しかったのは、最強の身体でも、数百万人の賞賛でもない。
ただ、自分の作った曲を、彼女にだけ届けて欲しかった。それだけだった。
「……全部、終わりにしよう」
俺は九重氷斗が死んだあの日と同じように、燃え盛るビルの屋上から、夜の深淵へと身を投げた。
天音蓮という完璧な虚像を道連れに、俺の魂は二度と目覚めることのない闇へと沈んでいく。
翌朝、ニュースが報じたのは「若き天才・天音蓮の心中」という衝撃的なヘッドライン。
彼の正体が、一ヶ月前に死んだ無名作曲家であった事実は、永遠に灰の中に埋もれた。
はずだった。
九重氷斗は自分が誰の皮をかぶっていようと結局なにも、幸せにできないどころか守ることさせできない自分の無力感を思い知らされた。
そして、自分を責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めた、責めたその先に一輪の蝶々がいた。九重氷斗はその美しい蝶々をてにのせた。
「陽葵、守れなくてごめ、、ん、、なああああああ...」
そんな九重の言葉に呼応するようにその美しい蝶々は光った。
-phase1- completion
-phase2- start...
九重の目の前が真っ暗になった。
第一章完結。
続編決定...




